泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2014年07月22日

尿の回数が増えた

高校生から相談がありました。

【相談】

私は高校生です。一年前くらいから、小便の回数が増えたなぁと思っていたら、だんだん酷くなってきて、最近は1時間ごとにトイレに行きたくなるし、夜寝てからも行きます。

トイレを済ませてからもスッキリせず、常に尿意を感じている状態です。関係あるか分かりませんが、舌全体が白く、軟便、座って立ったときの立ちくらみがあります。どんな病気なのでしょうか?心配でたまりません。

【回答】 ご心配ですね。

頻尿、夜間頻尿、排尿後の不快感などの膀胱症状があります。

早急に泌尿器科を受診してください。

また舌全体が白い、軟便、座って立ったときの立ちくらみを認めていますから、

精密検査が必要です。

総合病院を受診して専門医に診てもらいましょう。
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投稿者 aids : 13:11

2014年07月19日

尖圭コンジローマ  ~問診と視診について~

今回は、皮膚科専門医の日常診療情報誌 DERMATOLOGY 第9号(2009年10月)

「ひ~ふ~み~」特集: 「性感染症」 Topics1.

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に私の記事が掲載されましたので報告いたします。

総監修:東京逓信病院皮膚科部長 江藤隆史先生

 尖圭コンジローマ ~問診と視診について~

尾上泰彦宮本町中央診療所 院長

Summary

尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により生じる疣贅で、大部分は性行為で感染する。原因となるのは主にHPV6型と11型である。診断には問診技術と視診技術が重要となる。形態的特徴から目視で診断可能であるが、診断困難な場合、生検による病理組織検査あるいはHPVの病原検査で鑑別診断を行う。

1.はじめに~尖圭コンジローマに思う

尖圭コンジローマ(condyloma acuminatumCA)はヒトパピローマウイルス(humanpapilloma virusHPV)の感染により生じる疣贅で、大部分は性行為で感染する。原因となるのは主にHPV6型と11型である。CAは性感染症(sexually transmittedinfectionsSTI)の中で比較的頻度が高く、皮膚科医の日常診療において避けて通れない疾患である。CAは疣贅以外の自覚症状がなく、潜伏期間が長いためSTIと気づかない患者がいる反面、インターネットなどで知識を得てCAと思い込んで受診する患者もいる。医師とて同じでCAと誤診し、過剰な治療をしてしまうケースにしばしば遭遇する。本稿では診断、特に問診技術、視診技術、鑑別診断について解説する。

2.問診のポイントとパートナーについて

診断には、問診技術とセックスパートナーに関する聴取が重要である。問診は、プライバシーを考慮した上で慎重に進める。診察の初めに問診を行う場合は、まずは簡単な項目(主訴、来院理由など)にとどめ、詳細は性器の視診時に行う。問診後に視診を行うより、視診の流れの中で問診を進める方が、より具体的な内容の聴取が可能となる。また、患者側も医師とのコミュニケーションがスムーズになる傾向がみられる。

発症時期は、疣贅以外の自覚症状が乏しく特定できないことが多い。感染機会・感染源についても、潜伏期間が約3週間~8ヵ月と長いため、パートナーが一人であれば特定可能だが、複数あるいは不特定多数の場合は困難である。職業などの患者背景は、感染源特定の参考となるので具体的に聴取しておく。また、性歴も感染源の特定に役立つ。パートナーとの性的行為の時期、その具体的内容、パートナーの人物背景について聴取しておくとよい。

既往歴に関しては、CAは初感染か再発か、CA以外のSTI罹患の有無などを確認する。CAの治療歴がある場合はその時期、治療法、効果など詳細に聴いておく。パートナー歴は、性的行為を持った人数、CAの有無、もしあれば治療内容、その他STIの既往歴を聴取する。パートナーも患者本人と同時に罹患していることが多く、約3040%にCAが認められる。現在、症状がみられなくても、数ヵ月後に発症するおそれがあるため、十分な追跡が必要である1)。診察は感染機会より期間を空けて2回以上行い、可能ならば6ヵ月後にも行う。

3.視診の心得

1.性器の視診前に口腔内の視診を  稀だが、CAの口腔内症例の報告もある2)。オーラルセックスが日常的に行われている現在、口腔内(粘膜・舌・咽頭など)の視診も忘れずに行う。特に性風俗従事者commercial sex workersCSW)や男性同性愛者においては必要である。

2.性器診察・視診の具体的方法
最初に、患者の訴えの部位と病状を確認する。男性性器・肛門部では、亀頭・冠状溝・包皮内板に発生することが多いので、包皮を十分に飜転し観察する。視診順序は外尿道口、亀頭、冠状溝、小帯、包皮内板、包皮輪、外板、陰茎根部、陰嚢会陰そして肛門の順で行う。特に外尿道口には病変が潜んでいることが多いため、両手指で広げて尿道内粘膜を視診する。陰嚢の視診は皺壁が多いので伸展する。真性包茎がある場合には、泌尿器科医と連携し、包皮を背面切開の上、亀頭を露出させて行うとよい。 女性性器では大陰唇、小陰唇、陰核包皮を手指で十分に伸展させて小病変を見逃さないようにする。腟前庭部、外尿道口の視診は丁寧に行う。さらに腟鏡を用いて腟壁・子宮頸部の視診を行う。必要があれば、産婦人科医との連携を行う。肛門周囲は皺が多いので皮膚を伸展させる。場合によっては、肛門科と連携し肛門鏡による直腸の観察が必要となる。視診では認め難い潜在病変を疑うときは、酢酸液を塗布して観察すると病変部が白色に変化してみられる。粘膜で平坦にみられる場合は3%液を塗布し、皮膚では5%液を塗布する3)。もし病変を認めれば、直接患者と対面し(見えにくい患部は鏡、画像などを利用して)、その部位を確認させ、どこに、どのような疣贅がどの程度できているか、説明し病識を持たせる。これらの視診は患者と共に行う姿勢で対応するのが望ましい。

4.STI検査
CAが認められた場合、他のSTIにも罹患している可能性があるため、S T I検査を実施する。H I V検査、梅毒血清反応、クラミジア検査、淋菌検査などは必須である。特にH I V感染者のC Aは多発し、難治例が多い。H I V非感染者に比べると、病変中のHPV量が多いという報告がある4)。

5.CAの診断困難な場合~病理組織検査

診断が不確実である場合には、病理組織検査を行う1)。CAの特徴は、軽度の過角化、舌状の表皮肥厚、乳頭腫症の他、表皮突起部位の顆粒層に濃縮した核と細胞質が空胞化した空胞細(koilocytosis)がみられることである1)。HPVの病原検査が、保険適用外である現状では病変部の生検によって診断を確定させることが重要となる。

 

6. HPV検出法

 

CAがウイルス感染症である以上、HPVの検出および同定による診断が望ましい。病原体の検出には

核酸検出法を用いる。実施方法としてH y b r i dCaptureHC)法とPCRpolymerase chain reaction

法の2種類がある。HC法では、低リスク型(6,11,42,43型)と高リスク型(16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68

型)のHPVを判別できる。遺伝子型の判定には、DNAチップ法などがある。PCR法は高感度なため、

過剰診断に対する注意が必要である1)。

 

7. 臨床像

 

男性のCAは、冠状溝周辺(図1)、包皮内板(図2)に多くみられるが、陰茎全体(図3)にもし

ばしば発症する。外尿道口(図4)にも発症するので視診時に注意する。陰茎根部周辺(図5

に黒褐色の隆起性疣贅が集簇して発症した場合には、生検を行い、ボーエン様丘疹症(Bowenoid

papulosis)との鑑別が必要である。肛囲(図6)に発症した際は、肛門鏡で直腸まで観察を行う。

女性の好発部位としては、腟及び腟前庭(図7)、大小陰唇、子宮口の他に、男性と同様に肛門及

び周辺部、尿道口(図8)などがある。

 

8. 鑑別診断

 

CAと鑑別を要する疾患には扁平コンジローマ(図9)、pearly penile papules(図10)、腟前庭乳頭腫症

vestibular papillomatosis(図11)、非性病性陰茎硬化性リンパ管炎(図12)、性器伝染性軟属腫(図13)、

ボーエン様丘疹症、epidermolytic acanthomaなどがある。

 9.最後に

現在、臨床医が行っているCAの診断は、問診、視診および病理組織検査のみで、あきらかに限界がある。適正な病原診断に基づくCA管理という理想像にはほど遠い状況である。現在、健康保険が適用となる病原診断検査はない。CAがウイルス感染症である以上、正確で感度がよい、HPVの型判別可能な診断法の早期保険適応が望まれる。

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投稿者 aids : 12:27

「尿の回数」

成人女性と思われる方から「尿の回数」について相談がありました。

【相談】
トイレへ行く回数がとても多い日と少ない日の差が大きくて、悩んでおります。

尿の回数はその日の調子によるので、長距離バスや映画館などで落ち着いて楽しむことができません。もちろん、水分は取らないように気をつけているのですが

これは、体調や、気温などが関係するものなのでしょうか?

あらかじめ原因や傾向が分かれば、日常生活をもっと楽しめるのではと考えております。

【回答】旅行や映画も落ち着いて楽しめない状態では、日常生活のQOL(生活の質)が 

低下してしまいますね。

 貴方が言う通り、トイレに行く回数は環境の変化、体調や、気温にも関係します。

毎日の尿量は体内の水分の調節機能や、腎臓の働きによってコントロールされています。

つまり、身体は生理的に尿量を調節しています。

普通は尿量に応じて排尿回数も変化します。

また女性は、トイレに行く回数を心配する方が多いようです。もちろん個人差はありますが、トイレに行く回数が1日に3~8回位であれば、回数が多くても少なくても、特に心配ありません。


特に夏場は発汗、不感蒸泄*などで体内の水分が失われますので、トイレの間隔も長くなりがちです。

回数が少ないだけはなく、尿量も少ないようでしたら、水分の摂取量が少ないのかもしれません。

また、排尿回数が少なければ尿の色が濃くなります。確認してみましょう。

身体にムクミがなく尿量が少ないのであれば水分の摂取量が少ないと考えられます。

身体のために、水分補給をする習慣をつけましょう。

夏場は特に、熱中症などの可能性も出てきます。

逆に、トイレに行く回数が多くても、排尿後に残尿感、不快感などがなければ心配ないと考えます。

尿は健康のバロメーターと言われており、尿量や排尿回数によっていろいろな病気がわかります。

現在、貴方は不安を抱えていますから、一度泌尿器科を受診されて相談されたらよろしいかと思います。

受診される時は1日のトイレに行く回数や、1回の尿量、1日合計の尿量などをチェックして、診察を受ける時に医師に伝えましょう。 お大事にしてください。

*不感蒸泄:汗以外に、気道や皮膚から蒸散する水分

 

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投稿者 aids : 12:22

2014年07月15日

クラミジアや淋菌の〝のどこし感染〟注意

20131128日発行の夕刊フジに私の記事が掲載されました。

その報告をいたします。 記事は下記の如くです。

「この時季・・気になるこの症状」

性感染症『クラミジアや淋菌の〝のどこし感染〟注意』

 今週は「性の健康週間」。性感染症(STI)の感染部位は下半身だけとはかぎらない。

オーラルセックス=口腔(こうくう)性交をすればのどにも感染する。

のどの感染は無症状が多いので、気づかないまま感染を広げてしまう。

夫婦間であればトラブルの元。十分注意しよう。

 

【口が感染源の温床】

病気には注意しているつもりでも、もらってしまうことがある。

「口ならいいだろう」と、ついやってしまうオーラルセックスに落とし穴が。

性感染症に詳しい宮本町中央診療所(川崎市)の尾上泰彦院長が説明する。

「男性の性感染症で最も多いクラミジア(細菌)と淋菌による尿道炎の最大感染要因は、

オーラルセックス。咽頭への感染があまり知られていないため、性感染症の温床になっています」

のどの感染は症状がないのが特徴。しかも、口腔咽頭は耳鼻咽喉科領域で性感染症に対する関心が低く、見逃されているのが現状という。

【女性器は症状乏しい】

 オーラルセックスでのどから性器に感染し、性器に症状が現れて初めて相手ののどの

感染を疑うことになる。だが、女性の場合、性器に感染しても8割ははっきりした症状が出ない。

「性器の淋菌感染者を調べると、咽頭からも検出される割合は男性よりも女性に多い。

風俗店で働く女性と一般女性の検出率を比べてみても同程度。

これはオーラルセックスの日常化が原因とも考えられます」

特に男性尿道炎では、オーラルセックスだけが原因になるケースは、淋菌による感染の割合が最も高いという。

【中耳炎の原因にも】

通常、無症状の咽頭感染でも、時には別の場所に症状が出る場合があるので要注意だ。

「咽頭に感染した原因菌が耳の方まで波及して中耳炎を起こすことがあります。

耳鼻咽喉科を受診しても普通の中耳炎で治療されてしまえば性感染症が原因だとは分りません」

射精の際に原因菌が目に入っても感染経路になるという。「目に入って結膜炎を起こすこともある。

その菌が結膜から鼻涙管を通って鼻腔へ行けば、咽頭感染を起こします」咽頭感染は、うがいで菌を採取する検査で診断がつく。治療は性器感染と同じで抗生物質を使う。

淋菌は、耐性菌が存在するので静脈注射の投与になる。

「専門家で性感染症と診断されたら、必ずパートナーも受診することが大切。

その際には咽頭感染の検査も受けることがポイントです」

淋菌の症状の特徴

【男性器】尿道から黄色の膿が出る。排尿のし始めが痛い

【女性器】80%の人は無症状。黄色っぽいおりものの増量、下腹部痛、不正出血など

 

クラミジアの症状の特徴

【男性器】50%の人は無症状。尿道から少量の分泌物が出る。むずがゆい、違和感、不快感など

【女性器】80%の人は無症状。水っぽいおりものの増量、下腹部痛、不正出血など

 

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投稿者 aids : 02:32

ワクチン接種で厚労省が揺れているが

2013621日 の日刊ゲンダイに私の記事が掲載されましたので報告いたします。記事は下の如くです。

  『ワクチン接種で厚労省が揺れているが』

【子宮頸がんのウイルスでオチンチンにがんができた】

子宮頚がんワクチンをめぐって、厚労省がスッタモンダしている。

今年4月に定期接種の対象にしたのに、歩行障害やけいれんなど重い副反応の報告が相次いだため、わずか2カ月で「中止はしないが、推奨はやめる」と決定したのだ。

接種対象となる小6から高1の娘を持つ人は、動揺するカミさんに「うちの子、どうしよう?」なんて相談を受けたかもしれないが、実はこれ、女だけの問題じゃない。男にも深く関係しているのだ。

宮本町中央診療所(川崎市)の尾上泰彦院長が言う。

「子宮頚がんは、HPVというウイルス感染が原因。このウイルスは100種類以上あり、そのうち10種類ほどの高リスクタイプに女性が感染すると、子宮頚がんを発症します。

感染経路はセックスですから、男性も感染し、陰茎がんを発症することがあります」

陰茎がんを発症するのは、このウイルスの高リスクタイプがペニスに感染した場合。

キスやクンニなどから、舌やのどに感染し、舌がんや咽頭がんの原因になることも報告されている。

がんを叩こうとオチンチンに放射線を受け続けたら、大事なオチンチンが黒ずんで、しまいには溶ける。それでもダメなら切除だ。舌がんで手術したら食事がままならなくなるし、咽頭がんの手術で声を失うのも耐えがたい。HPVは、男の命や人生も左右する。

「別の低リスクタイプのHPVがペニスに感染すると、尖圭コンジロームになります。

この病気はひとつまたは多数のイボが陰茎や陰のうにでき、カリフラワーみたいにボコボコと盛り上がるケースも珍しくありません。見た目が悪い上、薬をきちんと塗り続けないと、再発しやすく厄介です」(尾上院長)

妻を子宮頚がんで亡くした夫が再婚したら、後妻も子宮頚がんで亡くなったというシャレにならない話もある。

本気で子宮頚がんを予防するなら、尖圭コンジロームを含めて男もワクチンを接種しないと意味がないが、男性のワクチン接種は認められていない。

そもそもワクチンの予防効果は70%だ。中途半端なワクチンを承認した厚労省の責任は重い。

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投稿者 aids : 02:24

2014年07月10日

女性に多い4つの性感染症 後編

今回の後編は、引き続いて女性に多い性感染症についてお話します。

③ 淋病感染症について

男性では尿道、女性では子宮頚管に感染することが多い病気です。

ビックリな事実ですが、オーラルセックス増加により咽頭に感染する女性が増えています。

さらに、アナルセックスにより直腸に、手指が動くことにより眼にも感染します。

女性では膿みのようなのおりもの、不正出血、下腹部痛、排尿痛があります。

*バルトリン腺に感染するとバルトリン腺部が腫れ、強い痛みが出ます。

おそろしいのは、女性の約70%は症状がでないということです。

すると、治療をしないまま男性にうつしてしまうことになります。

そして、後に彼と別れた場合、彼は別の彼女にうつしてしまう。

これが永遠のループでつながってゆきます。

無症状に経過すると卵管炎、子宮付属器炎、骨盤腹膜炎と感染が拡がっていき、不妊症になる可能性もあります。 

次に④ 尖圭コンジローマについて簡単にお話しします。

ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によりできるイボの一種です。

性器の周りや肛門周辺にできます。潜伏期間は数週間から8ヶ月と長いので、複数の彼とエッチしていると誰からうつされたのかわからなくなります。

もしもHPV16型、18型に感染すると女性では子宮頸癌になる恐れがあります。

最後に、愛のある健康なセックスをしましょう。

「今日はコンドームなくていいよね」と耳元でささやく彼に負けてはいけません。

妊娠だけでなくSTIから自分を守るという意味で、彼とはちゃんと話合うようにしましょう。

また、喉や眼にも菌が感染することは覚えておきましょう。

*バルトリン腺:女性の腟口の左右に一対存在する分泌腺

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投稿者 aids : 12:07

女性に多い4つの性感染症 前編

2回(前編・後編)にわたって、女性に多い4つの性感染症(STI= Sexually 

Transmitted Infections)について簡単に勉強しましょう。

エッチのあと「なにか下半身がいつもと違う、おかしい」と感じたら要注意です。

彼が、STIにかかっているかもしれません。もしかしたら、彼から移されたかもしれません。

複数の彼がいる場合は、マジでもっとリスクが高くなります。

 しかし、症状が出ればまだ、いいのですが、症状が出ないと、検査や治療につながらず、後で身体が大変なことになり、心にも大きな傷ができてしまいます。

 

まず、① クラミジア感染症について簡単にお話しします。

クラミジアは、現在もっとも多く、性感染症の約半数を占めます。

10歳代後半から、20歳代のもっとも性行動が盛んな年代に多く、とくに女性患者は男性の2倍以上です。

感染すると帯下(おりもの)の増量、不正出血、下腹部痛、性交痛、排尿痛などの症状があります。

しかし約70%は症状が出ないとも言われ、放置すると不妊症になる可能性もあります。

この菌が手指を介して眼に入ってしまうとクラミジア性封入体結膜炎(濾胞性結膜炎)を起こす場合もあります。「目がまっ赤だよ!」「性感染症かも」という会話ができるくらい意識しておくとよいでしょう。

次に② 性器ヘルペスについて簡単にお話しします。

性器ヘルペスが初めてできると、性器、その周辺に小さな水疱、ただれが左右対称性にたくさんでき、痛みやかゆみが出ます。熱が出たり、足の付け根のリンパ腺が腫れたりします。

女性では膀胱炎症状も見られます。再発を繰り返す場合があるので必ず専門医を受診し診てもらいましょう。

次回後編は淋病感染症、尖圭コンジローマについてお話しする予定です。
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投稿者 aids : 11:59

2014年07月07日

月刊誌『テーミス』「新梅毒」急増の意外な感染源を警戒しろ!

月刊誌『テーミス』に私の記事が掲載されましたので報告いたします。

月刊誌『テーミス』は伊藤寿男氏が編集主幹です。

伊藤寿男氏は昭和33年、講談社に入社。『週刊現代』編集長。

『フライデー』編集長を兼務。昭和63年に同社を退社。

株式会社テーミスを創業、代表取締役社長兼編集主幹です。

この月刊誌『テーミス』は、時代が見える!未来が読める!

一歩先行く情報満載!を謳っています。

内容は
1.経済・ビジネスの最深部に迫る
2.読者の眼でマスコミの内幕を斬る
3.健康に役立つ最新医療情報を
4.「背景」に目配りした政治・教育・文化情報
5.ホンネだけの世界・国際情報 などです。

さて、THEMIS(テーミス)とは?何か? 調べみました。

THEMISはギリシア神話に登場する女神。左手に剣、右手に秤を持ち、判断から私心を取り去るため目を布で覆っている。正義と公平の守護神である。

 私の記事の掲載内容は下記の如くです。

 母親や赤ちゃんまで襲う

「新梅毒」急増の意外な感染源を警戒しろ

「もうエイズも梅毒も怖くない」が常識だが新手の風俗などから水面下で蔓延中!

 老いも若きも危機感が薄れて

 1985年、日本で初めてエイズが確認されたときの衝撃は、日本列島を震撼させたといってよい。ある有名俳優は外国旅行中だったが、国内を避けてフランスで治療を受けているとか、すでに死亡したという噂まで流れたものである。

それから後は、ある風俗地区のソープ嬢にエイズが発症したと風評が立つと、客足がばったり途絶えたりもした。ところが約30年たって現在では、死に至る病といわれたエイズも、効果的な治療法が発見されたこともあって、話題になることも少なくなった。

しかし、日本性感染症学会評議員で宮本町中央診療所院長の尾上泰彦氏は「文明国でHIV感染者が増えているのは日本ぐらいだ。さらに東アジア全体では急増している。10代後半から30代に多いが、特にMSM (Men who have Sex with Men)と呼ばれる男性同士でSEXするゲイに増加傾向がある」と語る。

もちろん若い世代だけではない。東南アジアへ旅行する中高年男性も、昼はゴルフをするものの、夜は現地の女性とアバンチュールを楽しむケースが常態化している。

現地の日本人ガイドによれば、「一時はエイズが怖くて夜の遊びは控えられていたが、ここ数年は『女性は全員HIV感染者ですから気をつけて』と注意するものの、全く気にしていないようだ」と語る。
一方、最もポピュラーでありながら、しばらくその名を聞くことのなかった性感染症である梅毒も急増しているのだ。

13年は全国で1千200人を超えたが、なんと3年間で患者数は倍増している。梅毒は感染症法で医師には全例報告が義務づけられているが、多忙などを理由に保健所に報告していないケースが多いから、実際の梅毒患者はもっと増大しているとみてよい。

梅毒は太平洋戦争終結数年後まで、患者であることを隠す不名誉な病気であることに加え、死に至る病として恐れられてきた。ところが抗生物質であるペニシリンの発見によって、完治できるようになったため、人前で口にすることも出来るし、もう恐ろしい病気ではなくなってしまった。

そんな誤れる安心感が広まったため、最近は、若い世代を中心に広く拡大しているというのが実状である。

しかも梅毒まで、エイズと同じようにMSMの急増が患者数を加速しているというのである。

(後文は省略いたします)

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投稿者 aids : 21:20

薬剤師への臨床講座「性感染症」

薬剤師の月刊誌PharmaTribuneファーマトリビューンに私の講座の記事が掲載されましたのでご紹介いたします。

臨床講座54宮本町町中央診療所尾上泰彦

性感染症  

Point  ポイント

1.疫学:性感染症の疾患別の報告数は、性器クラミジア感染症や淋菌感染症が1990年代半ば頃から増加して、2002年をピークに減少傾向に転じているのに対して、性器ヘルペスや尖圭コンジローマは不変か、やや増加傾向にある。

2.クラミジア感染症:性感染症のうち、患者数の最も多い疾患である。男性は尿道炎、精巣上体炎、女性は子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患、劇症の急性肝周囲炎などを発症する。マクロライド系薬、ニューキノロン系薬、テトラサイクリン系薬のいずれかを投与する。

3.性器ヘルペス:単純1型(HSV-1)または2型(HSV-2)の感染により、性器に浅い潰瘍性または水疱性病変を形成する。初感染の臨床症状は様々で、強い急性症状を呈するものか無症状のものまである。抗ヘルペスウイルス薬を投与する。

4.淋菌感染症:男性においてはクラミジアと並んで頻度が高い性感染症である。男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎を起こす。治療には、セフトリアキソン、セフォジジム、スペクチノマイシンの筋注、静注、あるいはアジスロマイシンの内服を用いる

5.尖圭コンジローマ:ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によりできるイボの一種である。治療には、イミキモドクリームの外用、凍結療法、電気メスなどで切除する外科的切除法、レーザー蒸散術などがある。

6.薬剤師へのアドバイス:性感染症を発症した患者は、心身両面において強いショックを受けている。薬剤師から病気について尋ねるのは難しいが、質問を受けた場合には的確な回答ができるようにしておきたい。

 (中略) 

薬剤師へのアドバイス

性感染症を発症した患者は、心身両面において強いショックを受け、誰に相談しようか、どの病院に行こうか、いろいろ悩んだ末に受診している。パートナーに申し訳ない、打ち明けにくいなど、対人関係までに悩みが及ぶことも少なくない。私は、疾患の治療はもとより、いかに患者の心の傷をケアしてあげられるかを念頭において診察をしている。患者の性格にもよるが、ときには、診察中にベッドに横たわった男性の性器に向かって「君はいつどこで何をしたのかな?どうしてこうなったか教えてくれる?うーん。答えてくれないようだね。じゃあ、お父さんに聞いてみよう」と言って患者から笑いを引き出す工夫をしている。

薬剤師から、患者に病気をついて尋ねることは難しいと思うが、患者から尋ねられたら、性感染症は誰でもかかる可能性があること、不安な症状があったらなるべく早く受診し正しい治療を受けることが重要であることを伝え、患者が前向きに治療に臨めるよう手助けをする必要がある。積極的に個々の患者の特徴を理解し治療が継続できるように患者を守り、適切に対応していただきたい。

おわりに
最近は、性行動の開始が低年齢化している。10代は体の構造上、性感染症に罹患しやすいだけでなく、知識不足や診療機関への受診行動に結びつきにくいため、10代の性感染症の増加が懸念されている。

性感染症の制御については、コンドームの使用が勧められてきたが、残念なことにコンドームでは性感染症を100%予防できない。性器ヘルペスや尖圭コンジローマはコンドームで覆うことができない部位にも病変ができるからである。これらの手ごわい性感染症の制御には、性行為開始前のワクチン接種が最善の策と考えられる。2011年に発売された4価HPVワクチンのガーダシルは、子宮頸がんの予防だけでなく、尖圭コンジローマの予防効果が期待されている。若年女性に接種することにより、接種年代の女性の早期の発症率低下のほかに、結果的に男性の発症率も低下することが報告されている。

HPV4価ワクチンを皮切りに、性感染症の予防に有用なワクチン開発が望まれる。

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投稿者 aids : 12:20

2014年07月06日

日本性感染症学会 ・日本エイズ学会合同シンポジウム

日本性感染症学会・日本エイズ学会合同シンポジウムで講演をいたしましたので報告いたします。

要領は下記の如くです。

日本性感染症学会第26回学術大会

日本エイズ学会合同シンポジウム(性感染症を多角的に考える)

日時:2013年11月17日(日)14:00~16:00

 会場:長良川国際会議場
岐阜市長良福光2695-2  Tel058‐296‐1200

司 会 : 神戸大学大学院医学系研究科

腎泌尿器科学分野教授荒川 創一先生

演題 1. 『目で見るSTI 泌尿器科の立場から』

                   宮本町中央診療所 院長 尾上泰彦先生

 

演題 2. 『目で見るSTI 皮膚科の立場から』

                    東京慈恵会医科大学皮膚科 助教 石地尚興先生

 

日本エイズ学会合同シンポジウム  目で見るSTI

目で見るSTI 泌尿器科の立場から

抄録

性感染症(STI)は異性間あるいは同性間で性の営み、性行為があって初めて生じるという、大変人間性豊かな病気であり、誰もが感染しえる疾患群である。またSTIを疑うポイント?とは本人が、何時、何処で、誰と、何をしたのか、どんな事象が起きたのかの検証ともいえる。STIの臨床現場においては,教科書でみるような典型的な症例ばかりではない。そのため,STIの診断には問診技術と視診技術が重要となる。問診は簡単な項目(主訴、来院理由など)の聴取にとどめ、詳細は性器の視診時に行うことを勧めたい。これは視診の流れの中で問診を進める方が、より具体的な内容の聴取が可能なことを経験するからである。

プライベートパーツを見せている状態の方が、患者側も心が開きやすく、医師とのコミュニケーションが取りやすいのだと想像する。性行動の内容としてオーラルセックス、アナルセックス、性玩具の使用などの聴取、ことにオーラルセックスが日常的に行われている現在では、これについての聴取は診断に重要である。パートナーの人物背景も参考となる。特に、10代の後半~30代の男性患者では男性同性愛者(MSM;men who have sex with men)の可能性もある。MSMの可能性のある患者に対しては、セックスパートナーが異性であることが前提であるかのような問診をすべきではない。MSMの患者はそうした問診をされると、医師に対して心を閉ざす傾向が多く、良好な医師患者関係が望めなくなる可能性が高い。また、現在はインターネットが広く普及し、患者もそれなりの知識を持って来院するが、誤った情報にいわば洗脳されてしまっている場合も多く、それらを柔軟に修正する必要がしばしばある。

視診において通常のベッドではSTIの十分な局所所見が得られないことが多く、外陰部の診察には必要に応じて検診台の使用を勧めたい。臨床医は、診察したその日、その瞬間の臨床所見を見逃すと、後には二度と診られないという意識で、プライベートパーツに潜む多彩な情報を見逃さないようにすべきである。それが患者のプライベートパーツを見せることへの覚悟に応えることにもなる。

泌尿器科の立場から、私が経験しえたクラミジア感染症、淋菌感染症、性器ヘルペス、梅毒、尖圭コンジローマなどのSTI症例を中心に臨床写真を提示しながら視診技術のポイントについて言及し「目で見るSTI」の実態に迫る。多くが演者の臨床経験に基づいた内容であるが、パンツの中に隠された,驚くようなSTIの情報が、実際の診療のヒントになれば幸いである。

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投稿者 aids : 01:31

排尿時の痛みについて

 女性から排尿痛について相談がありました。今回はこの排尿痛についてお話いたします。

【相談】25歳の女性です。

排尿時に時々痛みがあります。膀胱炎には数回なったことがありますが、その時ほどは痛くありません。なので、いつも病院にいかずに様子をみていると気づいたら痛くなくなっています。一度、検査した方が良いでしょうか?

【回答】
まず、急性単純性膀胱炎についてお話します。頻尿、排尿痛、混濁尿が典型的な膀胱炎の3徴候です。

排尿痛は排尿終末時痛が特徴です。しかし、排尿初期痛であれば女性でも尿道炎を疑う必要があります。

また膀胱炎症状に伴って発熱や鼡径(そけい)部のリンパ節が腫脹し(はれて)痛みがあれば、性器ヘルペスの初感染を考えなければなりません。排尿痛を繰り返すのであれば、性器ヘルペスの再発時の排尿痛が疑われます。

 症状だけでは診断がつかないこともありますから、ご心配であれば一度、専門医を訪ねることをお勧めいたします。

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投稿者 aids : 01:26

川崎市における淋菌の抗菌薬感受性と遺伝学的性状

当院の研究生が第88回日本感染症学会学術講演会で口頭発表いたしましたのでご報告いたします。

88回日本感染症学会学術講演会

期日:平成26年(2014年)618日~20日

会場:ヒルトン福岡シーホーク

 学会発表内容は下記の如くです。

03-112012年~2013年に川崎市において分離されたNeisseria gonorrhoeaeの抗菌薬感受性と遺伝学的性状について

1)東邦大学看護学研究科感染制御学、2)宮本町中央診療所

1)井村幸恵、金山明子、小林寅喆 、2)尾上泰彦

【目的】

川崎市で淋菌感染症が疑われた患者の生殖器および咽頭より分離した、

N.gonorrhoeaeに対する抗菌薬感受性を測定し、遺伝学的に背景について検討を行った。

【方法】

20123月~20134月に淋菌感染症の疑いで来院した115例(男性67例、女性48例)を対象とした。

採取された尿道・腟分泌物および咽頭ぬぐい液からN.gonorrhoeaeを目的に分離培養し、CLSIが推奨する寒天平板希釈法に準じ抗菌薬感受性を測定した。

分離したN.gonorrhoeaeについてNG-MAST法により遺伝学的解説を行った。

【結果】

115例中培養陽性は83例(70.4%)でありそのうち男性は52例(77.6%)、女性は2960.4%)であった。

N.gonorrhoeaeの生殖器・咽頭同時検出は男女とも6例に認められた。生殖器陽性例における咽頭陽性例は男性15.4%、女性32.1%であり、女性の方が高かった。

NG-MAST法による解説を行った98株は57タイプに分類された。

そのうち、ST6771に分類された株が13株で最も多くを占めた。

ST677113株中12株はCTRXSPCMTCCPFXいずれにも感受性であった。

咽頭と生殖器の両方からN.gonorrhoeaeが検出された12例のうち、2例において両部位からの分離株のSTが異なっていたが、1例はMICパターンが類似していた。

その他10例は咽頭および生殖器分離株に対するMIC値に大差はなかった。

ST2958に分類された6株、ST1407に分類された5株は、PCGTCCPFXいずれにも耐性を示した。

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投稿者 aids : 01:21

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