泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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臨床医からみたHIV診断法の新たな展開

岡山コンベンションセンターにて2016年12月3日 日本性感染症学会 第29回学術大会が開催されました。
 
私はランチョンセミナー1の司会(座長)を務めましたので報告いたします。
 
①ランチョンセミナー1のポスター

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②セミナー『臨床医からみたHIV診断法の新たな展開』 要旨
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セミナーの会場は岡山コンベンションセンター 1F イベントホール東
スポンサーメーカーはアリーア メディカル(株)です。
 
セミナー1の演題は 「臨床医からみたHIV診断法の新たな展開」
 
講師は川崎医科大学 血液内科学教授の和田 秀穂(わだひでほ)先生です。
 
セミナー要旨は写真②を参考にしてください。

新たに開発された第4世代HIV迅速測定法の紹介をされました。
 
③和田 秀穂教授と共に
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④司会:尾上 泰彦
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⑤司会:尾上 泰彦

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2016年12月05日 | トラックバック (0)

【子宮頸癌ワクチン 接種呼びかけ中止】

子宮頸癌は数年~数十年にわたって、持続的にヒトパピローマウイルス(HPV)に感染した後に起こるとされています。
子宮頸癌の予防ワクチンは、子宮頸癌全体の50~70%の原因とされる2種類(16型・18型)のHPVに予防効果があります。
HPVの感染や癌になる過程の異常(異形成)が90%以上予防できたとの報告があり、これに引き続いて起こる子宮頸癌の予防効果が期待されています。
子宮頸癌の予防ワクチンは世界保健機関(WHO)が接種を推奨し、120カ国で接種実績があります。また多くの先進国では公的接種されています。
ところが、今年4月に公的に定期接種の対象にしたのに、わずか2カ月で「ワクチン接種の中止はしないが、推奨はやめる」と決定されました。 歩行障害やけいれん、体の複数部分に慢性的な痛みが生じるなど、重い副作用が相次いで報告されたためです。
この報告を受け、接種対象となる女の子の親達は動揺しています。確かに副反応の心配を抱えたまま、子供たちに接種を受けさせるわけにはいきません。
今回はこのテーマについて、現在の状況を具体的にお話いたしましょう。
平成25年6月14日に、厚生労働省より各都道府県知事あてに、「ヒトパピローマウイルス感染症の定期接種の対応について」積極的に接種を勧奨すべきでないとの勧告が通達されました。その内容は次のようなものです。
1.積極的接種勧奨の差し控え
この7月中旬の中学1年生女子を対象に個別通知を発送する予定でしたが、専門家による再評価により結論が出されるまで延期いたします。
2.ワクチン接種は可能であることの説明
これは接種勧奨の差し控えであって接種中止ではありません。保護者に有効性とリスクを十分に理解してもらったうえでの接種はできます。 今回の措置で次回接種を差し控えた場合、接種間隔を超えるケースが想定されますが、これについては国において検討中です。 高校1年生に対しても経過措置も含め検討されています。 3.国による再検討
多くの問題点はありますが、国において引き続き子宮頸癌予防ワクチンについて検討されることになっています。 結論がでるまで半年程度かかる見込みです。
これを受けて地方自治体およびその医師会は、ワクチン接種を希望される方へ、 副反応が起こるリスクを十分に理解した上で接種いただくよう、お願いすることになりました。
子宮頸がんの定期予防接種は原則、小学6年から高校1年の女性が対象となります。希望者については、今後も公費負担で予防接種は受けられます。 今後は副作用のリスクが解明され、接種による予防効果が大きいと判断されれば、積極推奨に戻ることもあるそうです。
「より安心して接種をしてもらうために情報を集める」との事で、接種対象の子供を持つ保護者らに冷静な対応が求められています。

2013年06月27日 | トラックバック (0)

HPV感染について(後編)

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今回は、HPVウィルスが引き起こすその他の病気についてお話いたしましょう。 

HPVは、子宮頸癌以外の病気を引き起こすことがあります。
少し専門的になりますが、高リスクの16型、18型で生じるのが、外陰上皮内腫瘍、腟上皮内腫瘍であり、低リスクの6型、11型で生じるのが、尖圭コンジローマという病気です。

そして 尖圭コンジローマ が、妊婦の体内で母子感染を起こすと、赤ちゃんが 再発性呼吸器乳頭腫症(RRP)になることがあります。 
これは、妊娠している女性が、尖圭コンジローマを発症していると、出産するときに、産道で赤ちゃんにHPVが感染してしまう可能性があるということです。 

生まれてきた赤ちゃんがHPVに感染した場合、ごくまれですが、喉にイボができる 再発性呼吸器乳頭腫症(RRP)を発症してしまうことがあります。 
この場合、声がかれたり、イボが大きくなることで呼吸困難になり、命にかかわる場合もあります。イボを取り除くため、頻回に何度も手術を繰り返すこともあります。 

腟内に尖圭コンジローマが多発している場合や、非常に大きな尖圭コンジローマでは、帝王切開が必要になることがあります。 
ですから、女性は定期的に子宮頸癌の検診を受けることが必要なんですね。

しかし、日本はこの検診率が世界的にみてまことに低く、寂しい限りです。
私の願いの言葉で、この回を結びたいと思います。 
「女性たちよ、良き人生を!」
(尚、MSD株式会社の資料を参考にいたしました)

2011年09月28日

HPV感染について(中編)

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前回は、子宮頚癌の原因となるHPVウィルスがどういうものかをご説明しましたね。
今回は、子宮頚癌の症状についてお伝えしたいと思います。

子宮頸癌の恐ろしいところは、初期にはほとんど症状が表れないことです。
気付いた時には、すでに進行していたというケースも少なくありません。 

病気が進行してから現れる症状は、性交渉の時に出血する、生理に関係のない出血がある、茶色のおりものが増える、悪臭を伴うおりものがでる、下腹部や腰が痛むなどがあります。 
子宮頸癌の発見が早ければ、子宮の摘出手術などをせずに、子宮を守ることも可能です。 

子宮頸癌の進行は5期に分類できます。
その5期とは0期、Ⅰ期、Ⅱ期、Ⅲ期そしてⅣ期です。

各期の状態は、以下の通りです。
0期の状態は、子宮頸部の上皮内に癌細胞がとどまっている。
Ⅰ期の状態は、癌細胞が子宮頸部のみにある。
Ⅱ期の状態は、癌細胞が子宮頸部を超えて、周囲に広がっている。
Ⅲ期の状態は、癌細胞が子宮頸部を超えて、骨盤壁や腟の下部まで達している。
Ⅳ期の状態は、癌細胞が子宮を超えて、膀胱や直腸まで広がっている。 

しかし幸いに、0期の状態の時期に発見できれば、子宮を温存する治療ができ、治療後の妊娠や出産も可能となります。 
また、HPVというウイルスが原因となるのは子宮頸癌だけではありません。
このことについては、次回に詳しくお話いたしましょう。
(尚、MSD株式会社の資料を参考にいたしました)

2011年09月28日

HPV感染について(前編)

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今回は、「HPV感染」について勉強いたしましょう。
最近、20~30代の若い女性の子宮頸癌が増えています。
子宮頸癌は子宮の入り口(頸部)にできる癌です。
子宮頸癌の原因は、高リスクのヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することです。 
HPVはとてもありふれたウイルスで、性交渉の経験のある女性の80%以上が、
50歳までに感染を経験すると言われています。
特に若い年代の感染率は非常に高いです。
 
150種類以上の型があるHPVの中でも、15種類程度が癌を引き起こす可能性がある
「高リスク型」と呼ばれています。
このうち「16型」、「18型」が子宮頸癌の原因の約65%を占めています。 
高リスク型のHPVに感染するとどうなるか、簡単にご説明いたしましょう。 

感染したからといって症状は、特に何もありませんし、すぐに癌が発症するわけではありません。人間の免疫力によって多くの場合、ウイルスは体から自然に排除されます。 
しかし、この機能がうまく働かずにウイルスが子宮頸部に残り、長い間感染が続いた場合に、
その部分の細胞が5年以上かけて癌細胞へと進行していく場合があります。

では子宮頸癌の症状はどんなものなのでしょうか?
次回は、その症状について詳しくみていくことにいたしましょう。
(尚、MSD株式会社の資料を参考にいたしました)

2011年09月28日

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