泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2013年07月31日

ウイルス抗原検査1ウイルス分離培養

今回は何種類かあるウイルス抗原検査のなかでも  『ウイルス分離培養(シェルバイアル法)』についてお話いたします。

この検査は、病変部位の感染性ウイルスの存在を証明できる、 感染症のゴールドスタンダードとなる検査法です。

ただし、感度(*1)は核酸増幅法には劣ります。

Vero細胞などのウイルス感受性細胞(*2)を培養し、採取した検体(*3)を接種して培養後、 細胞変性効果がみられればウイルスの存在を証明できます。

さらに、細胞変性効果がみられた部分を擦過し、モノクロール抗体を用いた 蛍光抗体法によりウイルス特異抗原(*4)を検出できるので、 単純ヘルペスウイルスHSV-1、HSV-2の型別判定も可能です。

個人施設で行うにはVero細胞などの単純ヘルペスウイルス感染症を培養しておく 必要があり、操作も煩雑であるため、日常診療での実施は難しいです。

検査会社に依頼可能ですが、保険適用ではないため高コストとなり、 患者さんにとっては負担となります。

(*1)感度:陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率
(*2)ウイルス感受性細胞:ウイルスが好み、ウイルスが増殖できる細胞
(*3)検体:検査の材料。人体から得られた組織の一部など。
(*4)抗原:免疫反応で、抗体を作り出す原因となる物質


投稿者 aids : 22:51 | トラックバック

皮膚粘膜HSV感染症の診断法

皮膚粘膜HSV(単純ヘルペスウイルス)感染症の診断法には、様々なものがあります。

臨床医は、各検査法の特徴についてよく理解し、これらの結果のみから診断するのではなく、 その結果を診断の一助として利用することが必要と考えます。

患者にとって「ヘルペス」という診断は、医師の想像を遥かに超える精神的負担や混乱を 招くものであり、検査の結果から容易に「ヘルペス」と診断し、ヘルペスで悩む患者を増やしてはなりません。

反対に、検査結果を過小評価し、不本意な感染を拡大させないよう留意することも忘れてはいけません。

ウイルス学的検査には抗原検査、抗体検査、遺伝子検査があります。 次回から、ウイルスの存在を直接証明できる抗原検査について、ご説明していきたいと思います。


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投稿者 aids : 18:58 | トラックバック

2013年07月29日

『単純ヘルペスの鑑別診断について』

皮膚科領域の日常診療で遭遇する単純ヘルペスは、その多くが典型例であるため、 ウイルス学的検査を行わなくても、問診や臨床所見により診断は容易に行われます。

しかし、他の疾患との鑑別を要する例や非典型例では、ウイルス学的検査が必要となることがあります。特に、免疫不全患者では深く大きい潰瘍を形成し、潰瘍周囲の炎症所見が乏しい非典型例があります。

しかしながら、日本では保健適用の検査が限られており、検査法によって感度(*1)・特異度(*2)が異なるため、これらを充分に把握した上で検査を実施することが重要となります。 単純ヘルペスと鑑別を要する疾患を次に示します。

◆ヘルペス性歯肉口内炎、口唇ヘルペスとの鑑別が必要な疾患 口腔カンジタ症、手足口病、ヘルパンギーナ、多形滲出性紅班、習慣性アフタ、 天疱瘡、帯状疱疹、伝染性膿痂疹、口唇炎、口角炎

◆性器ヘルペスとの鑑別が必要な疾患 帯状疱疹、ベーチェット病、梅毒、固定薬疹、鼡径(そけい)リンパ肉芽腫、 カンジタ症、急性HIV感染症、軟性下疳

◆カポジ水痘様発疹症との鑑別が必要な疾患 アトピー性皮膚炎の急性増悪(*3)、伝染性膿痂疹、自家感作性皮膚炎

次回から、この皮膚粘膜の単純ヘルペスウイルス感染症の検査法について、 専門的になりますが、順次お話しします。 それではご機嫌よう。

(*1)感度:陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率
(*2)特異度:陰性のものを正しく陰性と判定する確率
(*3)急性増悪(ぞうあく):落ち着いていた病状が急激に悪化すること。
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投稿者 aids : 17:51 | トラックバック

2013年07月19日

性器ヘルペスの検査について

皮膚科の先生から性器ヘルペスの検査について、相談を受けました。 今回はその時の回答を基に、実際の性器ヘルペス鑑別診断について、お話しましょう。

性器ヘルペス、口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎などの形態をとる皮膚および粘膜の単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)感染症は、皮膚科領域の日常診療でよく遭遇する疾患です。

こうしたHSV感染症の診断には、典型的な症状に対する理解、適切な問診と視診を中心とする診察が不可欠です。

典型例においても確定診断には検査が望ましいのですが、日常診療においてしばしば遭遇する非典型的な症例の場合にも、適切な検査を選択する必要があります。

HSV感染症の診断法には、ウイルスを直接証明する抗原検査と、血清抗体の上昇によって診断する抗体検査とがあります。

血清を用いた抗HSV抗体価の測定は、日常診療において比較的施行しやすい検査の一つですが、病変のウイルスの存在を証明することは難しく、また、検査結果の判読には各検査手法の特徴をよく理解することが必要です。

一方、病変からの検体を用いた検査ではTzanck試験、蛍光抗体直接法によるウイルス抗原検査、ウイルス分離培養およびシェルバイアル法、核酸増幅法等があげられます。

核酸増幅法の中でもLAMP法は感度(*1)および特異度(*2)が高く、簡便かつ迅速に結果が得られる長所があります。

さらに、近年イムノクロマト法を用いた非常に簡便な迅速検査キットがHSV感染症でも使用可能になっています。

(*1)感度:陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率
(*2)特異度:陰性のものを正しく陰性と判定する確率 0719.jpg

投稿者 aids : 13:11 | トラックバック

2013年07月01日

「性器ヘルペス 日常診療における鑑別診断の実際」

「性器ヘルペス 日常診療における鑑別診断の実際」
皮膚科の先生から性器ヘルペスの検査について相談を受けました。 以下がその内容です。
性器ヘルペス、口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎などの形態をとる皮膚および 粘膜の単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)感染症は皮膚科領域の日常診療でよく遭遇疾患です。
こうしたHSV感染症の診断には典型的な症状に対する理解、適切な問診と視診を中心とする診察が不可欠です。
典型例においても確定診断には検査が望ましいが、日常診療においても非典型的な症例に遭遇することがしばしばあり、この場合にも適切な検査を選択する必要があります。
血清を用いた抗HSV抗体価の測定は、日常診療において比較的施行しやすい検査の一つですが、病変のウイルスの存在を証明することは難しく、また、その判読には各々の手法の特徴をよく理解することが必要です。
一方、病変からの検体を用いた検査ではTzanck試験、蛍光抗体直接法によるウイルス抗原検査、ウイルス分離培養 およびシェルバイアル法、核酸増幅法等があげられます。
核酸増幅法の中でもLAMP法は感度および特異度が高く、簡便かつ迅速に結果が得られる長所があります。さらに、近年イムノクロマト法を用いた非常に簡便な迅速検査キットがHSV感染症でも使用可能になっています。
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投稿者 aids : 11:00 | トラックバック

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