泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2007年07月27日

HIV検査はいつ受ければいいの?

最近はエイズのことをマスコミ等で取り上げられる機会が少なくなったこともあり、一般の人の関心は薄れがちですが、文明国でエイズが増えているのは日本だけです。
日本国内ではHIV感染は年々確実に拡がりつつあります。
感染してもエイズ発症までの数年間は特別な自覚症状がほとんどなく、感染に気づくことができません。 そこで、感染の心配のある場合には血液検査が必要です。

HIV検査には1、抗体検査と2、NAT検査(核酸増幅検査)の2つがあります。
「抗体検査」は方法が比較的容易で、スクリーニング検査として広く用いられています。
約30分で結果が出る迅速検査も抗体検査のひとつです。
この検査は感染の心配なことがあってから2ヶ月以上たってから受けてください。
ほとんどの医療機関では氏名は匿名(仮名)でも検査は受けられます。
基本的にはHIV検査に保険証は必要ありません。 プライバシーも守られます。
民間の医療機関では、検査料金は取り決めがありませんから各医療機関によってバラツキがありますが、およそ¥5,000~¥10,000です。
検査は担当医と簡単な面接をし、少量の採血を受けるだけです。
検査結果は約30分後担当医より聞くことができます。
「迅速抗体検査法」は通常の「抗体スクリーニング検査法」とほぼ同じ精度であり、検査法として特に問題はありません。 安心して受けてください。
心配なことや不安なことについては担当医と相談ができます。

ただし「抗体スクリーニング検査」では、HIVに感染していないのに、たまたまHIV抗原と反応する抗体を持っていて検査結果が陽性(偽陽性)となる人が、通常1000人に数人はいます。
従って、抗体検査陽性の場合には、その陽性結果が本当にHIV感染による陽性なのか、偽陽性なのかを確認する「HIV確認検査」(WB法:ウエスタンブロット法)を行う必要があります。
「抗体スクリーニング検査」で陰性の場合、HIV感染の心配はほとんどなくなります。
ただし、感染後2ヶ月以内で検査を受けた場合は感染していても検査結果が陰性となる場合があるので、2ヶ月以上経ってからもう一度検査を受けましょう。

「NAT検査」は、血中のウイルスそのものを検出します。
技術的に高度な検査で、抗体検査に比べ費用と時間がかかるので、スクリーニング検査としては通常使われていません。「NAT検査」は感染の機会があってから6週間以上たってから受けてください。
もし迅速検査が陽性の場合は確認検査を、感染初期の可能性がある場合はNAT検査(核酸増幅検査)を速やかに受けましょう。 感染の心配のある方は検査を受けて心に平和を勝ち取りましょう。
ほとんどの保健所でもHIVの検査は可能ですが、その内容については 自分で確認いたしましょう。

投稿者 aids : 11:28

2007年07月13日

どんな病気なの?性感染症って!

性感染症とは性行為またはそれに類似する行為で感染する病気の総称です。

日本では性にまつわる病気の名称は
花柳(かりゅう)病(昭和2年~)、
性病(昭和23年~)
性感染症(昭和63年~)
へと変遷してきました。

世界的にはWHO(世界保健機構)は
昭和50年に“VD= venereal diseases ”を改めて“STD = sexually transmitted diseases ”を提唱し、さらには平成10年、性感染症の概念を拡大し“STI= sexually transmitted infections ”を推奨し現在に至っています。

性感染症の病原微生物の大きさを比較すると、かつてのマクロレベルからミクロレベルへ、さらにはナノメーターオーダーの時代に突入し、病原微生物の主役の座を長年務めていた細菌がその座をウイルスへと明け渡してしまいました。
その意味では今日は無症候性ウイルス性STI時代を迎えているともいえます。

また、かつては“花柳病”といわれ、男性の遊び人の病気とされていましたが、今や性感染症は女性優位の時代となり、性行動の活発な若い女性のトレンドになっていると言っても過言ではありません。
年齢的にみると性感染症は10代後半から急激に増加し、20代前半に大きなピークを迎え20代後半そして30代前半へと徐々に減少しています。
まさにこの現象は性活動の最も盛んな若者に性感染症が多いことを 如実にあらわしています。
また性情報の氾濫により初交年齢が低下し、それに伴い性感染症の低年齢化にますます拍車がかかっています。

地域別にみてみますと、かつての性病時代には都会の病気と思われていましたが、今や都会と地方の差は性感染症に関してはほとんど無くなっています。
症状についてみますと“性病”といわれた時代には多くは症状がありましたが、現在の“性感染症”は無症状あるいは症状の乏しい疾患が増えています。

セックスの様式も多様化し“性病”といわれた時代には腟性交が主流でしたが、今日では世情を反映し風俗産業をはじめ、若者の間にはオーラルセックスが日常化しています。
現在、日本では男性の性感染症の中で最も頻度の高い疾患はクラミジア性尿道炎、次いで淋菌性尿道炎です。しかもその最大原因はオーラルセックスと考えられており、 『口腔咽頭は性感染症の温床』とも言われています。
しかもクラミジア性、淋菌性咽頭炎はほとんどが無症候であるため、臨床医も、これを見逃してしまうケースが多いようです。

こうして性感染症は知らずして家庭内に侵入し”家庭内環境汚染”を招いています。
また、もし何かの性感染症にかかっているとHIVに数倍、感染しやすいことも忘れないでください。

投稿者 aids : 11:20

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