泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

« 2012年11月 | メイン | 2013年01月 »

2012年12月19日

「キス病」伝染性単核球症とはどんな病気なの(後編)

christmasbear.jpg


 今回は、「キス病」とも呼ばれる、伝染性単核球症の症状について、勉強していきます。

発病する前には悪寒発熱とともに頭痛があり、約1週間位持続します。
まれに吐き気、嘔吐があることもあります。
ついで体温は急激に上昇し、40℃以上にも達する場合もあります。
咽頭痛があり、口蓋扁桃には発赤腫脹がみられ、ときに膿が付着します。
また全身のリンパ節腫脹があり、特に約70%の方に後頸部リンパ節の腫脹疼痛がみられ、
約50%において脾腫、約10%において肝腫大がみられます。

肝機能障害はかなり高率に認められますが、2~3ヶ月で治癒に向かいます。
GOT、GPT、LDHなどの上昇があり、黄疸はまれで、ほかのウイルス感染による急性肝炎と区別する必要があります。

眼球後部疼痛、結膜炎、眼瞼腫脹などの眼科的症状を示すものが約15%あります。
その他に腹痛、髄膜刺激症状、眼球振盪、構音障害、嗅覚脱失などもみられます。

発熱は4~20日間持続して解熱します。
微熱が暫時持続することもあり、リンパ節腫脹および脾腫は急性症状消退後もしばらく持続します。

もし脾臓が腫れていると、転倒したときや、スポーツをしたときに脾臓が破裂して死亡することもあります。

治療については、特別な治療をしなくても数週間~2カ月以内には回復しますが、多くは対症療法で、解熱剤、肝臓を守る薬などが用いられます。
抗生物質は病気そのものに対しては効果もないので、二次感染した場合にのみ使用します。
脾腫がある場合は脾臓が破裂する危険があるので、スポーツは禁止します。

それにしても「爆笑問題」の田中裕二さんは重症化せずに済み、安堵いたしました。
おめでとうございます。

投稿者 aids : 12:36

「キス病」伝染性単核球症とはどんな病気なの(前編)

christmastree.jpg


お笑いコンビ「爆笑問題」の田中裕二さんが、
11月13日、伝染性単核球症による肝機能障害のため都内の某病院へ入院し、話題になりました。今回はこの伝染性単核球症について勉強しましょう。

伝染性単核球症は米国では一時、大学生のなかでかなり流行し「キス病」とも呼ばれている急性感染症です。
原因はエプスタイン・バー・ウイルス(EBウイルス)の感染で、主に唾液を介して感染します。多くの人は3歳までに感染します。
3歳までに感染すると発症せずにすみますが、この時期を過ぎて感染すると発病してしまいます。
子供には少なくて20歳代、30歳代で約50%以上を占めます。

唾液による感染が多く、夫婦間、恋人同士、性風俗などからの感染もあり、若い人の間では「キス病」とも呼ばれています。
潜伏期間は約30〜50日です。

発病すると急性肝炎の疑いで、大きな病院に入院する場合もあります。
臨床症状はいろいろな症候が出てきて、病気の始まりには正しい診断がつきにくい場合もあります。

では、具体的にどんな症状が出るのかについて、次回お話することに致します。

投稿者 aids : 12:26

Entries

Archives