泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2009年09月04日

尿の覚醒剤検査が陽性!(後編)

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前回、肛門に覚醒剤を入れてしまったがために、尿検査で陽性になってしまい、
店を辞めてしまった風俗嬢のお話をしました。
今回は覚醒剤が人の体にもたらす影響について具体的にお話ししましょう。

覚醒剤は一般的に「シャブ」、「ブツ」などど呼ばれていますが、
若者の間では「S」、「スピード」などともいわれています。
覚醒剤は、現在最も乱用されている薬物ですが、もともと覚醒剤には、
アンフェタミンとメタンフェタミンの二種類があります。

アンフェタミンの化学名は、フェニルアミノプロパンで、メタンフェタミンの化学名は、
フェニルメチル・アミノプロパンです。
現在国内に出回っている覚醒剤のほとんどがメタンフェタミンです。

さて、覚醒剤にはどのような薬理作用や効用があるのでしょう。
覚醒剤を使用すると、中枢神経が興奮し、疲労感の除去、気分の高揚、陽気、
多弁、多幸感等の効果が現われます。

また、瞳孔の散大、頻脈、血圧上昇などの交感神経系の症状を併発します。
セックスの際に使用すると、男性は持続力がアップし、
女性は全身的に性感帯になるとも言われています。

覚醒剤の使用料は、1回当たり0.02~0.03グラムと言われており、
作用時間は約2時間、長くても3~4時間ですが、
恐ろしいのは、覚醒剤を一度使用すると、快楽、陶酔感を再び味わいたいと言う強い欲求と、
さらに、薬物の消失後に生ずる疲労、倦怠感から逃避するため、
どうしても乱用を反復継続したいという、強い「精神的依存」が起きることです。

こうして覚醒剤を継続的に使用すると、数ヶ月で中毒症状をあらわすようになり、
幻覚、幻聴、妄想があらわれ始めます。
さらには歯がボロボロとなり、肝臓障害(肝硬変、肝臓癌)を起こすこともあります。

また、覚醒剤中毒となった者が、長い年月の断薬後に乱用を再開した場合、
容易に精神障害を発現するとも言われています。
これを、「フラッシュバック現象」と言います。

この現象は極めて短期間、時には1回の使用や、覚醒剤を使用することなく
別の刺激(過度の疲労、強度の精神不安、深酒等)でも再現することもあります。

このように覚醒剤は、人間性をも破壊してしまう大変恐ろしい薬物です。

現在、日本では、世の享楽的な風潮の中で、こうした覚醒剤の他、コカイン、ヘロイン、あへん、乾燥大麻(マリファナ)、大麻樹脂、向精神薬等の各種薬物も乱用されており、極めて危険な状況にあります。

覚醒剤の乱用を制圧するには、何よりもまず暴力団の壊滅を図り、
不正取引の根を断って行く必要があります。
併せて、その危険性を若者に教育、PRしていくことも必要でしょう。

さらには、どんなことがあっても薬物を使用しないという、 ひとりひとりの意志が大変重要だと言えるでしょう。

投稿者 aids : 15:11

尿の覚醒剤検査が陽性!(前編)

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先月、28歳のベテラン性風俗嬢が私のクリニックに覚醒剤の尿検査にやってきました。
優良な風俗店では、従業員の健康検査を定期的に実施しており、
性感染症はもちろん、覚醒剤の尿検査も指定検査に入っています。

彼女は3年間以上も私のクリニックで真面目に検査を受けている、優秀な性風俗嬢。
今回も問題なしかと思いきや、なんと結果は「陽性」と出ました。

驚いて詳しく話を聞いてみると、どうも接客中の出来事が関係しているとわかりました。
今回の検査を受ける3日前、なじみの客に「覚醒剤の薬を肛門に入れてもいいか」と聞かれ、
ついつい好奇心にかられ、肛門に挿入を許してしまったとのこと。
入れたことにより、その後のプレイ中の状態がどうであったかは不明ですが、
とにかくこの行為が影響して、尿検査で覚醒剤の陽性反応がでたということのようです。

彼女の場合はメタンフェタミンが陽性で、アンフェタミンは陰性でした。
この検査結果および、ことの経緯が店側にどのように受け止められたかはわかりませんが、
結局、彼女はその後、この風俗店をやめることになったそうです。

ここのところ、押尾学、酒井法子など芸能人が麻薬に手を染めるニュースが頻繁に報道され、
日本国内での麻薬の広がりが心配されています。
性風俗嬢に覚醒剤使用者が多いわけではないですが、
暴力団組織などとのつながりにより、覚醒醒の使用者もまれにみられます。

覚醒剤の使用により性風俗嬢が犯罪に巻き込まれる危険性が高いことは注意しなければなりません。
性風俗店の経営姿勢にもよりますが、暴力団との関係を避けるため、
高級店では定期的あるいは抜き打ち的に覚醒剤検査を行っている店もみられます。
検査項目覚醒剤(アンフェタミン、メタンフェタミン)、覚醒剤原料(エフェドリン、メチルエフェドリン、ノルエフェドリン)です。もしアンフェタミン、メタンフェタミンが検出されれば覚醒剤取締法違反となります。

ほかには、大麻、マリファナ、幻覚剤、コカインなどの検査も可能ですが、検査料金は高額となります。
覚醒剤検査によって、覚醒剤使用者の排除と暴力団などとのつながりを絶ち、
さらには一般の客に迷惑を掛けないよう、店側の徹底した対応を望みたいところです。

次回は覚醒剤のもたらす恐怖について、より具体的にご紹介します。

投稿者 aids : 14:55

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