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尿の覚醒剤検査が陽性!(後編)

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前回、肛門に覚醒剤を入れてしまったがために、尿検査で陽性になってしまい、
店を辞めてしまった風俗嬢のお話をしました。
今回は覚醒剤が人の体にもたらす影響について具体的にお話ししましょう。

覚醒剤は一般的に「シャブ」、「ブツ」などど呼ばれていますが、
若者の間では「S」、「スピード」などともいわれています。
覚醒剤は、現在最も乱用されている薬物ですが、もともと覚醒剤には、
アンフェタミンとメタンフェタミンの二種類があります。

アンフェタミンの化学名は、フェニルアミノプロパンで、メタンフェタミンの化学名は、
フェニルメチル・アミノプロパンです。
現在国内に出回っている覚醒剤のほとんどがメタンフェタミンです。

さて、覚醒剤にはどのような薬理作用や効用があるのでしょう。
覚醒剤を使用すると、中枢神経が興奮し、疲労感の除去、気分の高揚、陽気、
多弁、多幸感等の効果が現われます。

また、瞳孔の散大、頻脈、血圧上昇などの交感神経系の症状を併発します。
セックスの際に使用すると、男性は持続力がアップし、
女性は全身的に性感帯になるとも言われています。

覚醒剤の使用料は、1回当たり0.02~0.03グラムと言われており、
作用時間は約2時間、長くても3~4時間ですが、
恐ろしいのは、覚醒剤を一度使用すると、快楽、陶酔感を再び味わいたいと言う強い欲求と、
さらに、薬物の消失後に生ずる疲労、倦怠感から逃避するため、
どうしても乱用を反復継続したいという、強い「精神的依存」が起きることです。

こうして覚醒剤を継続的に使用すると、数ヶ月で中毒症状をあらわすようになり、
幻覚、幻聴、妄想があらわれ始めます。
さらには歯がボロボロとなり、肝臓障害(肝硬変、肝臓癌)を起こすこともあります。

また、覚醒剤中毒となった者が、長い年月の断薬後に乱用を再開した場合、
容易に精神障害を発現するとも言われています。
これを、「フラッシュバック現象」と言います。

この現象は極めて短期間、時には1回の使用や、覚醒剤を使用することなく
別の刺激(過度の疲労、強度の精神不安、深酒等)でも再現することもあります。

このように覚醒剤は、人間性をも破壊してしまう大変恐ろしい薬物です。

現在、日本では、世の享楽的な風潮の中で、こうした覚醒剤の他、コカイン、ヘロイン、あへん、乾燥大麻(マリファナ)、大麻樹脂、向精神薬等の各種薬物も乱用されており、極めて危険な状況にあります。

覚醒剤の乱用を制圧するには、何よりもまず暴力団の壊滅を図り、
不正取引の根を断って行く必要があります。
併せて、その危険性を若者に教育、PRしていくことも必要でしょう。

さらには、どんなことがあっても薬物を使用しないという、 ひとりひとりの意志が大変重要だと言えるでしょう。


2009年09月04日

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