泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2009年04月27日

精液で浮気がわかる!?

先日、20代後半の既婚女性が、
「夫の精液に関して聞きたいことがある」と来院してまいりました。
相談内容は以下のようなものでした。


私の夫は、精液がドロドロの時とサラサラの時があります。
夫は、『体調によって精液の状態が変わるだよ』って言ってますが、
そんな事ってあるのでしょうか?


試しに、同じ日数をあけて、セックスをしてみました。
最初、一度セックスをしたあと、1週間あけてした時はさらさらでした。
次も前回から1週間あけてセックスをしたのですが今度はどろどろでした。


彼女は、夫がどこかで浮気をして、
週の間に射精をしていれば、精液が薄くなってさらさらになる。
浮気をせず、1週間精液がたまっているとどろどろになるのではと思い、
さらさらな時の夫の浮気の心配をしていたのです。


「先生、精液の状態で浮気の判断は出来ますか?」
これが彼女が最も聞きたかった質問のようでした。


この質問に答えるには、
まず精液が何から出来ているのかをご説明しなければいけません。
女性にとっては精液について学ぶ機会はそうそうないでしょうから、
この機会に少し詳しくお話しましょう。


先ず精液とは、
前立腺で作られた前立腺液と精嚢で作られた精嚢分泌液からなる、
乳白色半透明なゼリー状の液体です。
そこに精巣で作られた精子とガマン汁で有名な
カウパー腺液(尿道球腺液)が少量入っています。


前立腺液はサラサラしていますが、
精嚢分泌液は粘稠性があり、ゼリー状でドロロしています。
そして精液成分の約30%が前立腺液で、約70%が精嚢分泌液です。


精液が射精現象によって尿道から放出される場合、
最初に主にサラサラした前立腺液が出てきて、
その後にドロドロしたゼリー状の精嚢分泌液が出てきます。
精液は通常、射精した直後は濁った白色ないし黄白色の
粘り気のあるドロドロした液体ですが、
約10分程経過すると、ほぼ透明のサラサラした液体に変わります。


精液がドロドロしていたりサラサラしていたりと、性状が異なるのは、
射精してからの経過時間と温度に関係すると言われています。
精子の濃度とは関係ありません。


また、1回の射精で射出される精液の量は、個人差が大変大きく、
また同じ人間でも前回の射精からの経過時間や体調、
ホルモン状態などによって左右されます。
前立腺液が多く出ればサラサラしているでしょうし、
精嚢分泌液が多く出ればドロドロしています。
従って精液の性状で浮気しているかどうかは分らないといえるでしょう。


男性にも生理的変化が沢山あります。
ご相談者には
「旦那さんはあなたを愛していらっしゃるのだから、
余計な心配をしないで、ぜひ旦那さんを信じてあげてください。」
と申し上げました。


みなさんも、くれぐれも精液の性状だけで旦那さんを疑うようなことがありませんように・・・。
豊かなセックスライフをお祈りいたします。

20090427.jpg

投稿者 aids : 15:31

2009年04月20日

なぜ?あなたが淋病で、私がクラミジアなの?

先日、22歳の独身会社員の女性が来院してきました。
来院の理由は、「遠距離恋愛中の彼が淋病になったから私も検査してください」とのこと。

 

彼女の話をまとめるとこんな風でした。
彼が1年前に福岡に転勤になってしまって以来、月2回くらいの頻度で会っている。
もちろん会うたびにセックスはしている。
その彼から昨晩「淋病になっちゃった」とメールが届いた。
彼女は激怒し、すぐに彼に電話をして問い詰めたところ、
彼は「もう半年くらい前から福岡の性風俗の店に通っており、そこでうつったかもしれない。
実は先週も会社の同僚と風俗店へ行っていた」と告白。
昨日はペニスから膿が出て、我慢できずに病院に行ったら淋病と診断された。
と、実際の病状も白状したそうです。
彼は福岡のクリニックの医師から
「彼女も検査しなくてはいけませんから、診察を受けるように連絡してください」と言われて、
彼女に連絡してきたのです。



彼女は、彼以外の男性との性交渉はありませんが、
2週間前に会った時には彼とセックスをしていたそうです。
彼女自身は性器のかゆみや違和感、痛みなどの性感染症に認められるような自覚症状は、
まったく感じていませんでした。


 
まず彼女の内診を行ったところ、肉眼的に異常は認められませんでした。
次に腟ぬぐい液検査を行いました。
1週間後、検査結果が戻ってみると、淋菌は陰性でしたが、なんとクラミジアが陽性でした。
早速彼に連絡をとってもらい、彼の検査結果をよくよく聞いてみると、
彼も、クラミジアも陽性だったことがわかりました。
彼の方も、初回の検査では膿の検査で淋病であることがわかりましたが、
同時にクラミジアの検査も行っていたそうです。
結果的に彼は淋菌とクラミジア、彼女はクラミジアに感染していたのです。



男性の淋病は、淋菌の感染後2~7日の潜伏期を経て発症します。
ですから、おそらく彼の淋病は、発症の前週に同僚と行った風俗店で感染したのでしょう。
感染後、彼女とはセックスしていなかったため、淋病は彼女に感染しなかったものと考えられます。



クラミジアは男性、女性とも潜伏期が1~3週間程度あり、
自覚症状も乏しいため感染時期の特定が困難です。
従って、彼が頻繁に風俗店に通っていた間に感染し、自覚症状がないまま
彼女にも感染させてしまったのだと考えられます。
彼女には抗生物質を投与し治療を行いました。



このカップルの場合、彼が彼女に正直に告白したため、彼女のクラミジアも治療することができました。
女性のクラミジア感染は男性よりも自覚症状がなく発見しにくいのですが、
放置すると卵管炎・卵管狭窄・子宮附属炎・骨盤腹膜炎などにつながり不妊症となることがあります。
パ-トナ-同士、お互いの健康のために異常があったら正直に教えあう関係であるべきでしょう。



それではごきげんよう。

投稿者 aids : 10:03

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