泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2012年08月27日

第19回ヘルペス感染症フォーラム(JHIF)

札幌で開催されたヘルペス感染症フォーラム(JHIF)に参加してまいりました。
JHIFは基礎、臨床を問わず、さまざまな分野で活躍されているヘルペス感染症の専門家の研究会です。ヘルペス感染症を中心とした情報交換の場でもあります。
今回は第19回です。
 
<第19回ヘルペス感染症フォーラム(JHIF)>
 
会場:京王プラザホテル札幌
会期:2012年8月24日~25日
共催:ヘルペス感染症研究会 グラクソ・スミスクライン(株)
 
私が注目したのは「単純ヘルペスの新しい診断法」です。
「PURE/LAMP法を用いた単純ヘルペスの診断」東京慈恵会医科大学皮膚科の先生からの講演です。以下はその要旨です。
 
<LAMP法とは>
LAMPとはLoop-Mediated Isothermal Amplificationの略であり、栄研化学が独自に開発した、迅速、簡易、精確な遺伝子増幅法です。
標的遺伝子の6つの領域に対して4種類のプライマーを設定し、鎖置換反応を利用して一定温度で反応させることを特徴とします。サンプルとなる遺伝子、プライマー、鎖置換型DNA合成酵素、基質等を混合し、一定温度(65℃付近)で保温することによって反応が進み、検出までの工程を1ステップで行うことができます。
増幅効率が高いことからDNAを15分~1時間で109~1010倍に増幅することができ、また、極めて高い特異性から増幅産物の有無で目的とする標的遺伝子配列の有無を判定することができます。
 
<PURE/LAMP法と従来のLAMP法、PCR法との比較>
今回の検討でPURE/LAMP法は他方法と比較して、同等以上の感度特異度を有する検査法であることが示された。
LAMP法とPCR法との乖離例に関しては、PCR法で型別のため融解曲線分析に用いているプローブ部位の塩基配列に関して検討したところ、乖離例全4例中3例でプローブ部位の点変異を確認した。
今回の検討と同様に、同プローブ部位の変異でLightcycler®がHSVの型別に支障を生じることはすでにいくつかの報告がある*。PURE/LAMP法のprimer設定部位は、そうしたHSV-2の既知の点変異により、検出および型別に影響を受けず、感度および型特異性が優れた検査法であることが示された。
 
<PURE/LAMP法と蛍光抗体直接法との比較>
皮膚科領域でHSVの型別が可能な検査法は、保険適応のある検査に限れば病変擦過部位からの蛍光抗体直接法に限られる。
今回の検討でも、従来から指摘されているとおり同検査法は、水疱内容からの擦過物以外からでは感度の低い検査法であることは確認された。
さらに、そうした皮疹からもLAMP法やPCR法といった核酸検出法は、優れた検出感度を有する検査方法であることが確認できた。
以上より、核酸検出法の中でも「抽出・精製ステップ」(前処理)、「増幅ステップ」、「検出ステップ」まで1時間以内に結果を得られ、且つ従来の核酸検出法と同等あるいはそれ以上の感度特異度を有するPURE/LAMP法は、臨床におけるHSVの迅速検査法としての普及と保険適応が望まれる検査方法であると考えた。
 
以上ご報告いたします。
 

投稿者 aids : 07:26

「性器ヘルペスの初感染」の皮膚・粘膜症状について

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 最近、ある泌尿器科医から質問がありました。
 
 【質問】
「性器ヘルペスの初感染」の際、皮膚・粘膜症状として、水疱、ビランが左右対称性にでるのは何故ですか?
 
 【回答】
このご質問に明快に回答することは難しいことです。
私なりの考えをいくつかお話しいたします。
 
  1. 「性器ヘルペスの初感染」は性感染症です。
    典型的な初感染では口腔内の唾液に存在するHSV-1が、性器の皮膚・粘膜の微細な傷から侵入します。
    口がパートナーの性器に来るわけですから、このオーラルセックスにより微細な傷が性器およびその周辺に沢山できます。
    HSV-1が含まれている粘液(唾液)が性器の左右に万遍なく濃厚に接触するわけですから、 水疱、ビランが左右対称性に発症しても何の不思議もありません。むしろ性器の偏った方にしか接触させないでオーラルセックスをすること自体、難しいことと思われます。
    ですから、水疱、ビランが左右対称性に発症することは当然と考えられます。
  2. また、初感染の際に性器周辺などでは、手や指などにより感染部位から両側(左右)への拡散もあるのかもしれません。
  3. さらに感染したウイルス量より水疱内で増殖したウイルス量の方が多いと思われるので、接触等により1日遅れで感染し感染部位が拡大することも考えられます。
  4. また、初感染時には免疫がありませんので、ウイルスは自由に広がることができます。
    そして免疫が立ち上がるまで、ウイルス増殖が続き、範囲も広く、病変は拡大すると考えられます。
 
以上、ご理解いただけましたでしょうか。

投稿者 aids : 07:10

2012年08月14日

急所攻撃は、なぜ痛いのか?(その4)

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ある格闘家からの、睾丸に対するご質問にお答えしています。
今週も引き続いて、ご紹介していきますね。

<質問3>
金玉を鍛えることはできますか?
<回答3>
おそらく鍛えることはできないでしょう。
睾丸は、男性の急所と呼ばれる部分で、鍛えることは、難しいですね。
ただ玉を丈夫にすることは出来ないと思いますが、挙睾筋は随意筋なので、蹴られる直前に玉を挙上させるトレーニングをすれば、ダメージを軽くすることは可能かもしれませんね!(笑)

<質問4>
哺乳類の雄はみんな急所を打つと痛いのでしょうか?
<回答4>
睾丸がある哺乳類であれば、おそらく痛いでしょう。睾丸がぶら下がっている動物は痛がるでしょうね!

近所の犬の金玉を蹴ってみたらいかがですか?
「キャン」といって飛び上がるかもしれませんよ。これは冗談ですよ。

<質問5>
急所攻撃を受けた時、睾丸が何故、体内に挙がるのか?
<回答5>
睾丸に球が直撃した場合、ジャンプしたり、腰をトントンしたりします。
睾丸に野球の球が当たると、睾丸が実際に上がるんです。睾丸が体内に潜り込もうとします。この現象は、危険を感じた時の睾丸の防御策の一つだとも考えられます。

たまには睾丸のお話しもいいものですね(笑)
参考になったでしょうか?

それでは、ごきげんよう。

投稿者 aids : 18:00

急所攻撃は、なぜ痛いのか?(その3)

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先週より、ある格闘家からの質問、
「なぜ、あんなに痛い睾丸が外に出ているのか?」にお答えしています。

睾丸はもともと腹部の内臓ですが、腹部内ではなく、外に出ているほうが都合がいい理由があることをお伝えしました。今週もその続きをお話していきますね。

<理由 その2> 
さらに感染症等の発熱で体温より影響を受けないためと放熱の意味合いで、腹腔外の陰嚢にあると考えられています。

<理由 その3>
睾丸が腹腔内にあると、悪性腫瘍の発生のリスクもあると考えられています。睾丸にとって腹腔内は温度が高く環境が良くないわけです。

<理由 その4>
精索も大事な役目を演じています。専門的になりますが、精索は、精管が筋・神経・血管とともに被膜で包まれた構造で、[精管+精管動脈+精巣動脈+蔓状静脈叢+陰部大腿神経陰部枝+内精筋膜+精巣挙筋+外精筋膜]によって構成されています。
この蔓状静脈叢は、精巣や精巣上体からの静脈によって形成された静脈叢で、精巣動脈を囲んでこれを冷却し、精巣における精子形成を高めるといわれています。

なお、蔓状静脈叢に静脈瘤を生じることがあります。
特に左側では、精巣静脈が腎静脈に注ぐことから、腎静脈の還流障害などで起こりやすいといわれています。この精索静脈瘤が精子形成に悪影響を与えることがあると言われています。

精子形成は、子孫繁栄のためにも、重要な機能であることは皆さんもご承知でしょう。
その機能を阻害しないために、睾丸が外に出ているのだと言えそうですね。

投稿者 aids : 17:51

急所攻撃は、なぜ痛いのか?(その2)

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先週に引き続き、ある格闘家からの鋭い質問にお答えしていきましょう。

<質問2>
では、そもそも、あんなに痛い物が、何故外に出ているのでしょう?
<回答2>
一言でいえば、睾丸が、腹部の中にあるままですと、体温の影響を受けてしまい、精子成熟機能が阻害されるからです。
また、睾丸が腹部ではなく、陰嚢に納まっている理由が、いろいろとあるのです。

<理由 その1>
睾丸の中では精子を作るため、激しく細胞分裂が起こり、他の臓器とは比べものにならないくらい、大量の熱が発生すると考えられています。ですから、その睾丸を冷却するためには、腹部ではなく陰嚢の中にあるほうが都合がいいんですね。

陰嚢は温度管理機能が充実していて、暑い時はだらっと伸びて熱を放散します。正に、自動車のエンジンに例えるとラジエーター効果ですね。また、寒い時はギュウと縮んで保温します。
つまり、精子を作る環境には、体温よりやや低い温度が必要なんです。

精子形成の適温は体温よりマイナス2が良いといわれています。この造精機能のために金玉がブラリとさがっているんですね。
言い換えると、睾丸の熱がうまく放散されないと、精子造成機能が低下するわけです。

睾丸が外に出ている理由はまだまだありますので、続きは、次週にご紹介しましょう。

投稿者 aids : 17:43

急所攻撃は、なぜ痛いのか?(その1)

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ある格闘家から鋭い質問がありましたので、皆さんにもご紹介したいと思います。

<質問1>
そもそも、急所攻撃は、何故あんなに痛いのですか?
急所を打った時の内臓に来るような痛みは何なのでしょう?
<回答1>
鋭い質問をありがとうございます。早速お答えしていきましょう。
睾丸というものは、そもそも「腹部から陰嚢に降りてきた内臓(器官)」です。
ですから、睾丸と腹部の内臓とは、ある管で繋がっています。
つまり、急所攻撃が悶絶するような痛みとして現れるのは、内臓痛そのものと考えてよろしいでしょう。

腕や足を蹴られた時の痛みは、皮膚の痛みです。それに対して睾丸は内臓なので、皮膚のように表面的な痛みではありません。
皮膚感覚と内臓感覚がどう違うかは、よく判らないかもしれませんが、内臓を蹴られた時の痛みを内臓痛と言います。特に、女性が痴漢の撃退方法で男性の急所を蹴り上げる、これは最高の内臓痛ですね。

また格闘技で急所を蹴られたり、野球のキャッチャーの急所に球が当たった場合、悶絶して、うずくまってしまいます。さらに圧縮された睾丸の激痛が元で、心臓発作になることさえあります。

少し専門的になりますが、睾丸の支配神経や動脈は、骨盤部ではなく腹部に起源があります。生後の精巣は陰嚢に納まりますが、もともとは腹部の臓器なのです。
このことは、腹大動脈の枝である精巣動脈が睾丸を通っていて、神経も胸髄の第1011神経に由来する交感神経が睾丸を支配することからも理解できます。
つまり、精巣は血管や神経を伴って陰嚢に「降りている」のですね。
これは「没落した貴族」に例えられることがあります。

精巣も腹部から「落ちたり」とは言えど、その起源は「高い所」にあるということなんです。

投稿者 aids : 17:09

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