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第19回ヘルペス感染症フォーラム(JHIF)

札幌で開催されたヘルペス感染症フォーラム(JHIF)に参加してまいりました。
JHIFは基礎、臨床を問わず、さまざまな分野で活躍されているヘルペス感染症の専門家の研究会です。ヘルペス感染症を中心とした情報交換の場でもあります。
今回は第19回です。
 
<第19回ヘルペス感染症フォーラム(JHIF)>
 
会場:京王プラザホテル札幌
会期:2012年8月24日~25日
共催:ヘルペス感染症研究会 グラクソ・スミスクライン(株)
 
私が注目したのは「単純ヘルペスの新しい診断法」です。
「PURE/LAMP法を用いた単純ヘルペスの診断」東京慈恵会医科大学皮膚科の先生からの講演です。以下はその要旨です。
 
<LAMP法とは>
LAMPとはLoop-Mediated Isothermal Amplificationの略であり、栄研化学が独自に開発した、迅速、簡易、精確な遺伝子増幅法です。
標的遺伝子の6つの領域に対して4種類のプライマーを設定し、鎖置換反応を利用して一定温度で反応させることを特徴とします。サンプルとなる遺伝子、プライマー、鎖置換型DNA合成酵素、基質等を混合し、一定温度(65℃付近)で保温することによって反応が進み、検出までの工程を1ステップで行うことができます。
増幅効率が高いことからDNAを15分~1時間で109~1010倍に増幅することができ、また、極めて高い特異性から増幅産物の有無で目的とする標的遺伝子配列の有無を判定することができます。
 
<PURE/LAMP法と従来のLAMP法、PCR法との比較>
今回の検討でPURE/LAMP法は他方法と比較して、同等以上の感度特異度を有する検査法であることが示された。
LAMP法とPCR法との乖離例に関しては、PCR法で型別のため融解曲線分析に用いているプローブ部位の塩基配列に関して検討したところ、乖離例全4例中3例でプローブ部位の点変異を確認した。
今回の検討と同様に、同プローブ部位の変異でLightcycler®がHSVの型別に支障を生じることはすでにいくつかの報告がある*。PURE/LAMP法のprimer設定部位は、そうしたHSV-2の既知の点変異により、検出および型別に影響を受けず、感度および型特異性が優れた検査法であることが示された。
 
<PURE/LAMP法と蛍光抗体直接法との比較>
皮膚科領域でHSVの型別が可能な検査法は、保険適応のある検査に限れば病変擦過部位からの蛍光抗体直接法に限られる。
今回の検討でも、従来から指摘されているとおり同検査法は、水疱内容からの擦過物以外からでは感度の低い検査法であることは確認された。
さらに、そうした皮疹からもLAMP法やPCR法といった核酸検出法は、優れた検出感度を有する検査方法であることが確認できた。
以上より、核酸検出法の中でも「抽出・精製ステップ」(前処理)、「増幅ステップ」、「検出ステップ」まで1時間以内に結果を得られ、且つ従来の核酸検出法と同等あるいはそれ以上の感度特異度を有するPURE/LAMP法は、臨床におけるHSVの迅速検査法としての普及と保険適応が望まれる検査方法であると考えた。
 
以上ご報告いたします。
 



2012年08月27日

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