泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

« 2010年12月 | メイン | 2011年02月 »

2011年01月16日

2011年1月12日の朝日新聞に当院が紹介されました

性感染症、のどからも感染の恐れ 厚労省研究班
2011年1月12日9時17分
http://www.asahi.com/science/update/0107/TKY201101070233.html

淋病(りんびょう)やクラミジアなどの性感染症は、性器だけでなく、のども温床になっていることが、厚生労働省研究班などの調査でわかった。自覚症状がないまま、オーラルセックス(口を使った性行為)で広がる危険がある。性感染症は不妊症にもつながりかねず、研究班はのどへの感染の広がりを本格的に調べ始めた。

研究班のメンバーで東京女子医大の余田敬子准教授らは、2005~09年、同大の東医療センター耳鼻咽喉(いんこう)科(東京都荒川区)と、川崎市の性感染症専門のクリニックで調査した。男性335人と女性519人の淋菌やクラミジアへの感染を調べた。患者は、風俗店の従業員や利用者が多かったという。

淋菌は、のどだけに見つかった女性は54人で、性器だけに感染していた20人より多かった。このほか20人が両方に感染していた。男性は、性器だけが75人、のどだけが19人、両方が33人だった。 クラミジアは、女性でのどが21人で、性器が103人、両方感染している人が32人いた。男性はのどが6人、性器が81人、両方が3人だった。

クラミジアと淋菌は性感染症で1、2番目に多い。女性は子宮頸(けい)管炎や尿道炎、男性は前立腺や精巣上体の炎症を起こすことがあり、不妊の原因や、HIV(エイズウイルス)などの病気にもかかりやすくなる。

のどに感染しても多くは痛みなどの自覚症状がなく、見た目では医師でも判断がつかないこともある。夫婦の10組に1組は不妊に悩んでいるとも言われ、研究班は性感染症をできるだけ早く見つける必要があると指摘する。

研究班は昨年11月から東医療センターや、千葉、静岡、岐阜県の耳鼻咽喉科3カ所に来た人に無料で検査を始めた。1月中に700人のデータを集める予定だ。余田さんは「性感染症の拡大を食い止めるために、のどの検査が必要なのか明らかにしたい」と話している。(杉本崇)

投稿者 aids : 11:21

2011年01月05日

尖圭コンジローマの予防ワクチンに関する質問あれこれ(2)

以前の「尖圭コンジローマの予防ワクチン」のコラムについて、
読者の方からいくつか質問が来ました。

前回は「既に尖圭コンジロームになって完治した状態でもHPVワクチン接種は

受けられますか?」という内容をご紹介しました。

くわしくはバックナンバーをご覧ください。

今回は別の項目についてご紹介しましょう。

いただいた二つ目の質問は、「既に尖圭コンジロームになった人でも、そのHPVワクチンは

今後の予防策として効果がありますか?」というものです。

HPVワクチンは現在、感染している尖圭コンジローマには効果はありません。

接種をしてもそれが尖圭コンジローマの治療になるわけではありません。

しかし、4価ワクチン、特に9価HPVワクチンはHPV型:6,11,16.18、31、

33、45、52、58(低リスク型、高リスク型)に約90%近く効果が期待されますから、

予防策として接種する意味合いはあると考えます。

これらのHPVウイルスに対して効果があるということは、言い換えると、子宮頸癌、

陰茎癌には約90%、尖圭コンジローマには90%以上をカバーできると考えられてよいでしょう。

今後は、HPVウイルスやワクチンに対する人々の認知が進むことに合わせ、

接種に対する公的補助の拡充も望まれるところです。

投稿者 aids : 12:58

尖圭コンジローマの予防ワクチンに関する質問あれこれ(1)

以前の「尖圭コンジローマの予防ワクチン」のコラムについて、
読者の方からいくつか質問が来ましたので、今回はそれについてご紹介しましょう。
私の現在の考えですが、参考にしてください。

いただいた質問の一つ目は「既に尖圭コンジロームになって完治した状態でもHPV
ワクチン接種は受けられますか?」というものでした。

実は尖圭コンジローマ(以後CA)の完治とはどういう状態かは、大変難しい問題です。

臨床的には通常CAが治療後3か月以上、再発しない場合「治癒」としていますが、

6か月以上経ってからでも再発する場合があります。

ですから私は、完治とは「1年以上、再発しない場合」と考えております。

また、尖圭コンジローマ(CA)の原因となるヒトパピローマウイルス(以後HPVという)

の多くは低リスク型の6型、11型ですが、CAに罹った患者さんは、同時に他の型

(高リスク型を含む)のHPVに感染している可能性が30~50%あります。

2011年に日本で承認・販売予定である4価ワクチン(Gardasilガーダシル)は、

HPVの低リスク型(6型、11型)と高リスク型(16型、18型)に関連する疾患に予防効果があります。

従って、CAが完治しているのであれば、4価ワクチン(Gardasilガーダシル)を

接種すれば約70~80%以上に効果があるのではないかと考えます。

また現在、アメリカで臨床試験が行われている、9価ワクチンが近い将来、

日本で使用されるようになれば、CAの90%以上に予防効果が期待できます。

しかし現在、日本では、2価ワクチンは女児(11~15歳)に公費負担による接種制度が

拡がってきていますが、4価ワクチンについてははっきりしていません。

ですから接種を希望する場合は自費となり、少し高額となるでしょう。

他の質問は次回にご紹介します。

投稿者 aids : 12:55

Entries

Archives