泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2011年07月31日

非特異的亀頭包皮炎

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 初夏の暑い日の午後、27歳の男性が受診してきました。
1週間前に結婚したばかりとのこと。
その3日後に オチンチンが腫れて、先から膿が出てきたというのです。

さっそく診察してみると、ペニスは仮性包茎であり
亀頭は包皮で被われている状態でした。
その包皮の先 (包皮輪)から黄色い膿がドロドロと出ています。

その状態を見た感じで、まず淋病を疑いました。
これは専門医でもそう思うでしょう。

しかし、包皮をめくって亀頭部を露出したところ、これが、 びっくり!
亀頭の粘膜と包皮の内板が真っ赤っかになっており、
黄色い分泌物にびっしり被われてまさにオチンチンはズルズルでした。
しかも尿道からは膿は排出されていません。

ここで淋病の可能性が一気にうすくなりました。

これが正に非特異的亀頭包皮炎です。
この原因微生物となるのは、 淋菌あるいはクラミジアではなく、
連鎖状球菌、ブドウ状球菌、 腸内細菌類、大腸菌などが引き起こす症状なのです。

本人は淋病だと思って受診してきています。

「淋病ではありませんよ!」「マジスカ?」
「亀頭包皮炎といって亀頭と包皮の粘膜の感染症です。
原因は雑菌です。セックスが誘因ですね」


確かにこのケースでは専門医が診察しないと、
淋病ではないのに淋病にされる可能性があります。
つまり診察時に包皮をめくれば、淋病でないことがある程度、想定できるのです。

医師がこの診察行為を行わないと、
臨床的にとりあえず淋病として治療されてしまう懸念があります。

確認のため尿検査で淋菌、クラミジアの遺伝子検査を行いましたが、
淋菌、クラミジアともに検出されませんでした。

この男性は1週間後に来院されたのですが、すっかりオチンチンは 良くなっていました。
めでたし!めでたし!

それではまた来週をお楽しみに!

投稿者 aids : 07:25

2011年07月17日

新婚旅行で淋菌感染症に!?

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つい最近、34歳の女性(Tさん)から性感染症について相談がありました。
その相談内容は以下の通りです。

『新婚旅行に海外に10日程行って来ました。
旅行3日目に彼から、「パンツに変なものがついてる」と言われその下着を見たら、
女性の帯下(おりもの)のような分泌物が付いていました。
何時からか聞いたら、1日前からで、排尿の時も少し痛むとの事でした。
添乗員に言った方がいいんじゃないか?と言ったのですが、
自分のおちんちんから変な液体が出てると言うのが恥ずかしいから、
日本帰ってから、治ってなければ病院に行くとのこと。
しかし、彼は今回の長期連休をとった為に休みが取りづらく、
まだ病院に行っていません。
現在、帰国して3日ですが、排尿時の痛みは無くなったようですが、
まだ黄色いような茶色いような液体は出ているようです。
これは性感染症でしょうか?彼のことが心配です。』

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大変心配なケースですね。

ここから先は、私のほうからTさんにした回答のポイントをお伝えしていきたいと思います。

ご相談内容から考えると、彼には現在、尿道炎が生じていると考えられます。

現在、尿道口から出ている黄色~茶色い分泌物は、おそらく血膿でしょう。

この尿道炎の原因菌は相談内容の状況から、淋菌が最も考えられます。

ということは淋菌性尿道炎になっている可能性があるということなんですね。

もちろんクラミジアなども否定できません。

それでは、いつどこから感染したか?の答えとして考えられるのは、

旅行の2日目から症状があったということですから、

パートナーであるTさんが 原因なのかも しれませんし、

もしくは、旦那さまが新婚旅行前に他の女性と性交渉を持っていたという可能性があります。

Tさんご夫婦は新婚さんですから、おそらくそのようなことはないと思いたいのですが…。

とにかく、旦那さまのほうは、一刻も早く泌尿器科を受診することが必要です。

仕事をしている場合ではなく、彼のペニスの一大事ですし、症状が悪化しては大変です。

もし淋菌感染症であれば将来、急性精巣上体炎が生じ、

男性不妊症になる危険性があります。

そして、もしも旦那さまが本当に淋菌感染症であることがわかったら、

Tさんご自身も、早急に婦人科を受診され、性感染症の検査を受けなければなりません。

Tさんが将来、不妊症で悩まないためにも、早急に行動を起こす必要がありますね。

ご夫婦そろって健康になられることを心より願うばかりです。

投稿者 aids : 20:24

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