泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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2008年12月24日

性器ヘルペスは感染しても症状が出ない!?

先日、35歳の男性会社員が
「ペニスに小さな水疱ができ、痛みと痒みがあります。」と言って来院してきました。
早速診てみますと、確かにペニスの冠状溝付近直径1~2mm大の小さな水疱が3つできています。


詳しく聞いてみると、2年から1年間に10回以上も性器ヘルペスが再発し、
日常生活に支障をきたしているとのこと。
そこで「初めて感染したのは何年前ですか?」と聞くと
「いや、いきなりの再発みたいです」との返事が返って来ました。


感染したときは症状がなく、「いきなり再発」とはどういうことなのか・・・?
今回はこのことについて少し勉強しましょう。


確かに性器ヘルペスは、初めて感染した人の約70%に症状が出ないといわれています。
そしてその後もはっきりとした皮膚症状が出ないため、自分がウイルスを泄していることを知らずに他人に感染させている例が多くみられます。
症状がないままウイルスを排泄する時期は、初めて感染してから3か月以内に
最も高率に起こることが分かっており、経過とともに減少していきます。


再発を1年間で10回以上繰り返す人と再発のない人を比べると、
明らかに再発多い人はウイルスの排泄が多く、時期は再発前後の1週間に
集中していると言われています。


HSV(単純ヘルペスウイルス)に感染した場合、
ヘルペスが口にできれば口唇ヘルペス、性器にできれば性器ヘルペスと呼ばれます。
また、HSVには1型と2型2種類があり、口唇ヘルペスは1型、性器ヘルペスは2型が
多いといわれています。


1型が初めて性器に感染すると、激しい症状(水疱、痛み、発熱、足の付け根のンパ腺の
腫れ、膀胱炎様症状、歩行障害など)がでますが、再発はそれほど多はありません。
2型はそれに比べて症状はおとなしくなりますが、頻回に再発繰り返すと言われています。


また、HSV-2・1抗体がともに陽性の人において、性器ヘルペスの症状が出にくことが指摘されています。これが冒頭にあげた、「症状が出ないのでヘルペ・ウイルスの排泄に気づかず、他人を感染させている」という事例の原因と考えられます。


日本では性風俗嬢でのHSV-2抗体の保有率が高く、1・2型を持つ人も多いため
注意が必要です。
またHSV-2感染者のわずか10~25%の人しか感染に気づいていないという報告もあります。ですから私たちは知らないで感染し、知らないで他にうつしているかもしれません。


今後、医療者は性器ヘルペス感染症の正しい診断、治療、予防を認識し、
そして患者さんへの正しい知識の啓蒙・教育を心がけていく必要があるでしょう。

投稿者 aids : 10:00

2008年12月16日

STI自己検診の効果と限界

性感染症は他の病気と比べても、きわめてプライバシーの高い病気です。

「できたら婦人科の検診台には乗りたくない。」
「診察を受けることに抵抗がある。」
そんな女性の声をよく耳にします。

先日相談を受けたある女性も
「彼が時々、性風俗に行くので性感染症が心配なんです。
 最近、帯下(おりもの)が増えてきたし、クラミジアではないかと思って・・・。
 でも病院にいくのには、どうも抵抗があります。」と仰っていました。


実は「自己検診」という手段もあります。
最近では、クラミジア・淋菌の検査キットにおいて、
遺伝子レベルの検査ができるようになりました。
精度・検出率が極めて高く、医療機関で行う検査とほぼ同等の精度があります。
ですから、検体採取さえうまくできれば、検査キットによる自己採取の郵送検診でも
ほぼ正確な検査結果がでます。


しかし、外陰部の診察だけは自己検診ではできません。
これには専門的な知識・技術が必要となります。
性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、性器伝染性軟族腫(ミズイボ)、軟性下疳、
ケジラミ、疥癬(ヒゼンダニ)などは専門医でなければ診断できません。

自己検診はそのメリットとデメリット、
つまり、「自己検診で何がわかり、何がわからないのか」を
はっきり知った上で行うならば良いと思います。
ただ、もし検査の結果、陽性成績や問題点が出た場合は、
早急に婦人科を受診することが大事です。


一番肝心なことは「放置しないこと」です。
性感染症を放置したことによって、子宮外妊娠、卵管狭窄、骨盤腹膜炎を起こしたり、
不妊症など、のちのち悪影響を及ぼしてしまうことは多々あります。

ご自身の体のためなのですから、勇気を持って婦人科の扉を叩きましょう。

貴女の性の健康をお祈りいたします。

投稿者 aids : 11:23

2008年12月15日

誰にも相談できない不正出血と臭いに悩んでいます。

先日、ある女子高校生からの相談を受けました。
若い女性に共通する悩みの部分もいろいろありそうでしたので、
今回はそれをご紹介しましょう。
相談者から伺った話は以下のようなものでした。


【相談内容】
私は、今までに2人経験している高校生です。
中学校の頃からおりものの臭いが少し気になっていたのですが、
最近また臭いが少しきつくなったかなと思います。
色は透明やほんのりクリーム色のときもあります。
彼氏は気にしていないようなのですが、しゃがんだりすると臭ってくるので
まわりの人にも同じ臭いがしているのかとおもうと、
こわくて近づいたりできないんです。
そして、一番の悩みがセックスをしたら出血するんです。
生理のときのような血のかたまりのようなものも出ます。
セックスで奥まで入れなければ、出血もしないのです。
親にも「生理でもないのに血が出る」と言ったのですが、
様子を見てみなさいと言われ、どうすればいいのかわかりません。
気にしすぎているのかもしれませんが、お腹の下のあたりが
ほんの少し痛い時もあります。
安静にしていれば、治るのでしょうか。
そして、性器の臭いはどうすればいいのでしょうか。
性病なのでしょうか。


【回答】
いかがでしょう?「私も同じ悩みがあります」という方もいらっしゃるのでは?

「臭い」に関しては、最近さまざまな年代の女性からよく相談を受けます。
清潔志向が進む中、自分の臭いについて過敏になっている方も増えているようです。
この女性の場合、セックスの経験があるのですから、おりものの臭いの原因として、
先ず性感染症を疑わなければなりません。
婦人科を受診し淋病・クラミジア・トリコモナスなどの可能性を
まずは確認する必要があります。
これらの疑いが晴れた場合、生活習慣の中で
臭いが生じている可能性を確認する必要があります。
「入浴時、清潔にしようと思って腟内を良く洗っている」
「セックスの前後に腟内を洗っている」
このようなことは、かえって臭いの原因となりえます。
健康な女性の腟の中には乳酸桿菌が沢山いて、
腟の中をきれいにお掃除してくれています。
ですから、健康であれば膣内は洗う必要はありません。
逆に、洗ってしまうと乳酸桿菌(共生菌)がいなくなり、
色々な雑菌・細菌が増殖し悪臭がでてくることもあります。
この状態を細菌性腟症といいますが、もしこれであるならば、
婦人科を受診する必要があります。

 

最後の可能性は汗腺が原因となる場合です。
女性にみられることが多いといわれる、すそワキガ(すそ腋臭・外陰部臭症)といい、
脇の下と同じく、陰部付近の汗腺でアポクリン腺から臭いが発生する例です。


また、不正出血・性交後出血については性感染症、子宮頸癌などを
考えなければなりませんし、軽度の下腹部痛については、
若い女性ならクラミジア性卵管炎がまず考えられます。
若い女性に最も多いクラミジア感染症は、放置しておくと
不妊症になる可能性もあります。

この女性のように女性器にまつわる悩みは誰にも相談できず、
また、思い切って母親などに相談しても「様子を見たら」という感じで、
なかなか婦人科の受診にまで至らないケースが多々あります。
少しでも症状がある場合は、ぜひ積極的に婦人科を受診され、
心の平和を得ることをお薦めします。

投稿者 aids : 15:24

「ガードネレラ腟炎」って何ですか?

先日、ある妊婦の方からご相談を受けました。
現在妊娠8ヶ月になるという彼女は妊婦検診の際の検査で『ガードネレラ腟炎』だと言われ、
現在治療中だということでした。
しかし、女性器のかゆみが止まらず、「この『ガードネレラ腟炎』というのは、
一体どんな症状が出るものなのか?」というお尋ねでした。


たしかに、これをお読みになっている皆さんのなかにも「ガードネレラ腟炎」
とう言葉は初耳だ、という方もいらっしゃるかもしれません。
これは細菌性腟症の一つの言い方なのですが、現在はこの呼称はあまり用いられていないからです。
「細菌性腟症」というのはは常在菌(健康な腟の中にいるバイキン)のバランスが
崩れて起こる病気で、これというはっきりとした原因微生物はありません。


細菌性腟症は、一昔前までは非特異性腟炎、ガードネレラ腟炎、ヘモフィルス腟炎、
嫌気性腟症などとして知られていましたが、現在では腟内の細菌叢から好気性菌ガードネレラ菌、あるいは嫌気性菌グループの細菌などが,異常に繁殖し、数の細菌感染として起こる状態とだ考えられています。
しかし病気の原因は未だ完全には解明されてはいません。
いい機会ですので、ここで、細菌性腟症についてちょっとお話しましょう。


細菌性腟症とは、腟内の乳酸桿菌の菌量の減少に伴い、いろいろな好気性菌や嫌気性菌が、
正常腟内で異常に繁殖している状態です。別の言い方をすれば、腟内の中でカンジダ、トリコモナス、淋菌などの特定の微生物がいないのに起こる炎症を、非特異性腟炎、または細菌性腟症といいます。


細菌性腟症の約半数は症状が無く、自覚症状も帯下(オリモノ)の訴えは軽いものです。
実際に診察してみると、腟分泌物の多くは灰色で、漿液性(ミズっぽい)です。
ときに悪臭を訴える場合もあります。
腟分泌物の量も多くなく、腟壁にも明らかな炎症所見はみられません。
一般的に細菌性腟症では痒くなりませんから、この相談者の訴えているかゆみの原因は
他にあると思われます。


健康な女性の腟にはさまざまな常在菌が存在しますが、その75~95%を占めるのが乳酸桿菌属です。腟には非常に強い自浄作用があり、それは、いわゆる善玉菌ある乳酸桿菌属の働きによるところが非常に大きいのです。
乳酸桿菌属はグリコーゲンを分解して乳酸を産生し、腟内をpH4.5以下の酸性に保つことで
雑菌の入を防いでいます。
ところが何らかの原因で腟内の細菌叢のバランスが崩れるとにより、細菌性腟症が起こるのです。


今回のご相談者は妊娠後期の方でした。この時期に細菌性腟症を起こしますと、
早産、新生児の肺炎・髄膜炎・菌血症などの感染症の原因となることがあります。
ですから、妊娠中の細菌性腟症は、特に積極的に治療されることをおすすめしています。


細菌性腟症の治療には、局所療法と内服療法とがあります。治療の基本は、
局所法であり、クロラムフェニコール腟錠100mgまたはメトロニダゾール腟錠250mgを
1日1回、腟の中に挿入するだけです。内服療法の場合は、メトロニダゾール1回500mgを
1日2回、7日間服用する方法です。
妊娠中には、ペニシリン薬アンピシリンまたはアモキシシリン500mg1日4回、
7間服用する方法もあります。


最後に性的パートナーについても触れておきますと、細菌性腟症は、性的パートナーの
多い女性がかかりやすいと言われています。
しかし、性感染症とは決めつられない側面があり、現在は、性感染症というよりセックス関連疾患と考えらていることも申し添えておきます。

投稿者 aids : 15:03

愛のないセックスは危険です!

『若者への愛のメッセージ!』


今日はちょっと趣向を変えて、若い方々に向けた
私からのメッセージを書きたいと思います。
講演会などの際には時々申し上げたりしている内容なのですが、
やはり若い方に直接届けるには、 こちらに書くことが一番かな、と思った次第です。
申し上げていることは難しくありません。
とてもシンプルで、でもとても大切なことです。
ぜひ愛する人と一緒にお読み下さい。



若者よ!セックスをしよう!
若者がセックスをしないでどうするの!
年をとったら、しようと思ってもできなくなります!
心身ともにセックスに関心が薄れていきます。加齢的現象です。
是非若いうちに大いにセックスをして、人生を楽しんでください。
身体も元気になるし、心も豊かになります。
仕事にもメリハリがでてきます。
生活の質が向上します。


しかし素晴らしいセックスをするには大切な条件があります。
身心共に健康なセックスをしてください。
それには愛が必要です。
貴方はパートナーを愛していますか?
ひょっとしたらセックスだけを愛しているのではありませんか?
セックスだけを愛してはいけません。
そんなセックスは愛が死んでいます!
セックスには愛が必要なのです。
愛があれば大丈夫!
愛が生きていれば大丈夫!
愛のないセックスは危険です!
愛が死んでしまうとそれは愛死です。


性の健康をお祈りいたします。

投稿者 aids : 14:55

2008年12月04日

膣の中の「ボコっ」としたものは何?

先日、診療所を訪れてきたのは、うら若い女性でした。
「どうしましたか?」という私の問いに「先生・・・」、とややためらったあと、
「膣の中にボコっとしたもがあるんです。」と切り出しました。


「ひとりHをする時に膣の中でボコっとするものやコリっとするものが指に触れるんですが、
何でしょうか?何かの病気しょうか?」と大変心配そうな様子です。
女性器の事については女性自身も、しく教わったり、学んだりすることが少ないですから、
あらためて自分の体について疑問な点がでてきたようです。
そこで順を追って、次のような説明を致しました。
みなさんにもきっと参考になると思います。


腟の中に指を入れると正面に『ボコっ』と触れる物は、そらく『子宮の入り』だと考えられます。
直径約3センチ大で、ほぼ円形に触れます。もちろん個人差はあります。
手前に触れる場合と奥の方に触れる場合とさまざまです。
また、膣に自分の指を入れて人差し指の先に触れるものは、
腟の壁に沿って存在する尿そのものです。
直径約1センチ大で、すじ状(管状)に触れます。
コリコリしているかも知れませんが、感じ方は人それぞれでしょう。


また腟の壁に、やや大きめのボコッとした塊が触れる場合があるかもしれません。
特に便秘がちな方は触れる可能性が高いです。
こう申し上げると、何なのか想像がつく方もいらっしゃるかもしれませんね。
そう、それは大便そのものです。
さらに腟の壁近くにコリコリした物が触れるとすると、
それは腟壁のヒダとかリンパ管の腫れなどが考えられます。


これだけあると、自分で判断するのは難しいかもしれませんね。
病気でない場合でも、原因はこれだけ考えられますが、
もちろん病気の可能性も完全にないとはいえません。
ご心配でしたら、一度産婦人科を受診されることをお薦めします。
と申し上げると、その女性は安心して帰られました。


女性自身が、自分の体について、もっと知る機会が増えるといいですね。
では、ごきげんよう。

投稿者 aids : 11:03

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