川崎市の性感染症専門クリニック 宮本町中央診療所院長による性感染症についての正しい知識や相談にお答えするブログ:川崎市の宮本町中央診療所の尾上院長がクリニックに寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。
2010年03月03日

19歳のHIV感染患者(その3)

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前回、当クリニックに来院してきた19歳の同性愛者の男性の、HIV抗体迅速検査が「陽性」だっというお話をしました。HIV確認検査の結果を待ちながら、まずは早期顕症梅毒感染の治療を始めたところ、彼の様子に変化が表れたことまでお話ししました。詳しくは前回(その2)をご覧ください。

この男性に駆梅療法をおこなったところ、その翌日より感冒様症状が発現し、発熱(38℃)、全身倦怠感さらにその3日後には全身的に紅斑が生じてきたのです。
これはいわゆる駆梅療法によるJarisch-Herxheimer(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー)現象か、あるいは薬疹が考えられました。

ここでJarisch-Herxheimer現象について少し説明しておきましょう。
少し難しいですが、早期梅毒(第1期)の治療をするにあたっては大切なことです。
これは簡単に言うと梅毒の治療開始後、数時間で起こる生体反応です。
薬の投与開始直後からTP(梅毒の菌体)が急激に破壊されるため大量の抗原が放出され、アレルギー反応が生じる可能性があります。
突然の発熱(39度前後)、全身倦怠感、悪寒、頭痛、筋肉痛などが生じます。
皮膚症状の増悪もあり得ます。

治療の現場では、あらかじめ患者さんに、これが薬の副作用でないことを説明しておく必要があります。
説明を怠ったままでこの現象がでた場合、患者は激しく驚きます。
せっかく治療を始めたのに病気が益々悪化したと考え、医師との信頼関係を損ねる可能性もありますので注意が必要です。
多くの場合、この現象は一過性に生じ、何も恐くないことを充分に強調しておくと良いと思います。また予め鎮痛解熱剤の投与をしておくと患者も安心するでしょう。

話を元に戻しますと、この19歳の男性の場合も、駆梅療法開始後、間もなく感冒様症状が発現し発熱(38℃)、全身倦怠感さらにその3日後には全身的に紅斑が生じてきました。
この全てがJarisch-Herxheimer現象と考えられます。
私見ではHIV感染がベースにあるためこの現象が激しく、増幅されその期間も延長したものと考えます。結局、その3日後には紅斑は退色しました。

そして来院してから7日後、HIV検査の確認検査(Western Blotウエスタンブロット法)および抗原検査のPCR法(核酸増幅法)の結果がでてきました。結果は、私が恐れていた通り“陽性”でした。

「検査結果をお知らせいたします」と予め知らせてあったその日、彼は神妙な顔つきで来院してきました。
その表情は、明らかに最悪の事態を覚悟している様子でした。
私も覚悟を決め、静かに事実を伝えました。“HIV感染”の告知です。
彼は表面上、冷静を装っていましたが、その心中はいかばかりであったのか・・・。

そしてその日、ペニスと肛門も確認したところ、ペニスの硬性下疳は潰瘍が小さく浅くなり、肛門の尖圭コンジローマもボリュウム的には約50%減少していました。
梅毒と尖圭コンジローマの経過は良い方向に行っていますが、“HIV感染”については専門医療機関(某大学病院)に委ねなければならなりません。
彼の健康と幸せを心の中で祈りながら紹介状を作成しました。
19歳というあまりにも若い男性のHIV感染。

HIV感染は「ひとごと」ではありません。
ぜひ「身近にあること」という意識を多くの方に持っていただきたいと思います。

Posted by aids : 16:26

19歳のHIV感染患者(その2)

前回、当クリニックに来院してきた19歳の音大生の男性についてご紹介しました。
ペニスに潰瘍あるこの男性、同性愛者であるということで、HIV抗体迅速検査を行ったところまでをお話ししました。詳しくは前回(その1)をご覧ください。

19歳の彼のHIV抗体迅速検査の結果が出るのを待っている間に、さらに性感染症全般についての検査も行ないました。その内容は性器・肛門・口腔内の診察、さらに身体の視診です。
検査項目はクラミジア、淋菌、梅毒、ヘルペス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、血液一般、血液化学などの血液、尿検査に及びます。

そうこうしている間にHIV抗体迅速検査の結果が出ました。
予想はしていましたが、やはり「陽性」と出ました。医師としても緊張する一瞬です。
もちろんこの検査はHIV抗体のスクリーニングであるので、確認検査で陽性を確認しなければHIV感染は確定できません。実際、一般の人では確認検査で陰性になる人も少なくありません。
しかし、同性愛者の場合、陽性率が高いというのも事実なのです。
「まだ、19歳で・・・」と心中は暗澹たる気持ちになりながらも、医師として冷静に彼に事実を伝えました。

「HIV感染の疑いがあります」という私の言葉に対し、彼はある程度覚悟していた様子で冷静を装っていました。しかし彼の心中には計り知れないものがあったでしょう。
そうと思うと私も言葉を失う思いがあります。でもそうは言っていられません。
もしHIV感染が間違いないのであれば、彼はこれからこの病気と戦わなければなりません。
そして私も医師として彼をサポートしなればなりません。
私自身も、緊張しながらも冷静を装い、これからの診療、治療について彼に説明を行ないました。

まずは、スクリーニングの結果を受けて、HIV検査をしなければいけません。
そこで、確認検査(Western Blotウエスタンブロット法、抗原・抗体法)と抗原検査としてPCR法(核酸増幅法)もオーダーしました。検査結果がでるまで約7~10日間はかかりますが、それまで治療を待つわけにはいきません。
臨床症状から、とりあえず早期顕症梅毒と尖圭コンジローマの治療を開始しました。
駆梅療法としては、ペニシリン系抗生物質であるアモキシリン(AMPC)1.5gr/日を投与。
また肛門の尖圭コンジローマに対してはイミキモド(ベセルナクリーム5%)の外用剤塗布(3回/週)を処方し、経過観察をしました。
ところがその翌日から彼の体調が急変したのです。

詳しくは次回にお話ししましょう。

Posted by aids : 16:19

19歳のHIV感染患者(その1)

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「HIV感染」というと「自分に関係ない」「アフリカなど遠い世界の出来事」のように思っていらっしゃる方はいませんか?

HIV感染は、日本でも看過できない大きな問題で、決して「関係のない」事ではありません。

先月発表された厚生労働省のエイズ動向委員会の報告によると、2009年に国内で新たに報告されたHIV感染者は1,008人、エイズ患者は420人で、計1,428人。
2003年以来、毎年この数は増え続けていたのですが、2009年は前年比8%減で7年ぶりに減少しています。しかし、感染の有無を調べる抗体検査件数も前年比15%減で、単に「検査する人が減ったので、感染者が発見できなかっただけ」という有識者の見方もあります。

HIVへの関心が薄れている傾向も否定できないと思います。
そんな風潮に警鐘を鳴らす意味で、最近当クリニックに来院したHIV患者の例をご紹介しましょう。

先日、『先生、ペニスにタダレができ、肛門にイボができました』と言って来院してきたのは、まだ19歳の男性。見るからに優しそうな音大生でした。
さっそく問診をすると男性同性愛者(MSM)であり、いわゆるその受け役(ウケ=ネコ)であることがわかりました。パートナーの男性は24歳だそうです。

まずはすぐに局所を診察しました。
ペニスの冠状溝近くの包皮内板に2つの浅い潰瘍を認め、肛門周囲には多数(1~3mm大、10個)の疣贅(イボ)を認めました。
これを見て先ず疑った病気は梅毒です。ペニスに潰瘍あることから、この潰瘍は梅毒の初期症状である“硬性下疳”では?と考えました。
また潰瘍が浅く複数あるため、性器ヘルペスの再発も疑わなければなりません。
しかし、激しいオーラルセックスにより、複数の硬性下疳が生じることも決して珍しくはないのです。

さらに肛門周囲を確認すると、できているイボは尖圭コンジローマであることがわかりました。
同性愛者ということでしたから、本人の承諾を得てHIV抗体迅速検査も行いました。
その結果は大変つらいものであったのですが、長くなりますので次回にお話ししたいと思います。

Posted by aids : 16:06

2010年02月23日

ペニスから出血!?陰茎小帯の断裂

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冬のある朝のことでした。
私の診療所の外来診療が始まるとすぐに、
「先生、ペニスが切れました。出血が・・・!」
と言って22才の男性が彼女同伴でやってきました。
その彼女に見覚えがあると思ったら
なんと当診療所にまじめに検診にやってくる、性風俗嬢のひとり。

まずは彼の患部を診ると、ペニスは可愛そうに血まみれ状態。
しかし、診断は直ぐにつきました。包皮小帯の断裂です。
断裂面からの出血はほぼ止まっているものの、
『先生、痛いよー!これって大丈夫?』
と、診察中に顔をしかめる彼は本当に痛そうな様子でした。

ひと通りの処置を終えて詳しく話を聞いてみると、
一緒にホテルに泊まった二人が、
起きぬけのモーニングセックスをした最中のアクシデントであったのだとか。
もともと彼の包皮小帯は、生まれつき少し短い状態であったようです。
包皮小帯が短いと、勃起した時に陰茎が十分に伸展できず、
亀頭が前側に傾いてしまいます。
俗にいう“あそび”がない状態です。
そこにセックス時のピストン運動という機械的刺激が加わり、
突然、この包皮小帯が断裂したというのが、今回の事件のようです。

いい機会ですので、ここで少し包皮と包皮小帯についてご説明しましょう。
包皮は亀頭を包む皮膚です。
亀頭冠の腹側端(裏側)と外尿道口が出会う亀頭の腹側面(裏側)正中線上、
つまり身体の真ん中において包皮は小さなヒダとなっています。
このヒダを包皮小帯といいます。
この包皮小帯と陰茎縫線とはつながっています。
言い換えると包皮小帯とは外尿道口と陰茎縫線を結ぶヒダなのです。

この彼のペニスの場合は、
今回、包皮小帯が断裂したお陰で亀頭の“あそび”ができ、
逆に自由に動けるようになりました。
このような場合、断裂面の両端の接合手術はいりません。
もし接合すれば、例え手術がうまくいっても、
また包皮小帯が短い状態になってしまい、
強い負荷がかかれば再断裂してしまうでしょう。
それを避けるためにも、断裂面の接合は行わないのです。

それから彼は再び来院することはなく、
私もその後の経過を気にしていましたが、
意外なところから彼の近況を聞くことができました。
彼のことを教えてくれたのは、自分の検診のために来院してきた例の性風俗嬢。
彼女いわく
「あれからとてもうまくいっています。先生のおかげです。ありがとうございます」とのこと。
「うまくいっている」が何を指しているのか、あえて追求するような野暮は止めておきましょう。

なにはともあれ、よかった、よかった。

Posted by aids : 09:58

2010年01月22日

院長掲載記事「Male STDs:Action Guide(第3版)」

掲載誌のご紹介

当院が、『男子のためのSTDハンドブック Male STDs:Action Guide(第3版)』に、
「STD診療機関の紹介」として掲載されました。

「セクシュアリティにかかわわらず受診しやすい医療機関。自分にあった医療機関を見つけてください。」という視点でのご紹介です。

発行:(株)オーエムシー
監修:しらかば診療所
協力:グラクソ・スミスクライン(株)

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宮本町中央診療所掲載ページ

Posted by aids : 14:41

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