泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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急所攻撃は、なぜ痛いのか?(その1)

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ある格闘家から鋭い質問がありましたので、皆さんにもご紹介したいと思います。

<質問1>
そもそも、急所攻撃は、何故あんなに痛いのですか?
急所を打った時の内臓に来るような痛みは何なのでしょう?
<回答1>
鋭い質問をありがとうございます。早速お答えしていきましょう。
睾丸というものは、そもそも「腹部から陰嚢に降りてきた内臓(器官)」です。
ですから、睾丸と腹部の内臓とは、ある管で繋がっています。
つまり、急所攻撃が悶絶するような痛みとして現れるのは、内臓痛そのものと考えてよろしいでしょう。

腕や足を蹴られた時の痛みは、皮膚の痛みです。それに対して睾丸は内臓なので、皮膚のように表面的な痛みではありません。
皮膚感覚と内臓感覚がどう違うかは、よく判らないかもしれませんが、内臓を蹴られた時の痛みを内臓痛と言います。特に、女性が痴漢の撃退方法で男性の急所を蹴り上げる、これは最高の内臓痛ですね。

また格闘技で急所を蹴られたり、野球のキャッチャーの急所に球が当たった場合、悶絶して、うずくまってしまいます。さらに圧縮された睾丸の激痛が元で、心臓発作になることさえあります。

少し専門的になりますが、睾丸の支配神経や動脈は、骨盤部ではなく腹部に起源があります。生後の精巣は陰嚢に納まりますが、もともとは腹部の臓器なのです。
このことは、腹大動脈の枝である精巣動脈が睾丸を通っていて、神経も胸髄の第1011神経に由来する交感神経が睾丸を支配することからも理解できます。
つまり、精巣は血管や神経を伴って陰嚢に「降りている」のですね。
これは「没落した貴族」に例えられることがあります。

精巣も腹部から「落ちたり」とは言えど、その起源は「高い所」にあるということなんです。




2012年08月14日

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