泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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薬剤師への臨床講座「性感染症」

薬剤師の月刊誌PharmaTribuneファーマトリビューンに私の講座の記事が掲載されましたのでご紹介いたします。

臨床講座54宮本町町中央診療所尾上泰彦

性感染症  

Point  ポイント

1.疫学:性感染症の疾患別の報告数は、性器クラミジア感染症や淋菌感染症が1990年代半ば頃から増加して、2002年をピークに減少傾向に転じているのに対して、性器ヘルペスや尖圭コンジローマは不変か、やや増加傾向にある。

2.クラミジア感染症:性感染症のうち、患者数の最も多い疾患である。男性は尿道炎、精巣上体炎、女性は子宮頸管炎、骨盤内炎症性疾患、劇症の急性肝周囲炎などを発症する。マクロライド系薬、ニューキノロン系薬、テトラサイクリン系薬のいずれかを投与する。

3.性器ヘルペス:単純1型(HSV-1)または2型(HSV-2)の感染により、性器に浅い潰瘍性または水疱性病変を形成する。初感染の臨床症状は様々で、強い急性症状を呈するものか無症状のものまである。抗ヘルペスウイルス薬を投与する。

4.淋菌感染症:男性においてはクラミジアと並んで頻度が高い性感染症である。男性では尿道炎、女性では子宮頸管炎を起こす。治療には、セフトリアキソン、セフォジジム、スペクチノマイシンの筋注、静注、あるいはアジスロマイシンの内服を用いる

5.尖圭コンジローマ:ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染によりできるイボの一種である。治療には、イミキモドクリームの外用、凍結療法、電気メスなどで切除する外科的切除法、レーザー蒸散術などがある。

6.薬剤師へのアドバイス:性感染症を発症した患者は、心身両面において強いショックを受けている。薬剤師から病気について尋ねるのは難しいが、質問を受けた場合には的確な回答ができるようにしておきたい。

 (中略) 

薬剤師へのアドバイス

性感染症を発症した患者は、心身両面において強いショックを受け、誰に相談しようか、どの病院に行こうか、いろいろ悩んだ末に受診している。パートナーに申し訳ない、打ち明けにくいなど、対人関係までに悩みが及ぶことも少なくない。私は、疾患の治療はもとより、いかに患者の心の傷をケアしてあげられるかを念頭において診察をしている。患者の性格にもよるが、ときには、診察中にベッドに横たわった男性の性器に向かって「君はいつどこで何をしたのかな?どうしてこうなったか教えてくれる?うーん。答えてくれないようだね。じゃあ、お父さんに聞いてみよう」と言って患者から笑いを引き出す工夫をしている。

薬剤師から、患者に病気をついて尋ねることは難しいと思うが、患者から尋ねられたら、性感染症は誰でもかかる可能性があること、不安な症状があったらなるべく早く受診し正しい治療を受けることが重要であることを伝え、患者が前向きに治療に臨めるよう手助けをする必要がある。積極的に個々の患者の特徴を理解し治療が継続できるように患者を守り、適切に対応していただきたい。

おわりに
最近は、性行動の開始が低年齢化している。10代は体の構造上、性感染症に罹患しやすいだけでなく、知識不足や診療機関への受診行動に結びつきにくいため、10代の性感染症の増加が懸念されている。

性感染症の制御については、コンドームの使用が勧められてきたが、残念なことにコンドームでは性感染症を100%予防できない。性器ヘルペスや尖圭コンジローマはコンドームで覆うことができない部位にも病変ができるからである。これらの手ごわい性感染症の制御には、性行為開始前のワクチン接種が最善の策と考えられる。2011年に発売された4価HPVワクチンのガーダシルは、子宮頸がんの予防だけでなく、尖圭コンジローマの予防効果が期待されている。若年女性に接種することにより、接種年代の女性の早期の発症率低下のほかに、結果的に男性の発症率も低下することが報告されている。

HPV4価ワクチンを皮切りに、性感染症の予防に有用なワクチン開発が望まれる。

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2014年07月07日

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