泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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日本性感染症学会 ・日本エイズ学会合同シンポジウム

日本性感染症学会・日本エイズ学会合同シンポジウムで講演をいたしましたので報告いたします。

要領は下記の如くです。

日本性感染症学会第26回学術大会

日本エイズ学会合同シンポジウム(性感染症を多角的に考える)

日時:2013年11月17日(日)14:00~16:00

 会場:長良川国際会議場
岐阜市長良福光2695-2  Tel058‐296‐1200

司 会 : 神戸大学大学院医学系研究科

腎泌尿器科学分野教授荒川 創一先生

演題 1. 『目で見るSTI 泌尿器科の立場から』

                   宮本町中央診療所 院長 尾上泰彦先生

 

演題 2. 『目で見るSTI 皮膚科の立場から』

                    東京慈恵会医科大学皮膚科 助教 石地尚興先生

 

日本エイズ学会合同シンポジウム  目で見るSTI

目で見るSTI 泌尿器科の立場から

抄録

性感染症(STI)は異性間あるいは同性間で性の営み、性行為があって初めて生じるという、大変人間性豊かな病気であり、誰もが感染しえる疾患群である。またSTIを疑うポイント?とは本人が、何時、何処で、誰と、何をしたのか、どんな事象が起きたのかの検証ともいえる。STIの臨床現場においては,教科書でみるような典型的な症例ばかりではない。そのため,STIの診断には問診技術と視診技術が重要となる。問診は簡単な項目(主訴、来院理由など)の聴取にとどめ、詳細は性器の視診時に行うことを勧めたい。これは視診の流れの中で問診を進める方が、より具体的な内容の聴取が可能なことを経験するからである。

プライベートパーツを見せている状態の方が、患者側も心が開きやすく、医師とのコミュニケーションが取りやすいのだと想像する。性行動の内容としてオーラルセックス、アナルセックス、性玩具の使用などの聴取、ことにオーラルセックスが日常的に行われている現在では、これについての聴取は診断に重要である。パートナーの人物背景も参考となる。特に、10代の後半~30代の男性患者では男性同性愛者(MSM;men who have sex with men)の可能性もある。MSMの可能性のある患者に対しては、セックスパートナーが異性であることが前提であるかのような問診をすべきではない。MSMの患者はそうした問診をされると、医師に対して心を閉ざす傾向が多く、良好な医師患者関係が望めなくなる可能性が高い。また、現在はインターネットが広く普及し、患者もそれなりの知識を持って来院するが、誤った情報にいわば洗脳されてしまっている場合も多く、それらを柔軟に修正する必要がしばしばある。

視診において通常のベッドではSTIの十分な局所所見が得られないことが多く、外陰部の診察には必要に応じて検診台の使用を勧めたい。臨床医は、診察したその日、その瞬間の臨床所見を見逃すと、後には二度と診られないという意識で、プライベートパーツに潜む多彩な情報を見逃さないようにすべきである。それが患者のプライベートパーツを見せることへの覚悟に応えることにもなる。

泌尿器科の立場から、私が経験しえたクラミジア感染症、淋菌感染症、性器ヘルペス、梅毒、尖圭コンジローマなどのSTI症例を中心に臨床写真を提示しながら視診技術のポイントについて言及し「目で見るSTI」の実態に迫る。多くが演者の臨床経験に基づいた内容であるが、パンツの中に隠された,驚くようなSTIの情報が、実際の診療のヒントになれば幸いである。

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2014年07月06日

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