泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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女性の淋菌性尿道炎!マジ!?

先月、23歳のOLの女性が来院してきました。
本人曰く、
「今朝から、排尿の始めに ひりひりとする痛みがあり、膿のようなものが腟付近から出た」とのこと。
早速 患者さんの陰部を診察してみました。
見ると、尿道口が発赤し、黄色の膿が出ています。
膿を顕微鏡で観察したところ淋菌様の菌体が観察されました。
この症状と顕微鏡の検査所見から、彼女は淋菌性尿道炎であると診断しました。


患者さんにもっと詳しく話を聞いてみると、
患者さんには同棲している彼がいて、その彼氏も前日から排尿初期痛
尿道口からの排膿があると言うではありませんか。
彼は彼女の診察結果を聞いてから、病院に行こうと考えていたようです。
彼女のセックスパートナーは彼一人だけということなので、
淋菌は彼から感染し たと確信しました。


そこで、さっそく彼氏にも診療所に来てもらい、診察してみると、
まさに淋菌性尿道炎の典型的な症状を示していました。
そして、彼氏は性風俗店にも通っていたことがわかり、
おそらく、そこで感染したのではないかと推測しました。


男性の淋菌性尿道炎は、感染の2~7日後から排尿痛をおこし、
尿道口からクリーム状の膿が出るといった、本人が自覚しやすい症状が現れます。
しかし、女性が淋菌に感染した場合、多くの症例では尿道ではなく子宮頸管に感染します。
そのため顕著な自覚症状が現れず、本人は感染したことに気付きません。



今回の患者さん(彼女)では、尿道に男性の尿道炎と同じような症状を示した比較的珍しい症例です。
今回の症例では、女性に症状があったために早期に治療をすることができました。
しかし、本人の自覚症状が乏しい場合は治療することができず、他人へ感染させてしまうことがあります。感染は、男性性器と女性性器の接触、オーラルセックス、アナルセックスなどで成立します。
また体液が付いた手指がふれた眼の結膜へ感染することもありえます。


女性でも男性でも、淋菌感染した場合には早期に適切な治療を行わないと、
淋菌が子宮頸管や尿道に留まらず、他の器官に移行し、重篤な状態に陥ります。
女性の場合は骨盤内炎症性疾患(卵管炎、卵巣炎、骨盤腹膜炎など)、
男性は精巣上体炎、また、菌血症や関節炎にまで進行することもあり、非常に危険な感染症の一つです。


また、1回のセックスによる感染伝達率はHIVは1~0.1%ですが、
淋菌の感染伝達率は非常に高く、30%と言われています。
淋菌感染症は性感染症の中では最も 感染伝達率が高い病気の一つです。


淋菌感染症の治療は薬剤耐性菌の問題があり、抗生物質の選択が非常に重要となります。
何か心当たりがある場合には早期に専門医を受診することをお奨めいたします。


それではごきげんよう!


2009年03月23日

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