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(4)淋菌は咽頭のどこに住み着くの?

前回は咽頭からの淋菌検出方法や咽頭淋菌検出率の男女差についてご紹介しましたが、
今回はいよいよ治療法についてのお話をしましょう。


淋菌性咽頭炎の治療は、日本性感染症学会の2008年「診断・治療ガイドライン」によって行います。
淋菌では薬剤耐性菌が問題になっており、薬剤選択には注意が必要です。
淋菌性咽頭炎の治療は現在、注射薬が主流になっています。
セフトリアキソン静注1.0g単回投与が一般的です。
あるいはセフォジジム静注1.0gまたは2.0g×1~2回、を1~3日間投与します。
咽頭淋菌にはスペクチノマイシンは有効性が低いため推奨薬から除外されています。


つぎに治癒判定検査の必要性について勉強しましょう。
咽頭感染は治療に時間がかかる症例が増加傾向にありますから、
治療後、3~7日によくなっているかどうかを確認するための治癒判定検査を行う必要があります。
性器・咽頭同時感染例では、治療により性器の淋菌が消失しても、咽頭の淋菌は残存するという場合もあります。それが治療後の性器感染症の再発原因となりえますので、感染の機会がなく再発した場合には咽頭感染も疑う必要があります。


最後に淋菌は咽頭のどこに住み着くのかもご説明しておきましょう。
実は咽頭の粘膜を覆っている粘液層の存在が淋菌の咽頭感染に関与していると考えられています。
つまり、口腔内上皮の粘液層にはもともと常在性であるNeisseria属の細菌が存在し、
同じNeisseria属である淋菌の生存環境としても適している可能性が高いというわけです。


淋菌は粘液層に存在するため宿主細胞にほとんどダメージを与えず、
感染が成立しにくい状態(保菌あるいは定着)にあり、何の咽頭症状もあらわさないことが
これによって説明されます。
そして咽頭淋菌の治癒率が低い事は、淋菌が咽頭上皮組織ではなく、粘液層に存在するため、投与された薬剤濃度の上昇が少なく抗菌効果が得られないためと思われます。


しかし、咽頭淋菌感染についてはまだまだ分らないことがたくさんあります。
今後の研究による解明が楽しみです。
今回のシリーズは、少し難しい話もあったかもしれませんが、
淋菌についていろいろ学んでいただけたかと思います。


それではごきげんよう!


2009年03月06日

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