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女性性器の大陰唇に生じた硬性下疳

20代の女性が梅毒に罹患し性器の左側大陰唇に硬性下疳が生じ、
さらにその下方に多数の尖圭コンジローマを認めた症例を経験したので報告いたします。
 
この女性は性風俗従事者(CSW)です。
 
写真①を参考にしてください。
 
視診にて左側大陰唇はかなり腫脹し、その小陰唇側に
直径約15mm大の硬性下疳が生じ、その周辺は隆起し骨様に硬い。
 
下疳の潰瘍、ビランはすでに治癒過程に入っていました。
 
さらにその下方の会陰部、肛門近くの大腿部に多数の尖圭コンジローマを認めました。
 
①大陰唇の硬性下疳・尖圭コンジローマ

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視診にて左側大陰唇はかなり腫脹し、その小陰唇側に
直径約15mm大の硬性下疳が生じ、その周辺は隆起し骨様に硬くなっていました。
 
また、下疳の潰瘍、ビランはすでに治癒過程に入っていました。
 
さらにその下方の会陰部、肛門近くの大腿部に多数の尖圭コンジローマを認めました。
 
②大陰唇の硬性下疳・尖圭コンジローマ

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初診時検査成績:
梅毒血清反応:RPR法 100.0,  TP法1055.0
HIV抗原・抗体検査:(-)
生殖器:クラミジアPCR法:(+)
臨床診断:1.第1期の顕症梅毒
  2.尖圭コンジローマ
  3.クラミジア感染症
 
 
第1期の顕症梅毒として早速、駆梅療法を開始しました。
 
アモキシリン製剤(サワシリン)1日1.5g(250mg×6T)を投与しました。
 
日本性感染症学会の診断・治療ガイドラインに則って
投与目標は4~8週間としました。
 
③Jarisch-Herxheimer反応

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ところが、駆梅療法開始後、数時間で
Jarisch-Herxheimer(ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー)反応を認めました。

症状は発熱(38.5℃)・関節痛でした。
 
対症療法としてロキソニン服薬の指示をしました。
 
写真③を参考にしてください。
 
ロキソニン服薬後、軽快しました。
 
④Jarisch-Herxheimer反応

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n駆梅療法を開始するとこのヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応が生じる場合があります。
 
n梅毒第1期、第2期の約20~30%に生じることがあります。
 
n治療を始めてこの現象が起きると、患者さんは激しく、驚いてしまうことがあります。
 
n医師から患者さんへの説明は非常に大切です。
 
n臨床医としては注意すべきことです。
 
さてこの患者さんは尖圭コンジローマを併発し、クラミジア感染症にも罹患しています。
 
まさに一つの性感染症を見たら必ず、他の性感染症も検討しなければならないという
 
我々、臨床医に対する戒めでもあります。
 
これらのSTIの治療については次回に検討することにいたしました。
 
⑤参考症例:女性 クリトリス包皮に生じた硬性下疳

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ここで女性の硬性下疳は臨床的に比較的稀でしたが、最近女性の梅毒患者が増加する中でやはり硬性下疳を伴う症例の増加は考えられます。
 
初期硬結、硬性下疳について勉強したいと思います。
 
梅毒はスピロヘータ科の梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum:T.p.)によって発症する感染症で、主として性行為または類似の行為による性感染症の代表的疾患です。
 
⑥参考症例:男性 冠状溝に生じた初期硬結

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顕症梅毒第1期においては、感染後、約3週間経過すると、T.p.の侵入部位である皮膚や粘膜などに、単発の小豆大~示指頭大の丘疹が生じ、硬度は軟骨様である。これを初期硬結と呼びます。
 
初期硬結はそのまま数週で吸収されることもあるが、多くの場合、周囲の浸潤が強くなり、徐々に周囲が盛り上がり、中心に潰瘍を形成して硬性下疳となります。
 
潰瘍底は皿状を呈し細胞浸潤があり硬度は軟骨様に硬くなります。
 
最初から硬性下疳として発症する症例もあります。
 
初期硬結や硬性下疳は、一般に疼痛などの自覚症状は無く、単発であることが多いとされています。

しかし、最近は多発することも稀ではなく、これはオーラル・セックスによる影響と考えられます。
 
初期硬結や硬性下疳の出現後、やや遅れて両側鼠径部などの所属リンパ節が、
周囲に癒着することなく無痛性に硬く腫脹してきます。大きさは示指頭大で、多くの方は数個認められます。
 
これらは無痛性横痃と呼ばれ、無治療でも自然消滅します。
 
⑦参考症例:男性 冠状溝に発症した硬性下疳

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好発部位は男性では冠状溝、包皮、亀頭部、女性では大小陰唇、子宮頸部ですが、
女性の場合、気づかないことが多いいようです。
 
さらに口唇部、口腔内、乳暈や手指など陰部外に生じることもあり、
陰部外初期硬結あるいは陰部外下疳と呼ばれていますが、発生頻度は2~3%以下と低いようです。
 
初期硬結や硬性下疳は、徐々に吸収され、数週間から1カ月の内に消失してしまいますが、瘢痕は数カ月残ります。
 
またこのような感染後4週間までの第1期において、梅毒血清反応は陽性を示さない(血清学的陰性期)ことがあるので注意を要します。
 
もし、血清学的陰性期に無治療のまま放置しておきますと、梅毒血清反応は陽性化することになります。
 
またこの血清学的陰性期に駆梅療法をスタートできれば陽性化せずに治療を終えることが可能です。
 
患者さんは初期硬結の状態で受診してくることは稀で、多くは硬性下疳の状態で受診してきます。
 
⑧参考症例:尿道内に発症した硬性下疳

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最近はオーラルセックスにより硬性下疳が、男性では尿道内に、女性ではクリトリス周辺に発症する場合があるので丁寧な視診が必要となります。
 
⑨水芭蕉 刺巻湿原で撮った写真です。

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水芭蕉の群生地:刺巻湿原
 
⑩水芭蕉:『刺巻湿原』(水芭蕉の群生地)

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清楚という言葉がピッタリ!
 
純白の花と緑の葉のコントラストが美しい!
 
実は白い花弁と思われているのは「蕚」で、
真ん中の黄色い芯のように見えるのが花です!


2017年05月04日

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