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高齢者の梅毒:「高齢者梅毒再発の可能性 (女性)」

高齢の母親の梅毒再発の可能性について息子さんから 、
 
相談がありましたので報告いたします。
 
【相談内容】
86歳の母親のことでご相談します。

10年ほど前に体調不良で入院した時の血液検査の結果から、
 
治療が必要な値ではないが、以前梅毒に罹患していたことがあると言われました。
 
その医療機関では嘔吐や食欲不振に応じて、どんどん薬を増やすだけで、
 
母は末期癌患者のように痩せてしまい、その医療機関には不信感を持つようになりました。
 
さすがに本人には梅毒のことは聞けないまま、かかりつけにしていた整形外科の先生に、
 
高齢者の梅毒再発の可能性を問い合わせたところ、
 
可能性は低いので心配しない方が良いと言われました。
 
結果的に転院し、服用していた心臓の薬の副作用だということで、
 
服用を中止したら食欲も戻って元気になり、梅毒のことは忘れていました。

 
①昔の著名人には梅毒が多い!
 
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ここ数年、原因不明でCRP高値、微熱が続くことが多く、軽い肺炎や、
 
レントゲンには写らないけれど気管支炎か肺炎の可能性?
 
と言われ入院することが度々ありました。
 
毎回、抗生物質の点滴や服用の治療を受けました。

今回も、半月以上続く発熱(36.8~37.5~38.3 1日で変動あり)
 
CRP8.4(10月1.75で徐々に上昇気味でした)で入院しましたが原因不明です。
今回、大変気になることが一つあります。

年明けごろから、右下唇の端1cmほどが、はみ出した口紅を拭き取ったような感じで、
 
粘膜部分がはみ出したように少し赤く腫れていました。
 
本人は、痛くもかゆくもないし大丈夫と気にしていませんでしたが、
 
10日あまりすると、潰瘍ほどではないのですが、ちょっと湿ったような感じ見えたり
 
かさっと見えたりしながら赤みが強くなってきました。
 
全体が赤くなく中ほどが少し肌色だったので押してみても化膿しているような
 
痛さは無いとのことでした。
 
最終的には大きな黒いかさぶたになり、数日で剥がれ落ちました。
 
今回の診療で、このことは先生に伝えましたが全く聞いていらっしゃらない感じでした。

2年ほど前に入院した時も下肢に何箇所も赤くなった後かさぶたになることがあり、
 
ドキッとしましたが老人性の湿疹だと言われました。紫斑とは違います。

ワーファリンを服用しているため、紫斑はできやすいのですが、
 
今も腕に何箇所か1~2cmの紫斑はあります。薔薇疹の写真をみるとドキッとします。

 
質問です。 薬で免疫力の低下した高齢者の治療済みの梅毒が再発する可能性はありますか?

CRP高値の場合は梅毒感染が疑われるという記事を読み不安になっています。

心臓とリウマチ、甲状腺と多剤服用中です。
 
リウマトレックスを何年も服用していましたが、一昨年原因不明でCRP11超え
 
(それまでは1以下にコントロール)で中止して、
 
プログラフカプセルとアザルフィジンに変更されましたが、免疫力は健常な方より
 
抑えられていると思います。プレドニゾロンも服用中です。

原因不明でCRPが高値になるたびに、梅毒再燃の可能性はないのかと心配になります。

よろしくお願いします。

 
②葉キャベツ

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【回答】
 
 先ず言葉の意味ですが、「再発」とは、また新たに感染したということになります。
 
お母さまには、そういうことは考えられません。
 
ですから「再発」ではなく、貴方のお母さまに、梅毒の「再燃」の可能性はないのかということになります。
 
10年ほど前に体調不良で入院した時の血液検査の結果で、
 
治療が必要な値ではないが、以前梅毒に罹患していたことがあると言われたという事ですが、
 
お母さまが梅毒に感染した時期がわかりません。
 
恐らく若い時に感染したと推測いたします。
 
それに梅毒の治療済み(駆梅療法終了)ということであれば、何らご心配ありません。
 
また、お母さまは入院することが度々あり、毎回、抗生物質の点滴や服用の治療を受けたということですが、
 
これは 抗生物質の点滴や服用の治療をしたということは、梅毒の治療もしたということにもなります。
 
ただし、内容が不明なため梅毒に対し適切な抗生物質とはいえませんが、梅毒の原因のスピロヘータは
 
原始的な細菌で多くの抗生物質に反応いたします。
 
ですから、知らないうちに梅毒の治療もしたということにもなります。
 
CRPが高値になるのは何らかの感染症・炎症があるのでしょうが、分からないということですね。
 
このことについては、内科の主治医に経過観察してもらってください。
 
かかりつけの整形外科の先生に、高齢者の梅毒再発の可能性を問い合わせたところ、
 
「可能性は低いので心配しない方が良い」と言われたそうですが、その通りです。

 
③臨床医の落とし穴!

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一般的に梅毒は無治療の第1期及び第2期は感染力ありますが、
 
適切な治療を行っていれば、約4数週間ほどで感染力はなくなります。

また、陳旧性梅毒の場合は、梅毒血清反応で抗体は陽性になる場合があります。
 
しかし、梅毒の原因となるトレポネーマ病原体はいないと考えてください。
 
ですから、一般の日常生活で感染することはありません。
 
貴方のお母さんのように、高齢者で過去に感染したしたことを示すTPの抗体を認めることはがあっても、
 
現在、感染させる病原体を持っている高齢者はいないと考えてください。

 
④梅毒 :スピロヘータ科 トレポネーマ属に属するグラム陰性菌

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⑤梅毒トレポネーマの特徴

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2017年02月10日

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