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サワシリンカプセル:梅毒の治療薬の内服量について

20歳代の女性から梅毒の治療薬の内服量について
相談がありましたのでご報告いたします。

【投稿者】
梅毒の治療について (女性)

【相談内容】

こんばんわ。 先日はありがとうございました。

12月7日に梅毒の陽性反応が出て、12月12日に再度血液検査をし、
12月20日に血液検査の結果がでました。
RPR 48  TPHA 108 でやはり陽性でした。
 
①梅毒血清反応:陽性
20161222_01.png
 

さっそく治療に入ることになったのですが、
サワシリンカプセル250を1日16カプセル(朝8カプセル、夜8カプセル)
飲むよう言われ、その時は「治るなら飲みます」と答えたのですが、
その後薬局で薬剤師の方に「1日16カプセルになってるんですけど、
本当にあってますか?」と言われ、「そう言われました」と答えました。

薬剤師の方に「一応こちらからも先生に連絡をしてみて、
もし間違いがあれば連絡しますね」と言われたのですが、
今日は何も連絡ありませんでした。
 
②サワシリンカプセル・錠250mg
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③サワシリンカプセル125mg
20161222_03.png

なんだか不思議に思いネットで調べていると1日1500mgというものが
ほとんどだったのですが、こんなにたくさん摂取して大丈夫なのでしょうか?
 
【回答】

このサワシリンの投与量は一般的な投与量に比較してかなり多いと考えます。

梅毒の治療に関して明確なエビデンスはありませんが、
貴方が調べた通り、1回500mg 1日3回の処方が、日本では一般的に
多用されています。

1日16カプセル投与した件に関しては、ここからは邪推です。

1.単に梅毒治療を知らない医師なのか。

2.患者が想像を絶する体重のため投与量を増量したのか。

3.サワシリンカプセル250mg と 125mgのカプセルと勘違いしたのか。
125mgカプセルの場合は、500mgで1日4回投与量で考えれば1日16capとなります。

4. いつもその量で梅毒治療している実績を持っているエキスパートな医師なのか。

5.その他の理由があるのか。
 
などが考えられます。

ご質問の 「こんなにたくさん摂取して大丈夫なのでしょうか?」 に関しては
投与経験がないのでコメントできません。
 
日本性感染症学会 性感染症 診断・治療ガイドライン2016 が
2016年11月1日に発行されました。
 
日本においてはこれに則った治療をされることをお勧めいたします。
 
以下に梅毒の治療ガイドライン2016をお示しします。参考にされてください。
 
治療ガイドライン2016 には、殺菌的に働き、耐性の報告もないペニシリンを
第一に選択すべきであります。
 
≪梅毒の治療≫
 
バイシリンG(ベンジルペニシリンベンザチン)投与が基本になります。
 
合成ペニシリンではなく天然であり、経験的に他のペニシリンよりも有効であると
いわれています。
 
バイシリンG:1 日120万単位/分3またはアモキシシリン(サワシリン等)
1日1,500 mg/分3を内服させます。
 
ぺニシリン・アレルギーの場合には、塩酸ミノサイク リンまたはドキシサイクリン
1日100mg×2を、ただし、妊婦の場合にはアセチルスピラマイシン
1日200mg×6を、内服投与します。
 
④梅毒第2期 バラ疹
20161222_04.png
 
投与期間は、第1期は2~4週間、第2期では4~8週間、第3期以降では8~
12週間を必要とします。
 
無症候梅毒では、カルジオリピンを抗原とする検査で抗体価が16倍以上を示す
症例は、治療することが望ましいとされています。
 
投与期間は、感染時期を推定し、その期の梅毒に準じますが、感染後1年以上
経過している場合や、感染時期の不明な場合には、8~12週間とします。
 
神経梅毒では、ベンジルペニシリンカリウム(結晶ぺニシリンGカリウム)を
1日200~400万単位×6
(すなわち、1日1,200~2,400万単位を投与)点滴静注で10日から2週間
投与します。
 
先天梅毒の治療も、ベンジルペニシリンカリウムの点滴静注を行います。
 
治療開始後数時間でT.p.が破壊されるため、39℃前後の発熱、全身倦怠感、
悪寒、頭痛、筋肉痛、発疹の増悪がみられることがあり、この状態は
Jarisch -Herxheimer現象と呼ばれています。
 
この現象が薬の副作用でないことを、あらかじめ患者に説明しておくことが必要です。
 
妊婦は、この反応で流産または早産になることがあるので、注意を要します。
 
⑤ピンクローズ
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●米国CDCの2015年のガイドラインでは、ぺニシリンGの筋注がすすめられて
いますが、日本ではペニ シリンアレルギーによるショック死が発生したために、
筋注が行われなくなりました。
 
このために現在もペニシリンGの筋注の使用はできません。
 
バイシリンGは現在、品不足であり、梅毒の治療には当面使用することはできません。
 
また日本のHIV患者の梅毒の治療に対して、アモキシシリン3.0gとプロベネシド
の併用、2~4週間の効果 が95.5%という報告があります。

●米国CDCの2015年のガイドラインでは、妊婦に対してはぺニシリンGの筋注のみ
がすすめられています。
 
お大事になさってください。
 
⑥2016年12月21日 冬至
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2016年12月22日

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