泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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いきなりエイズ!

今日は、最近、突然やってきた患者さんのお話をしましょう。


38歳の男性が、唐突に『梅毒の治療してください。』
と言って来院してきました。
梅毒の診療には慣れているとはいえ、このフレーズには結構びっくり!
『では、まず診察を、そして次に血液検査をしましょう。』と説明して診察に取り掛かりました。


『先ず、口を開けてください!アーン!』これがびっくり。
口腔内は真っ白で、明らかにカンジダ。
特に舌の上には、ぶ厚いカンジダの白い絨毯(白苔)が敷きつめられているようで
直感でエイズ患者によくある、日和見感染による口腔カンジダ症だと考えました。
「日和見感染」とは身体の免疫機能が低下し、抵抗力が無くなったとき、
健康な時にはなんでもなかった細菌、ウイルス、カビ、原虫などにより起こる感染を言います。


内心は驚いたものの、表情には出さずに診察を続けます。
次に『それでは、身体を見せてください』と言ったところで、これがまたびっくり!
胸、背中それに腕には直径10~25mm大の濃い茶色い斑点が多数みられるのです。
「これはカポジ肉腫だ!」直感的に考えました。
濃い茶色の、数センチ大の単独の斑点ができるカポジ肉腫とは、エイズ患者に発症する悪性腫瘍です。
最後に血液検査をしたところ、結果はやはりHIV陽性で、確認検査でも陽性を示しました。
そこで、この患者さんはエイズの拠点病院に紹介いたしました。


日本では1982年に始めてエイズ患者が認定されて以来、今年で26年になります。
HIV感染者は感染に気づかずにいると、早ければ7,8年でAIDSとして発症し、
何処の病院にも受診してまいります。最近ではこの患者さんのように、
『いきなりエイズ』と言う感じで一般病院をおとずれる時代になっています。


『いきなりエイズ』とはHIV感染によって免疫が低下し、日和見感染症を発症した人が
病院で初めて抗体検査を受け、HIV陽性と分かる今回のような場合のことです。
最近では徐々にこれが増加しております。
HIV感染者は日本国内でも増え続けており、彼らがいつAIDSを発症し、来院するか分かりません!
一般病院でも、いつでもAIDS患者を受け入れられる準備体制を整えることが
必要になってきているのではないでしょうか。


日本でもAIDSパンデミック(大流行)が起きるか?
性感染症と戦う最前線に居る医師として、AIDS大流行発生の恐れを
完全に否定することが出来ないのが、今の日本の現状です。



2008年11月25日

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