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梅毒検査時の薬の影響

20代後半の男性から、梅毒検査時の薬の影響について相談がありましたので報告いたします。

【相談内容】

私は20代後半の男性です。お世話になります。

梅毒の感染不安行為がありもうすぐ6週経とうとしているのですが、
 
別の病気でグレースビット50mgを1週間、クラリス200mg×2を
 
1週間服用し合計2週間で本日飲み終わりました。

保健所の方へ2~3日後に検査へ行こうと思っておりますが、
 
この服用していた抗生物質で血液検査に影響が出ますでしょうか?
 
例えば陽性なのに陰性になってしまうなど。

お忙しいところ申し訳ございませんがご教示いただけると幸いでございます。
 
①梅毒の薬
2016091601.jpg

【回答】

梅毒の血清検査はリン脂質であるカルジオリピン(CL)を抗原とした
 
脂質抗原法と菌体自体を抗原として用いる梅毒トレポネーマ抗原法があり、
 
それぞれに定性法と定量法があります。
 
脂質抗原法は通常STS法とよばれ脂質抗原をプローブとして用いる抗体検査法です。
 
用いられるプローブはCLといわれる脂質抗原です。この検査法はたくさんありますが、
 
最近では自動分析器による自動測定が可能なラテックス凝集法(RPR自動化法)が普及しています。
 
このSTSは感染後3~4週で陽性となります。梅毒の治療効果をよく反映するため、
 
治療後の経過観察に用いられます。
 
一方、梅毒トレポネーマ(Tp)抗原法はTpに特異的な抗体を測定する検査法です。
 
Tpの菌体成分を血球にまぶし、血清中の特異抗体による架橋で生じる凝集反応を
 
判定するTPHA法とアセトン固定した菌体そのもので蛍光抗体間接法を行う
 
FTA-ABSなどがあります。FTA-ABS法は手技が煩雑なため、
 
比較的簡便なTPHA法が頻用されています。
 
なお、TP抗原法では治癒後も抗体価が下がりにくいので、
 
治療効果や治癒の判定には適しません。
 
また、病初期において、TPHA法はSTSより2~3週遅れて陽性化します。
 
そのため、多くの医療機関では、通常はSTSとTp抗原の2つの血清検査が行われています。
 
②梅毒2期:バラ疹
2016091602.JPG  

貴男は保健所に行くそうですが、貴男が行く保健所で2種類の検査を施行してくれるかどうか確認いたしましょう。
 
もし1種類しか検査をしてくれない場合は、医療機関を受診いたしましょう。
 
さて貴男の梅毒検査時の薬の影響についてお話します。
 
私見で恐縮ですが、感染機会が3~4カ月以上前でしたら、
 
検査結果にあまり抗生物質の影響はないと考えます。
 
ただ貴男は感染機会からまだ6週間ですから、検査結果に影響がでる可能性がないとは言えません。
 
梅毒はグラム陰性細菌で、かなり原始的な細菌ですから、ほとんどの抗生物質に
 
反応すると考えられます。
 
ですから、もし不幸にも、貴男が梅毒に感染し、極初期であれば検査結果に
 
影響が出るかもしれません。
 
結果が陰性であった場合は、3~4週間後に再検査を受けて、
 
陰性を再確認することをお勧めいたします。
 
お大事になさってください。
 
③カナダ Van Dusen Botanical Gardens 2016091603.JPG




2016年09月16日

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