泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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睾丸が赤く腫れて熱が・・・これって性感染症!?

先日、マニラに海外赴任している35歳の友人から、突然かかってきた国際電話。
内容は『左の睾丸が突然腫れて、痛い!袋の部分が赤くなって熱をもっている。体温も平熱より高いんだ。原因は何だろう!?  セックスはずーっとしていないし、心あたりはまったくないんだけど、助けてくれないか?』というSOSでした。


彼は東京で育ち、今回初めての海外赴任です。
今までの病歴などをいろいろ聞いてみたところ、子どもの頃、おたふく風邪に罹ったことがないことがわかりました。そこで、睾丸が腫れて発熱したのは性感染症ではなく、睾丸炎(精巣炎)であると判断できました。
多くの方は意外に思われるかもしれませんが、睾丸炎(精巣炎)は、実はおたふくかぜウイルスが原因で発症します。


この病気は、正式には「流行性耳下腺炎精巣炎」といいます。
ウイルスが気道から侵入して、粘膜下組織で増殖し、その後ウイルス血症をひき起こし、全身的に広がります。このおたふくかぜウイルスに子供が感染すると、2~3週間の潜伏期の後に発熱し、耳下腺が腫れて、いわゆ る「おたふく風邪」になります。子供にとっては大変な病気ではありません。
おたふく風邪は一度かかると、終生免疫ができるため、二度とかかることもありません。
しかしながら、子どもの頃、おたふく風邪にかからないまま大人になってしまい、成人がこのウイルスに感染すると、なんとなんと!男性では睾丸炎(精巣炎)になってしまうのです!


睾丸炎(精巣炎)は一般細菌が原因で起こることは極めてまれで、おたふく風邪ウイルス(ムンプス・ウイルス)、淋菌、梅毒のいずれかが原因と判断できます。
現在ではほとんどが、おたふくかぜウイルスで起こるといえるでしょう。
睾丸炎(精巣炎)は、耳下腺炎発症後5日前後に発症することが多く、その多くは片方の睾丸に発症します。
症状は急激に睾丸の腫れと痛みが出てきて、発熱もありま すが、発症してから1~2週間で軽快します。
しかし、睾丸炎になった約30%の方は、運が悪いとその睾丸が萎縮して精子を作れなくなり、男性不妊症になる危険性があります。


現代日本は超清潔国家です。
この無菌状態のような日本で育った若者が発展途上国に出かけると、いろいろな病原体と遭遇し、予期せぬ病気になることがあります。
今回の友人の例もその典型と言えます。
子供のうちにかかっておくべき『はしか』『みずぼうそう』『おたふくかぜ』『風疹』などの感染症にかからないで大人になった方はどうかご注意を!


おたふく風邪はムンプス・ワクチンで予防で きますので、転ばぬ先の杖として、覚えて置かれるとよいでしょう。




2008年10月24日

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