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梅毒の安心基準?について 

37歳の男性から梅毒の治療について相談がありましたので報告いたします。

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37歳、男性。2016年1月末に、RPR(定性)にて陽性反応が出たため、再度定量検査を行いました。

2月18日に結果を聞いた所、RPR(64)TPHA(たしか1,280)と出た為、その日からアモリン250mgを1日3回内服し始めました。
約4週間飲み続け、3月11日に再検査をした結果、RPR(32) TPHA(320)、
約6週間のみ続け、3月25日に再検査をした所、RPR(32) TPHA(160)にまで下がっていました。
とりあえず、薬は4月16日迄(飲み始めてから8週間)飲むことにしています。

この、数値だけで見て、梅毒はまだ他人に感染する危険はありますでしょうか?
奥さんと不妊治療をするのに悩んでいます。

【回答】貴方は37歳の男性。相談内容をまとめますと以下のようです。

2016年1月末、RPR(定性)で陽性であったため、定量検査を行った。
2月18日の結果がRPR(64)TPHA(たしか1,280)であったため駆梅療法を開始した。
2月18日からアモリン(合成ペニシリンであるアモキシリン製剤)250mを1日3回(1日、750mg)服用した。
3月11日に再検査をした結果、RPR(32) TPHA(320)、
3月25日に再検査をした所、RPR(32) TPHA(160)と抗体価は順調に下降した。

駆梅療法の目標は8週間服用とされているようですね。
恐らく、この時点では梅毒の他人への感染力はないと考えます。セックスをしても心配ありません。子供を作っても大丈夫です。
奥様の検査はちゃんとしておいてください。

ただし、梅毒の治療は日本性感染症学会の治療ガイドラインにそった治療をお勧めします。

通常、アモキシリン製剤(合成ペニシリン製剤の一つ)1日、250mg×6cap(1日量1,500mg)を 3回に分けて服用します。
最近、修正されたガイドライン(2013年)では梅毒の治療には、殺菌的に働き、耐性の報告もないペニシリンを第一に選択すべきであると言われています。バイシリンG(ベンジルペニシリンベンザチン)投与が基本になります。

合成ペニシリンではなく、天然であり経験的に他のペニシリン(C‐tR)よりも有効であるといわれています。
バイシリンG:1日120万単位/分3またはアモキシリン、アミノベンジルペニシリン1日1,500mg/分3を内服させます。
ペニシリン・アレルギーの場合には、塩酸ミノサイクリンまたはドキシサイクリン1日100mg×2を内服させます。

ただし、妊婦の場合にはアセチルスピラマイシン1日200mg×6を、内服投与します。
投与期間は、 梅毒第1期(感染後3カ月まで)に2~4週間、第2期(感染後3カ月から3年まで)には4~8週間、第3期以降には8~12週間を必要とします。

投与期間は、感染時期を推定し、その期の梅毒に準じますが、感染後1年以上経過している場合や、感染時期の不明な場合には8~12週間投与します。貴男の場合、アモキシリン製剤(アモリン)を1日750mg投与されていますが、基本は1日1,500mgですから、少し足りないと考えます。副作用がないのでしたら、これからでも遅くはありませんから、主治医に追加投与していただいたらいかがでしょうか。

また、貴男の場合は今後、定期的に通院され血液検査で抗体価の推移をみていただきましょう。心の平安を得るためにも、お勧めいたします。
抗体価がさがってくると貴方も医師も安心されることでしょう。

医師に言いたいことですが、一番大事なことは、梅毒の治療の目的は、
梅毒の病原微生物であるトレパネーマパリドムを死滅させることであって、梅毒血清反応の検査成績(Tp抗体価)を陰性化させることではないということです。

一度梅毒になるとTPHAは陰性に転じることはないため不安に感じるかもしれませんが、日本性感染症学会の治療ガイドラインにそった治療をなされば心配ありません。

お大事になさってください。


①第2期に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれていました。いつの間にか「楊」の字が取れて、次第に梅瘡→黴毒→梅毒と変化したと言われています。
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②青の洞窟
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2016年04月15日

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