泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

Home > 【活動報告】 > 「ジェネラリストのための 外来初療・処置ガイド」 

「ジェネラリストのための 外来初療・処置ガイド」 

医学書院(東京都文京区本郷)が2016年2月15日発行した、「ジェネラリストのための 外来初療・処置ガイド」 (編集:田島知郎)に執筆者として分担執筆いたしましたので報告いたします。


分担執筆は荒川創一(神戸大学特命教授・腎泌尿器科学)と私(尾上泰彦:宮本町中央診療所・院長)の共著です。 担当したのは第11章(泌尿器・外性器・産婦人科領域)の「性感染症」(p.222~225)です。
内容は 1.梅毒 2.HIV感染症・エイズ 3.淋菌感染症 4.性器クラミジア感染症 5.性器ヘルペスの5種について臨床者写真を提示し、症状・診断、初療・処置ならびにコツとアドバイスを述べました。

本書の特徴について下記にお示しいたします。

『ジェネラリスト必携! 外来で困らないための初療・処置のガイドブック』

本書は、臨床医が最低限行うべき初療・外来処置を1冊にまとめたガイドブックです。

豊富な写真・イラストを用いて、診断において見逃してはならない重要症候や、外来でできる治療手技をわかりやすく解説しています。
小児から高齢者、頭のてっぺんから足の爪先まで-患者の年齢・部位を問わずジェネラリストに求められる初期対応を網羅してあります。

これさえ読めば、もうどんな患者が来ても困らない!

編集者の 田島知郎 先生(東海大学名誉教授)のお言葉。

-----------------------------------------------------------------------------

超高齢化の先頭を走っているわが国には,医療の望ましいあり方を世界に示す役割が課されています。しかしながら,臓器別診療のベースがいまだ強固であり,病院もオープンシステムで運営されていない状況にあります。
そのようななかで,特定領域の専門医でも開業すると病院診療にかかわらない,いわば“...いわば“半専門医”になるなど,医師の力をフルに活用しきれないことが隘路になっています。

理想の医療のあり方は,「いつ,どこで起こるかわからない急病や外傷に,できるだけ早く適切に対処してもらうことができ,そこ(あるいはその地域)で診療が完結すること」ですが、このイメージから遠いのがわが国の現実です。
また医師の臨床の守備範囲の狭さも大きな問題です。現に首都東京でさえ,例えば異所性妊娠の破裂で適切な診療を受けられず命を失う例が何年かに一度はあります。
数年前には女医すら犠牲となる例さえありました。若い女性の下腹部痛で命にかかわる疾患として,西欧先進国の医師であれば,診療科にかかわらず真っ先に脳裏に浮かぶのがこの病態です。
こうした弱点がわが国の医療にあることをふまえて,臨床力を広げるために本書を役立たせてほしいと願っています。本書タイトルの枕詞「ジェネラリストのための」には,外科医よりも優れた胆嚢摘出術が行える者さえいた米国のGP(general practitioner)のイメージが残る一方で,わが国では内科系中心に養成されつつある総合診療医の姿をみて,私自身禁じ得ない微妙な思いがあり,その反映でもあります。
総合診療医については,中核病院での医師不足を補うだけでなく,開業医の半数を入れ替える,あるいはTPPの延長線上で米国と同様の守備範囲を備えたナースプラクティショナー制度導入などの論議にもつながってほしいと願っています。
診療において,患者が診療室に入ってくる様子,あるいは医師が患者に近づきながら得られる情報は貴重です。それに基づいて最悪の事態,病態を想定して,最優先すべき行動が何であるのか。次に何が起こりうるかまで想像を広げ,そのうえで病態を絞り込むことになるでしょう。
各臓器の解剖学的配置・形態,それぞれの生理機能を考え合わせつつ,五感を駆使して全身状態を把握する,といった緊張感を伴う診療姿勢は基本であります。
具体的には胸部の打・聴診,腹部で行う触・聴診の幅を,頸動脈,あるいは四肢血流のチェックにも広げる,また直腸診によるDouglas窩,男性での前立腺の触知,女性での内診,さらに眼底鏡,耳鏡なども駆使できる心構えや技術があればなお望ましいと考えます。

余談ではあるが触診では,痛くないところから触り始めることがコツであろう。筆者諸氏が心を込めて執筆してくださったことに感謝しつつ,医療が患者目線のものになることを後押しするために,本書が広く活用され,役立ってほしいと願っています。

2016年1月  田島知郎

-----------------------------------------------------------------------------

最後になりますが、本書は日常外来から当直まで、臨床医が行うべき初期対応を一冊にまとめてあります。症例ごとに症状・診断、初療・処置、コツとアドバイスが掲載されています。
初療時の心構えと届出義務、基礎疾患のある患者の初療時の留意点なども解説されています。
是非、若い臨床医はお買い求めください。

①「ジェネラリストのための 外来初療・処置ガイド」
20160404-07.png
 
②胎児
20160404-06.png




2016年04月04日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.dr-onoe.com/mt/mt-tb.cgi/265

Entries

Archives