泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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『HIV感染症とその治療について最新の知見』

日本性感染症学会
第6回 関東甲信越支部総会・学術集会
が2015年9月27日(日)13:00~
東邦大学看護学部 第9講堂室で開催されました。
その中で私が興味を持ちました講演について報告いたします。
その演題は『HIV感染症とその治療について最新の知見』です。
講師は 味澤 篤先生(公益財団法人 東京都保健医療公社 豊島病院 副院長)です。
 
演題 『HIV感染症とその治療について最新の知見』

以下にその講演要旨を示します。
不治の病であったHIV感染症は、抗HIV療法(antiretroviral therapy、ART)の進歩により長期の予後が期待できる疾患になった。
国内で本格的にARTが導入された1977年時点では、
①抗HIV薬の認可に国内と海外ではギャップがあること、
②アドヒアランスの問題、
③高額な治療費、
④必要な検査が認可されていないなどの問題があった。

しかしこれもHIV診療関係者の努力と協力により乗り越えることができた。
ART自体も進歩し、HIV感染者の予後は劇的に改善し、またARTが2次感染予防にも有効
であることが判明した。
ではHIV感染者はARTを行えば、それで「OK」なのかと言われれば「No」と言わざるを得ない。
近年HIV感染者に起こる合併症では、脳血管障害、心筋梗塞、糖尿病、非AIDS指標悪性腫瘍および骨折などが注目されるようになった。
したがって、HIV感染症診療は早期のART導入と同時に、さまざまな長期合併症に対して、定期的にチェックを行い、早期に介入を行うことが必要である。
またARTは確かに進歩したが、まだ治癒の道は見えていない。
ARTにより血液中のHIVはほぼ検出されなくなっている。
しかしスパイク状のウイルス増殖が時々見られる。
HIVが潜伏している感染細胞のプールが存在し、そこで微小なHIV増殖が生じているためと考えられている。
HIVが潜伏している感染細胞の主体は、腸管粘膜下をはじめとするCD4陽性メモリーT細胞とされる。
メモリーT細胞に潜んでいるHIVにどのように対処していくかが、今後の治癒あるいは機能的治癒を考えるうえで重要ポイントである。

以下は私の講演中に聞いたメモ書きです。
1.HIVはCD4に乗っかって、3日で全身に拡がる、ずるがしこいウイルス。
2.2007年頃からはHIV感染者はAIDS以外の疾患で死亡するようになった。
例えば、癌、心筋梗塞、脳梗塞。
3.また糖尿病になりやすくなり、同時に合併症も生じる。
4.今は、HIVの感染すると直ぐに治療を開始する。CD4と関係なく!
5.インテグラーゼ阻害剤は効果が良く、副作用も少ない。
6.HIV感染者に起こる合併症で、女性は骨折しやすい。
 
尚、日本性感染症学会 関東甲信越支部長は帝京科学大学医療科学部看護学科教授の齋藤益子先生です。講演会は多くの専門家が出席されて盛況でした。
以上です。

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2015年11月18日

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