泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

Home > 【クラミジア】 > 「クラミジアの治療について (女性)」

「クラミジアの治療について (女性)」

30代の女性からクラミジアの治療について相談がありましたので、報告いたします。

【相談内容】
私は30代半ばの女性です。

今年8月12日に子宮外妊娠で手術しました。
 
そのときクラミジアDNA(PCR)では陰性。
その後9月19日に近所の婦人科で受けた検査では、
クラミジアIGA ELISA 1.35ということで、今日結果を聞き抗菌薬を処方されました。

8年前にクラミジアの治療歴があります。
 
3年前の出産の時には言われていません。

術後は避妊にも気をつけていたのですが、やはり現在感染しているのでしょうか?
 
抗菌薬の服用は必要でしょうか。

よろしくお願いします。
 
 
【回答】
貴女は、今年8月12日に子宮外妊娠で手術した。
 
その時のクラミジア遺伝子検査であるDNA(PCR)で陰性でした。
 
その後9月19日に近所の婦人科で受けた血液によるクラミジア抗体検査では、
クラミジアIgA(ELISA)1.35ということで、抗菌薬を処方された。

8年前にクラミジア感染症の治療歴がある。
 
3年前の出産の時には言われなかった。
 
以上貴女のいままでの経過をまとめてみました。
 
婦人科領域ではクラミジア感染を推定する場合に、抗原検査ができないケースで、
抗クラミジアIgA抗体、IgG抗体の血液検査をされることがあります。
 
私見で申し訳ないのですが、一般的にIgA抗体は感染の初期に上昇してくるものと考えています。
 
一方、IgG抗体は少し遅れて上昇してくるようです。
 
その後どのような経過で下降してくるのかはよく分かりません。

しかし、下腹痛や性交痛や内診痛が存在し、抗クラミジア抗体価が陽性であればクラミジア感染の存在が推定されます。
 
ただし、抗クラミジア抗体価は感染の治療により治癒した後も、長期間、陽性に出ることが多くの症例でみられます。
 
私見ですが、クラミジアの治療を行い抗体価が無くなるのは、早い人では2年位です。
 
しかし10年経っても陰性化(消失)しない人もいます。この点は臨床的に注意が必要です。
 
つまり、クラミジアの血清抗体検査は、女性の骨盤内感染症、肝周囲炎など感染部位から直接検体を採取するのが困難な疾患における補助的診断法としては有用であり、確かに使用されています。
 
もちろん、この検査は健康保険適用されていますから、婦人科領域では使用されることがあります。
 
しかしながら、私見ですが、このクラミジア感染症の補助的診断法としての抗体検査は、臨床的に診断的意義は少ないと考えています。
 
また抗菌薬で治療後の治癒判定検査にも使用すべきではないと考えられています。
 
貴女は8年前にクラミジア感染症になりその治療歴があるそうですね。
 
その時の過去の歴史が、クラミジアIgA(ELISA)1.35という成績として出てきたと考えられます。
 
ですから、貴女の現在の状況を表しているわけではないと考えます。
 
以上のことから、貴女の抗菌薬の服用は必要ないと考えます。
 
抗クラミジアIgA抗体、IgG抗体の血液検査は婦人科領域では使用する先生がいますが、私は臨床的意義が少ないと考えており、この検査は使用しておりません。
 
やはりクラミジアの検査は遺伝子検査【DNA(PCR)】などを受け、陽性であれば抗菌薬が必要になると考えます。

写真1.子宮頸部から漿液性の帯下を認める。
20151113_1.png

20151113_2.jpg




2015年11月13日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.dr-onoe.com/mt/mt-tb.cgi/225

Entries

Archives