泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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「性感染症と偽る院長に賠償命令」

朝日新聞で問題になったクリニックの院長に診てもらった男性患者が心配になり、私のいるクリニックに来院してきましたので報告いたします。
実はこの患者は国税局の潜入捜査官です。
箱ヘルに潜入し、その店舗の金銭処理を捜査する目的で、客として入店したそうです。
そこの風俗嬢(CSW)に性的なサービスを受け「お取り捜査」をしたわけです。
「箱ヘル」とは店舗型のヘルスのことで、本番行為はなく、フェラチオや素股(スマタ)で射精する風俗店です。
プレイルームは個室でシャワーがついている店が多いそうです。
この捜査官は、この「箱ヘル」に客を装い入店したそうです。
ところが、その5日後、陰嚢に皮膚症状がでてきて心配になり、たまたま運悪く、この問題になった当日、このことを知らずして、新宿の「クリニック」の院長に診てもらったそうです。
本人は平成27年8月20日(2015年)発行の朝日新聞を見てビックリし、8月21日、私と会うはめになったわけです。
その記事は次の様です。
≪『性感染症と偽る院長に賠償命令 東京地裁 「詐欺行為」』
性感染症にかかっていると虚偽の診断をされ、不要な治療を受けさせられたとして、東京都内の
男性(46)が新宿区内の診療所「新宿セントラルクリニック」の男性院長に約260万円の損害賠償を求めた
訴訟の判決が19日、東京地裁であった。近藤昌昭裁判長は院長の診断を「詐欺行為だ」と認め、
院長に約49万円の支払いを命じた。
判決は、男性は性感染症にかかっていなかったのに、院長が故意に虚偽の診断をしたと認定。
「医師が尽くすべき義務に著しく違反する」と批判した。
男性の弁護団は、「院長は法廷で数千人に同様の診断をしたと述べており被害者は
多数に及んでいる可能性がある」と説明した。≫
以上が新聞の記事です。
話が重複いたしますが、びっくり!
この新聞を持参して8月21日に私の前に一人の男性が現れてきました。
新聞に出た、8月20日にこの問題になった「クリニック」を受診したと言う。
主訴は、陰嚢の小腫瘤。痛みは殆ど認めない。
この男性の話しによると、ちゃんとした診察はされず、「貴方は性病にかかっている」と言われ、
他に何の説明もされずに、尿検査と血液検査をされたという。
尿検査と血液検査の検査内容の説明も無かったと言う。
そこで説明を求めたが「性病の検査をしました」としか言わず、はっきりとした検査内容の説明はしてもらえなかそうです。
さらに、説明されないまま、何種類もの薬を出されたと言いいます。
確かに、この問診から新聞報道の内容に似ていると感じました。
この捜査官も被害者の一人のような感じがいたします。
この男性は国家公務員で潜入捜査の目的で、ハコヘルに7日前に行ったとのことですが、箱ヘルの調査はともかく、この診療内容についての捜査は何もできなかったようです。
 
さて私もこの男性の外陰部の視診をいたしましたところ、陰嚢の右側に毛嚢炎が生じており、すでに痂疲形成しており、治癒過程に入っておりました。幸いなことに新しい抗生物質が投与されていましたのでこの薬を継続服用するように指示いたしました。
2週間後に私に会うことになっていますが、その時にどのような「クリニック」の検査結果をもらってくることできるのでしょうか!
興味あるところです。
捜査官さまお大事になさってください。また、ご活躍を期待しております。

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2015年08月25日

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