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若い女性に増加する子宮頸癌

平成20年2月28日 けいゆう病院で行われました、横浜市産婦人科医会の講演会に出席してきました。
講師は金沢大学准教授の笹川寿之先生でした。
演題は『若い女性に増加する子宮頸癌:子宮頸癌ゼロへのアプローチ』でした。
その中で、子宮頸癌の検診は従来どこの産婦人科でも子宮頸部の細胞診でしたが、これからの検診はHPV-DNA検査が主流になる可能性が高いという。
この話が印象的でしたので、今回はその報告をいたします。
テーマは『若い女性に増加する子宮頸癌』にいたしました。
 
《子宮頸癌の特徴》
1.子宮頸癌の罹患率はこの20年間ほとんど減少していない。
2.20~30歳代の女性では、罹患率のみならず、死亡率も増加する傾向にあります。
3.ヒトパピローマウイルス(HPV)感染は若い女性に最も多い性感染症である。
4.子宮頸癌はヒトパピローマウイルス(HPV)感染が原因である。
5.性交開始年齢の若年齢化に伴って子宮頸癌発生の若年齢化はすでに始まっている。
6.子宮頸癌を誘発する高リスク型HPVは15タイプ以上あり、その中でHPV16型感染は最も危険である。
 
《子宮頸癌ゼロへのアプローチ》
1.細胞診に比べHPV検査のほうが頸部異常の検出感度が高いことは明らかである。
2.HPV検査は異常検出感度が高く、将来の悪性化を予測できる利点もある。
3.これからの子宮頸癌検診では、HPVーDNA検査が主体になる可能性が高い。
4.細胞診をHPV検査の補助診断とするほうが有効かつ経済的である。
5.現在臨床治験が進行しているHPVワクチンはHPV16,18型感染を予防するものである。
6.このワクチンは深刻な副作用はほとんどない理想的ワクチンである。また、一度接種すると10年間は有効である。
7.このワクチンを性交経験前の女子全員に接種すれば、子宮頸癌を半分以下に減少させることが可能である。
8.さらにHPV検査を主体にした検診を3-5年毎に行うことによって、子宮頸癌の発生を限りなくゼロにできると考えられる。
9.これまで、日本の子宮頸癌が減少しない理由は、細胞診の精度よりも、むしろ低い検診受診率が原因と考えられる。
10.これからは検診受診率を如何にして上げるかの環境作りにかかっている。
 
以上報告いたしました。少し難しかったかもしれません。
そうなんです。難しんです。それではごきげんよう!


2008年02月29日

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