泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

Home > 【性にまつわるお話】 > ピンポン感染

ピンポン感染

ピンポン感染

未婚、40代の男性が受診してきました。
 主訴は性感染症の疑いでした。 来院の2日前から尿道から黄色い膿が出てきて、下着が汚れる。 そして排尿の初めに尿道が激しく痛いとのことでした(排尿初期痛)。
 感染機会があったのは、来院の5日前で、ある飲み屋で知り合った 女性とホテルで性交渉をもったそうです。いわゆるゆきずりの女性 との交渉(ナンパ)です。
 男性の局所を診察すると、確かに訴え通り、尿道口から黄色の膿が 排出していました。
直ちに尿道分泌物の細菌顕微鏡検査で淋菌性尿道炎 と臨床診断をくだしました。
また咽頭の淋菌検査(SDA法遺伝子検査) では、淋菌は検出できず、陰性でした。

日本性感染症学会の推奨薬(グレードA)の点滴治療で翌日には排膿が なくなりました。
その2週間後の治癒判定検査で淋菌は検出されず、淋菌性尿道炎は治癒と 判定しました。患者の男性も喜んでいました。
 ところが、また2週間後にその男性が来院してきました。 主訴は、また同じ症状で、排膿、下着汚染そして排尿初期痛です。 話しを聞くと、ゆきずりの女性との交渉(ナンパ)の3日後、 自分の本命の彼女とも性交渉をもっていたそうです。
ピンポン感染(あるいはキャチボール)と直ぐに推測しました。
 女性の淋菌感染症は臨床症状(黄色帯下の増量、下腹部痛、不正出血、 排尿痛、性交痛など)が出る方は少なく、 20~30%は無症状と言われています。 折角、淋病が治ったその男性は、治癒したと喜んでいた数日後、自分が 移した彼女と交渉をもってしまったのです。 彼女は自分の淋菌感染を知らずして、男性に淋菌感染症をプレゼント したことになります。これが典型的な“ピンポン感染”です。 男性にこのことを話し、再検査、再治療を行いました。
 もちろん彼女にはっきりとこの事実を話し、謝罪したそうです。 当たり前ですが、彼女を愛していればこそ、しなければならないことです。 その後、彼女を連れて来院してきました。 もちろん彼女は淋菌感染症であることが判明し、めでたく治療もできました。
 めでたし、めでたし。彼は、深く反省していると思います。

42.jpg


2014年03月30日

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.dr-onoe.com/mt/mt-tb.cgi/77

Entries

Archives