泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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「性病と性感染症とはどう違うの?」

ある泌尿器科の先生から次のような質問がありました。
「性病と性感染症とはどう違うのですか?教えてください」
それでは今回は少し、性感染症などの言葉について勉強しましょう。
一般には“性病”、“性行為感染症”そして“性感染症”は同じような意味で用いられていました。 しかし最近では専門家などの間では“性感染症”が多く使用されるようになりました。 それに伴って一般の方でも“性感染症”を使うような傾向がみられます。喜ばしいことです。 それに反してドクターでも“性病”を用いている方がいます。少し悲しいですことですね。

“性感染症”とは性行為またはそれに類似する行為で感染する病気の総称です。 日本では性にまつわる病気の名称は、かつては花柳(かりゅう)病と言われ男の遊び人の病気とされていましたが、 昭和23年からは“性病”と称され、昭和63年からは“性感染症”と呼称が変遷してきました。 世界的にはWHO(世界保健機構)は“VD=venereal diseases”(性病)を昭和50年に改めて“STD=sexually transmitted diseases”(性行為感染症)を提唱し、 さらには平成10年、性にまつわる感染症の概念を拡大し“STI=sexually transmitted infections”(性感染症)を推奨し現在に至っています。

法的には1998年(平成10年)に「伝染病予防法」、「性病予防法」、「エイズ予防法」が廃止され、新しく「感染症法」【正式には「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」】に吸収され統合されました。この時点で法的には「性病」という言葉がなくなりました。 旧「性病予防法」では『性病』とは、梅毒、淋病、軟性下疳及び鼠径リンパ肉芽種症の四つの病名をさしていました。

現在、蔓延しているエイズ(HIV感染症)、クラミジア感染症、性器ヘルペス、尖圭コンジローマ、B型肝炎、C型肝炎などの多数の病気は旧「性病予防法」のいう『性病』の中に入っていません。以上のことから「性病」と「性感染症」とは全く違うものなのです。

2008年(平成20年)12月から日本性感染症学会では「性感染症」の名称を使用しており、「性病」という用語は使用しないように啓蒙・指導しています。 つまり「性病」という言葉はすでに、オヤジ言葉となり死語となっています。 これからは「性感染症」を使ってください。

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2014年01月01日

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