泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

Home > 【梅毒】 > 女性の硬性下疳について(後編)

女性の硬性下疳について(後編)

20120418b.jpg

問診から、感染したのは仕事による性交渉の時だったことがわかり、感染時期は初診の3~4週間程度前と推測しました。
治療は、日本性感染症 診断・治療ガイドラインに沿って、経口合成ペニシリン剤(AMPC)を1日500㎎×3回、8週間、内服投与いたしました。
治療開始時に生じることがある、発熱、頭痛、発疹などの反応は特にありませんでした。
駆梅療法開始時は、RPRカードテスト 256倍と高値でしたが、治療が奏功し、1カ月後には64倍、2カ月後には16倍、3ヵ月後には8倍、4カ月後には4倍と順調に低下しました。

局所所見では、初診時に認められた直径約10㎜大の潰瘍も、8日目には治癒過程に入り、潰瘍は浅くなり、24日目には、左大陰唇を伸展するとクリトリス包皮に確認できた潰瘍が、きれいに消失し瘢痕治癒していました。

また3カ月後には、潰瘍はきれいに治癒しており、瘢痕は分からなくなっていました。ただ治癒部周辺には軽度の色素沈着が認められました。
経過観察中、第2期にあらわれる梅毒疹は認めませんでした。
その後、本人は性風俗嬢をやめ結婚いたしました。

1年半後の来院時には、局所の潰瘍はきれいに治癒しており、色素沈着も消失していました。
さらに2年3ヵ月後の来院時には、まったく正常に復しており、痕跡もわからないきれいな状態になっておりました。

尚、本症例は、梅毒と診断後、7日以内に県知事に届け出いたしました。
この届け出は医師の義務とされています。

お読みいただきまして、ありがとうございました。




2012年04月18日

Entries

Archives