泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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性感染症の二重奏

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昨年の年始早々に30代後半の男性が受診してきました。
 
「どうしましたか?」と訊ねると、
「性器の周辺が、ただれてすごく染みるんです」と言います。
 
そこで「いつ、どこで、誰と、どういうセックスをしましたか?」と訊ねた。
「大晦日に彼女としました。でも口だけです。だけど…そういえば、12月の中旬にソープランドに行きましたね」

「それでは、おちんちんを診ましょう」
 
そのペニスには、無残にも冠状溝に硬い大きな潰瘍(直径8mm大)ができていました。
痛みは無いと言います。
 
まさに、梅毒の初期症状である硬性下疳です。
さらに、冠状溝の全周囲にわたって、水疱が破けた状態のビラン(ただれ)が散在していました。
 
また、両側の鼠径部リンパ腺が腫脹しており、右側には圧痛が認められました。
体温は36.3℃で発熱はありません。
 
さて以上の身体的情報(症状・所見)から考えられるのは、
12月中旬に行ったソープランドの風俗嬢が感染源で、梅毒に感染したことで、
そして、大晦日に自分の彼女から受けたオーラルセックスにより、
彼女の唾液中に排泄されていたHSV(単純性ヘルペスウイルス)が原因で、
性器ヘルペスの初感染になったと思われます。
 
つまり、性感染症の二重奏(梅毒、性器ヘルペスの初感染)と言えますね。
 
さっそく、駆梅療法(梅毒の治療)と、性器へルペスに対し抗ウィルス治療を行いました。
 
その甲斐あってか、2月の中旬には梅毒の硬性下疳はほぼ消失しました。
しかしながら、3月の中旬にペニスの冠状溝に性器ヘルペスが再発し、
さらに、7月に入り、ほぼ同じ部位に性器ヘルペスが再発したのです。
 
これからも、この男性は性器ヘルペスの再発に悩まされることが予想されます。
もしこの男性に、年間5~6回以上の再発がみられれば、再発抑制療法を勧めたいと考えています。




2012年02月06日

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