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「性器ヘルペス」の治療は難しい

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最近、あるドクターから“性器ヘルペス”の治療についてのご質問がありましたので、今回はそのお話をいたします。

【質問】
性器ヘルペスにバルトレックス内服薬1週間と外用、アラセナと出して大丈夫ですか?
外用薬はゲンタシンの方がよいですか? 保険チェックの話ですが、宜しく願います。

【回答】
性器ヘルペスの一般的治療(重症例を除く)についてお話しします。

<初感染の場合>
先ずバラシクロビル(バルトレックス):1回500㎎ 1日2回 5日間投与します。
その後、症状の改善がみられなければ、さらに5日間投与できます。
しかし保険上、総計10日間が限度です。

<再発の場合>
バラシクロビル(バルトレックス):1回500㎎ 1日2回 5日間投与できます。
しかし再発例の場合、保険のシバリ上この5日間のみの投与になります。

<外用薬について>
先ず、抗ウイルス薬の内服薬(バルトレックス)を投与した場合は、 抗ウイルス薬の外用薬(アラセナA軟膏)の同時投与はできません。現在の保険診療では不適切な治療となります。
しかし抗ウイルス薬の内服薬を投与していなければ「抗ウイルス薬の外用薬」の投与が可能です。 また、抗ウイルス薬の内服薬(バルトレックス)を投与した場合の併用外用薬は下記のものをお勧めいたします。 非ステロイド外用薬(コンベックス軟膏、アズノール軟膏、スタデルム軟膏、白色ワセリンなど)、ゲンタシン軟膏などです。
この外用薬の使用の意義は、病変部(ビラン、潰瘍、発赤など)の消炎、保護作用などにあると考えています。 抗ウイルス作用ではありません。

<性器ヘルペス再発抑制療法>
年間に6回以上の再発を繰り返す場合、患者本人が希望すれば 再発抑制療法を積極的に導入すべきです。患者さんのQOLが向上し、パートナーにも恩恵があると考えます。

<最後に>
性器ヘルペスは外陰部だけに発症するものではありません。 尿道内、子宮腟部、肛門部、臀部などにも発症いたします。 目に見えないところにもウイルスの排泄があります。ですから、外用薬(抗ウイルス薬)の使用は患者さんにはあまりメリットがありません。
ここで外用薬(抗ウイルス薬)の実験データをご紹介いたします。
外用薬(抗ウイルス薬)を皮膚粘膜に塗布しますと、表皮基底層の抗ウイルス薬濃度は塗布して1時間後に ピークを認めましたが、その濃度も内服薬投与時の2分の1以下です。
しかも3時間後には濃度は低下していました。ですから、外用薬(抗ウイルス薬)は継続して何回も塗布すれば効果は多少ありますが、あまり患者さんにはメリットが望めません。
つまり抗ウイルス薬の内服薬(バルトレックス)の服用をお勧めいたします。
2006年にはFDA(USA)から以下のような勧告がありました。
『性器ヘルペスには外用薬を使うな!』
つまり、性器ヘルペスは皮膚・粘膜症状の病気が本体ではなく、 神経のウイルス感染症と理解すべきです。ウイルスは性器に感染すると神経を伝って腰仙髄神経節に遺伝子として潜伏感染(冬眠)します。 そして何らかのストレスがあると腰仙髄神経節に遺伝子として潜伏感染(冬眠)していたウイルスが 目を覚まし神経を伝わって、皮膚・粘膜まで上行しそこで性器ヘルペスとしての”花”を咲かせます。

先生、ご質問ありがとうございました。 




2012年01月06日

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