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恐るべし『悪魔のお土産』梅毒!

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『先生、ペニスのカリにシコリができちゃった!右足の付け根が腫れているけど、痛くはないので・・・』 と言って29歳の会社員が来院してきた。

診察すると、ペニスの冠状溝(カリの所)に直径8mm大の潰瘍(シコリ)が2ヶ所できており、右足の付け根(鼠径部)のリンパ腺が腫れていた。発熱はなかった。
私が、『3週間前にセックスしたでしょう?』 と聞くと、
『エッ?先生、どうして分かるの?確かに3週間前にピンクサロンに行ったけど!』と落胆のご様子。
『オーラルサービスでなったんだよ!これが有名な梅毒の初期症状である硬性下疳(こうせいげかん)だよ!でも良かったじゃない?こうして症状が出たから治療できるし!』と告げると、彼は驚いていました。

この男性の場合は、感染から、およそ3週間して病原体の侵入部位に硬いしこりができていました。
この時期に治療できれば後々の問題や心配が生じる可能性は少なくてすみます。
梅毒とは「トレポネーマ・パリダム」という細長いらせん形の病原体による感染症で、おもに性行為または類似行為によって感染する全身的な性感染症です。

●第1期場梅毒(感染後3ヶ月まで)
感染からおよそ3週間で、病原体の侵入部位に硬いしこりができてきます。 これを初期硬結といいます。
初期硬結はやがて中心にびらんや潰瘍をつくり、周囲が硬く盛り上がり痛みなどの症状はあまりなく、単発のことが普通です。しかしオーラルセックスでは複数できることもあります。
男性では冠状溝(カリ)、包皮、亀頭部あるいは口唇などによく見られます。
やがて足のつけ根などのリンパ節が腫れてきますが、痛みがないのが特徴です。
女性の場合は、・・・に症状が現れます。

● 第2期梅毒(感染から3ヶ月以降~)
この頃から病原体は、局所から血中に入って増殖し、全身に広がり第2期梅毒疹が生じます。
第2期のもっとも早い時期には梅毒性バラ疹が現れます。男女ともに、体幹(頭、頚、胸、腹)を中心に、顔や手足に見られ、1~2cm大の目立たない淡紅色斑で自覚症状がなく、数週間後に自然に消えていきます。感染後約12週間目には丘疹性梅毒疹(きゅうしんせいばいどくしん)が現れます。
小豆大からえんどう豆大で赤褐色から赤銅色の皮膚の平らな隆起として、顔、体幹、手足に多発します。
このように、皮膚や粘膜に皮膚症状が出る梅毒のケースを「顕症梅毒」と言います。
しかし実際は「潜伏梅毒」といって症状を認めない場合が大変多いので感染機会のあった方はで是非検査を受けて安心しましょう。
血液検査(梅毒血清反応)は、病原体に感染してから3~6週間後に陽性化しますから6週間後に受けてください。結婚する時や子供ができる時に問題が生じないようにしましょう。
もしも検査を受けないでいると いつまでも心に平和は訪れません。

● 治療について
1929年に梅毒の特効薬である抗生物質ペニシリンの発見により、それ以後梅毒の大流行はなくなりました。それまでは治療は大変困難を極めたため、最後には神経炎や血管炎を起こしたり、 色々な臓器に腫瘍ができ壊死になり腐ってしまったり、脳や脊髄が侵されて痴呆や感情障害などの神経症状をあらわし、『脳梅』と云われ人格が崩壊することもありました。
現在では梅毒の治療は専門医にかかれば難しいものではありません。
忘れずに!早期発見!早期治療!

●梅毒についての豆知識
『梅毒』という病名の由来は第2期に見られる赤い丘疹が楊梅(ヤマモモ)の果実に似ているので楊梅瘡(ようばいそう)と呼ばれたことからきています。
いつの間にか「楊」の字が取れて、次第に梅瘡→黴毒→梅毒と変化したそうです。
そもそも梅毒はコロンブス一行が1492年、新大陸の発見とともに“原住民の風土病”をヨーロッパに持ち帰った『悪魔のお土産』といわれています。
その後爆発的に全世界に拡がり、日本への伝来は永正九年(1512)で、約20年足らずで日本にやってきたといわれています。

恐るべし、『セックスのパワー』、恐るべし『悪魔のお土産』




2007年06月25日

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