泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

Home > 【ヘルペス】 > 単純ヘルペスウイルス(HSV)迅速検査キットの開発(前編)

単純ヘルペスウイルス(HSV)迅速検査キットの開発(前編)

今回は、少し専門的になりますが、私たちの「ヘルペス研究グループ」で開発いたしました検査キットのお話しをしたいと思います。

『単純ヘルペスウイルス(HSV)迅速検査キットの開発』についてご報告いたします。
(2012年5月報告)

単純ヘルペスウイルス1型、2型(HSV-1、HSV2)を原因とする性器ヘルペス、口唇ヘルペスなどのHSV感染症は、よく見られる疾患です。

しかし、鑑別を必要とする疾患も多く、我々臨床医は診断に際し苦慮することもしばしばあります。性器ヘルペスの診断を確定させるには、HSV抗原があることを証明することですが、現在、迅速な方法がないため、そのほとんどは、問診と臨床所見(視診)で診断されており、臨床現場では、HSV抗原の証明による確定診断はあまり行われていないのが実状です。

一般外来では、症状が重く所見が明らかな初感染、初発例よりも症状が軽く、局所所見ではあまりわからないHSV2型を中心とした再発例が多く、臨床所見だけでは診断は不十分で、実際は多くの見逃し症例があることも問題視されています。

また、再発例には、異常はあるものの、その約60%は自分がヘルペス患者と認識していないと考えられています。

このような症例には、病変部位にウイルスが存在していることを証明し、正確な診断をすることにより、患者にヘルペスに関する情報を提供でき、今後の再発時の対処や他人への感染予防なども指導できます。このことは非常に重要と考えられます。

さて最近、感染症の臨床現場においては、インフルエンザ感染症やHIV感染症に代表されるように迅速抗原検査として、イムノクロマト法を測定原理とした簡便なキット化された試薬が数多く開発され、一般外来に普及してきています。

そこで、今回私達はイムノクロマト法を測定原理とした新しいHSV迅速検出キットを開発いたしました。
このキットの特徴は、特殊な機器を必要とせず、簡便な操作で、約10分程度でHSV抗原の有無を目視できることです。

このキットの基礎的また予備的臨床性能評価は、すでに専門学会にて発表し、また専門学会誌にも報告しています。

次回は、この検出キットのことをもう少し詳しくお話いたします。

 

20120515.jpg



2012年05月15日

Entries

Archives