泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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東日本大震災とCSW

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4月1日、首都圏では桜の花が咲きました。
しかし、私の心にはまだ春が訪れません。

先日、私の診療所に28歳の女性が訪れてきました。
その日は東日本大震災から3週間が経った日でした。彼女の受診の目的はCSW(性風俗従事者)の性感染症検診。

彼女は実は某被災地の漁師の娘でした。
4年前に結婚し、1年後には子供に恵まれましたが、その後間もなく離婚。子供の親権は彼女が受けました。

そして、2011年3月11日、東北地方太平洋沖地震が起きました。
その直後の想像を超えた大津波で、彼女の故郷の漁業の町は一変してしまいました。
それと同時に彼女の人生も一変してしまったのです。

漁師である父親は、事情はよくは分かりませんが、とにかくあの大津波の中を泳ぎぬき、九死に一生を得ることができたそうです。
母親も海岸線近くの自宅から緊急避難し、津波から逃れることができましたが、夫婦の住んでいた家は津波に流されてしまいました。

また彼女の祖母は彼女の父母とは別に住んおり、本人は無事であったが、津波で家が半壊。
そして、彼女自身の家は少し内陸にあったため、家も母子も無事だったということでした。
震災後、彼女は両親と祖母を自分の家に呼び、その家族に3歳になるわが子を託し、
この川崎にやってきたそうです。

彼女は自分が経済的支柱にならなければならないと考えて上京してきたのでしょう。
そして、おそらく相当、悩んだ挙句、CSWという道を選ばざるをえなかったことは想像に難くありません。
いつまで続くかわからない、性風俗業という名のいばらの道。
故郷にいる家族への想いを胸に、彼女は毎日を必死に戦っているのです。

『女は強い』・・・この言葉が適切ではないかもしれませんが、彼女のたくましい生きざまを見て、この言葉を思い出しました。

彼女の人生の春がいつ訪れるのであろうか。
そして、故郷に残した子供や家族と笑顔で一緒に暮らせる日がいつ訪れるのであろうか。
彼女のけなげな笑顔を思い出しながら、一刻も早い被災地の復興を願わずいられない毎日です。

すべての皆様の、性の健康と心の健康を心よりお祈りいたします。



2011年04月28日

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