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性器ヘルペス 臨床の最前線(その4)

今回は『5.治療』につてお話します。
 
治療にあたっては、先ず、性器ヘルペスは単なる皮膚・粘膜疾患ではなく、神経のウイルス感染症であるという認識が必要です。残念ながら、日本の一般臨床医は性器ヘルペスは皮膚・粘膜疾患と考えているのが実情です。

念のため、外来で処方する外用薬のメリットとデメリットについて紹介いたします。
外用薬では表皮基底層の有効成分濃度が1時間後にピークを認めますが、3時間後には濃度は低下してしまいます。ですから外用薬は表皮基底層の有効成分濃度が十分な薬用量に達しません。
それに比して内服薬は表皮基底層の有効成分濃度が高く保たれます。
しかも、外用薬には耐性ウイルスの発生の可能性があります。
そして、2006年6月にFDAからの次の警告がありました。 
“外用薬は性器ヘルペスに使うな!”
ですが、外用薬は、簡便に使用できます。しかも外用薬を持っていれば医師を受診することなく使用できます。
また性器ヘルペスは病変部以外にもウイルス排泄があり、他への蔓延の可能性があります。ピンホールの様な小さな病変もあります。ですから、性器ヘルペスの治療は内服薬が必要となります。
残念ながら日本では外用薬が多く使用されています。外用薬のみを処方する医師が約40%いるとされています。臨床医は性器ヘルペス=皮膚疾患という概念が一般的で、神経のウイルス感染症という概念が希薄です。

それでは、次回は『実際の治療』についてお話します。

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2013年01月07日

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