泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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性器ヘルペス 臨床の最前線(その3)

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今回は『4.臨床例の実際』についてお話します。
 
プレゼンテーションでは、初感染例と再発例の実際を紹介しました。特に、女性の性器ヘルペスの特徴について紹介しました。
女性の性器ヘルペスは深刻な疾患です。また、女性の方が男性より罹患率が2倍以上高いとされています。
女性の性器ヘルペスは、臨床症状が激しく発熱、疼痛、膀胱炎様症状、歩行障害、鼠径部リンパ節有痛性腫脹などを認めます。排尿障害、便秘などの末梢神経麻痺を伴うこともあります。
ときに強い頭痛、項部硬直などの髄膜刺激症状を伴う場合があります。さらに再発を繰り返す場合は、QOLが低下します。
 
それではどうして女性に多いのか?
確かに、世界的に性器ヘルペスは女性に多い疾患です。
それでは、何か原因はあるのか?
女性では、感染部位が外陰・腟であるため、粘膜部分が広範囲であり感染しやすい状況にあります。それに比べて、男性は粘膜部分の範囲が狭い。さらに免疫能力を低下させる黄体ホルモンの影響で、妊婦や排卵後は感染しやすいとされています。
 
ここで女性の性器ヘルペスの症状であるElsberg syndromeを紹介します。これは馬尾症候群を呈する進行性炎症性多発神経根炎です。尿意を感じない神経因性膀胱となり、カテーテルの挿入が必要となるケースもあります。HSVが上行性に仙骨神経根に直接進展し、限局性の髄膜脊髄炎が起き排尿障害などを生じます。
 
さて、ここまでのプレゼンテーションの中で大切なポイントは、性器ヘルペスの初感染は性感染症そのものですが、再発は性感染症かというと?
再発は性感染症ではありません。何らかのストレスで発症します。ただし発症すると、パートナーにとっては性感染症になり得ます。このことを、はっきりと認識してほしいと思います。
 
次回は『5.治療』についてお話します。





2013年01月07日

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