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性器ヘルペス 臨床の最前線(その2)

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 今回は、性器ヘルペスの『3.診断・検査』についてお話します。
臨床において、現在のところ、保険で認められた検査で迅速に確定診断することは難しい状況にあります。したがって、殆どの場合、臨床症状と問診・視診の組み合わせのみで鑑別診断を行わなければなりません。
そして、病原診断には迅速かつ簡便、感度特異性の高い検査が望まれますが、現在、診断に有用な検査としては
  1. ウイルス分離培養(ゴールドスタンダードといわれ特異性が高く、型判定が可能です)
  2. 核酸増幅法[PCR法](特異性が高く型判定が可能です)
  3. 抗原検査[蛍光抗体法](特異性高く型判定が可能です)
  4. Tzanck試験(外来で迅速簡便に検査が可能で、ウイルス巨細胞を認めればウイルス性疾患[HSVorVZV]として診断が可能です)
  5. 血清抗体検査(臨床的意義が低いとされ型判定もできません)
があります。
しかしながら保険適応されているのは抗原検査[蛍光抗体法]と血清抗体検査のみです。
現在、私のお勧めする検査は抗原検査[蛍光抗体法]です。
しかしこの検査は水疱が無い状態ではウイルスの検出率は低いのが実際です。水疱が認められれば、是非トライアルしてほしい検査法です。

また、性器ヘルペスの診断にはHSV(単純ヘルペスウイルス)の型判定が有用です。
その理由として下記のa.b.c.があります。
a. 初感染例:HSV-1が検出されることが多い(70%)
b. 再発例:HSV-2が検出されることが多い(95%)
c. 再発の頻度:HSV-2 (95%) ≫ HSV-1(5%)

従って、HSVの型を調べておくことは、その後の治療戦略を大きく左右いたします。経過観察には非常に重要となります。
さらに、今回、アルフレッサ ファーマ株式会社がイムノクロマト法による新しい単純ヘルペスウイルス抗原迅速検出キットを開発いたしました。ここで、このキットの内容を紹介いたします。
このキットは、2011年度に厚生労働省において体外 診断薬として認可され、現在、保険適応の申請中です。
HSV感染症は、臨床現場でHSV抗原の証明による確定診断は、ほとんど行われていません。
そこで、イムノクロマト法を測定原理とする新しい単純ヘルペスウイルス抗原検出キットの基礎的・臨床的性能を評価し、その有用性を検討しました。
その結果、簡便な操作性に加え、ウイルス分離同定法と同等の性能を示したことから、HSV感染症の迅速診断検査として有用であることが証明されました。
繰り返しますが、性器ヘルペスにおける検査の目的は、まずHSV感染の診断です。ですから臨床現場でのHSV感染症の迅速診断検査として、このキットは有用です。
 
さらに近年、新しい検査法が次々と開発されています。
LAMP法やPCR法といった核酸検出法は、優れた検出感度を有する検査方法です。
またPURE/LAMP法は、HSV-1およびHSV-2の検出および型判定に関して、従来のLAMP法およびPCR法と同等以上の感度、特異度が期待されています。
この高い感度、特異度を有するPURE/LAMP法は,臨床的にHSVの迅速検査法として普及と保険適応が早期に望まれる検査方法です。

次回は『4.臨床例の実際』についてお話します。



2013年01月07日

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