泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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19歳のHIV感染患者(その2)

前回、当クリニックに来院してきた19歳の音大生の男性についてご紹介しました。
ペニスに潰瘍あるこの男性、同性愛者であるということで、HIV抗体迅速検査を行ったところまでをお話ししました。詳しくは前回(その1)をご覧ください。

19歳の彼のHIV抗体迅速検査の結果が出るのを待っている間に、さらに性感染症全般についての検査も行ないました。その内容は性器・肛門・口腔内の診察、さらに身体の視診です。
検査項目はクラミジア、淋菌、梅毒、ヘルペス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、血液一般、血液化学などの血液、尿検査に及びます。

そうこうしている間にHIV抗体迅速検査の結果が出ました。
予想はしていましたが、やはり「陽性」と出ました。医師としても緊張する一瞬です。
もちろんこの検査はHIV抗体のスクリーニングであるので、確認検査で陽性を確認しなければHIV感染は確定できません。実際、一般の人では確認検査で陰性になる人も少なくありません。
しかし、同性愛者の場合、陽性率が高いというのも事実なのです。
「まだ、19歳で・・・」と心中は暗澹たる気持ちになりながらも、医師として冷静に彼に事実を伝えました。

「HIV感染の疑いがあります」という私の言葉に対し、彼はある程度覚悟していた様子で冷静を装っていました。しかし彼の心中には計り知れないものがあったでしょう。
そうと思うと私も言葉を失う思いがあります。でもそうは言っていられません。
もしHIV感染が間違いないのであれば、彼はこれからこの病気と戦わなければなりません。
そして私も医師として彼をサポートしなればなりません。
私自身も、緊張しながらも冷静を装い、これからの診療、治療について彼に説明を行ないました。

まずは、スクリーニングの結果を受けて、HIV検査をしなければいけません。
そこで、確認検査(Western Blotウエスタンブロット法、抗原・抗体法)と抗原検査としてPCR法(核酸増幅法)もオーダーしました。検査結果がでるまで約7~10日間はかかりますが、それまで治療を待つわけにはいきません。
臨床症状から、とりあえず早期顕症梅毒と尖圭コンジローマの治療を開始しました。
駆梅療法としては、ペニシリン系抗生物質であるアモキシリン(AMPC)1.5gr/日を投与。
また肛門の尖圭コンジローマに対してはイミキモド(ベセルナクリーム5%)の外用剤塗布(3回/週)を処方し、経過観察をしました。
ところがその翌日から彼の体調が急変したのです。

詳しくは次回にお話ししましょう。


2010年03月03日

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