泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

Home > 【エイズ】 > 19歳のHIV感染患者(その1)

19歳のHIV感染患者(その1)

hina2.gif hina.gif hina2.gif


「HIV感染」というと「自分に関係ない」「アフリカなど遠い世界の出来事」のように思っていらっしゃる方はいませんか?

HIV感染は、日本でも看過できない大きな問題で、決して「関係のない」事ではありません。

先月発表された厚生労働省のエイズ動向委員会の報告によると、2009年に国内で新たに報告されたHIV感染者は1,008人、エイズ患者は420人で、計1,428人。
2003年以来、毎年この数は増え続けていたのですが、2009年は前年比8%減で7年ぶりに減少しています。しかし、感染の有無を調べる抗体検査件数も前年比15%減で、単に「検査する人が減ったので、感染者が発見できなかっただけ」という有識者の見方もあります。

HIVへの関心が薄れている傾向も否定できないと思います。
そんな風潮に警鐘を鳴らす意味で、最近当クリニックに来院したHIV患者の例をご紹介しましょう。

先日、『先生、ペニスにタダレができ、肛門にイボができました』と言って来院してきたのは、まだ19歳の男性。見るからに優しそうな音大生でした。
さっそく問診をすると男性同性愛者(MSM)であり、いわゆるその受け役(ウケ=ネコ)であることがわかりました。パートナーの男性は24歳だそうです。

まずはすぐに局所を診察しました。
ペニスの冠状溝近くの包皮内板に2つの浅い潰瘍を認め、肛門周囲には多数(1~3mm大、10個)の疣贅(イボ)を認めました。
これを見て先ず疑った病気は梅毒です。ペニスに潰瘍あることから、この潰瘍は梅毒の初期症状である“硬性下疳”では?と考えました。
また潰瘍が浅く複数あるため、性器ヘルペスの再発も疑わなければなりません。
しかし、激しいオーラルセックスにより、複数の硬性下疳が生じることも決して珍しくはないのです。

さらに肛門周囲を確認すると、できているイボは尖圭コンジローマであることがわかりました。
同性愛者ということでしたから、本人の承諾を得てHIV抗体迅速検査も行いました。
その結果は大変つらいものであったのですが、長くなりますので次回にお話ししたいと思います。


2010年03月03日

Entries

Archives