泌尿器科専門医 ドクター尾上の医療ブログ:泌尿器科専門医 ドクター尾上に寄せられるさまざまな性感染症のトラブルについて専門家の立場からお答えします。

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『射精は1日にしてならず』

『性の医学財団』から「性の健康」秋号 が 2016年9月30日発行されました。
 
①鈴木春信画 「鞠と男女」
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その中の 特集 性の健康関連学会 最新情報の特集2に第46回全国性教育研究大会の報告がありました。   
演題:  男の性をめぐって~思春期男子への性教育再考~
聖隷浜松病院泌尿器科  今井 伸先生の講演がありました。
 
その記録集の中で興味ある記載がありましたので報告いたします。
 
『射精は1日にしてならず』

②ライフル銃
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男性不妊外来では、「まず、精液検査をしてください」と言われてコップを渡される。

検尿の時におしっこを採るのと同じような感覚で、マスターベーションで精液を出して提出しなければならない。

施設によっては、トイレで採らなけれはならない。

これは、「男性はいつでもどこでも精液を出して提出できる」ということが前提となっている。

つまり、男性は「用手的なマスターベーションで射精する技術を習得している」と考えられているということになる。

しかし、この精液検査の時に、精液をうまく取れない男性が少なからず存在する。

夢精でしか射精をしたことがない男性、射精しそうになると怖くなって刺激をやめてしまう男性、うつ伏せになって布団にペニスをこすりつけることでしか射精できない男性など。

そういった男性の多くは、結婚して子供を作る段階になって、初めて深刻な問題に直面する。

一体誰が、いつマスターベーションを教えるのか。

教えられるのでなければ、どうやってマスターベーションの方法を学習するのか。

マスターベーションを学習する機会はすべての男性に存在するのか。

用手的なマスターベーションで射精できて当たり前なのか。

などということを、精液検査がうまくできない人たちを見るたびに考えさせられてきた。

夢精や勝手に出てしまう射精(遺精)以外、意図的に射精をするということはもともと備わった能力ではなく、試行錯誤を繰り返して習得していく技術である。

だから、箸や鉛筆の持ち方を習うように、ペニスの持ち方や使い方(マスターベーションのやり方)も習う必要があるのではないかと思う。

また、射精は取りあえず出ればいいというものではなく、勢いよく射出させることも、出すタイミングをコントロールすることも必要である。

「射精してもあまり気持ちがいいとは思わない」とか、
「出たみたいだけどよくわからない時がある」とかいう男性もいるが、
これでは完全に射精をマスターしているとは言えない。

多くの男性はいろいろな射精を多数経験し、その結果射精がコントロールできるようになったことを忘れている。

それは、自転車に乗れるようになることや泳げるようになることに似ている。

当たり前のようにしていることであっても、過去に地道な訓練をしてできるようになったのだ。
まさに、「射精は1日にしてならず」なのである。
 
③ライフル銃
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射精の技術は、性欲の強い思春期から20歳代前半に習得を開始しなければ、なかなか上達できない。

射精の技術を習得するための訓練は、マスターベーションである。

男性がマスターベーションをする最大の理由は、「オーガズムが得られる」からである。

「うまく射精できない」ということは、「オルガズムが得られない」ということであり、「オルガズムが得られない」から「射精の訓練をやってもしょうがない」ということになってしまう。

うまく射精できないまま30歳代に近くなると、性欲が低下してきて、覚えようという意欲が薄れてしまう。

そして、射精をコントロールすることをあきらめてしまうのである。

したがって、思春期男子への性教育において、最も重点を置くべきことは「射精教育」であると考える。

ただ、学校の先生方や産婦人科医には、男子の射精(マスターベーション)については扱いづらい領域だと聞く。

泌尿器科医の中でも、日本性機能学会や思春期学会に所属する医師を中心に、男子性教育に積極的にかかわっていくという機運が高まりつつあるので、地域によって泌尿器科医との協力体制が組める可能性がある。
 
④ライフル銃
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また今井 伸先生は「射精」を覚えていくうえで守らなければならないルールがあると述べている。

すべての男子の共通認識として、「射精とはこうあるべきだ」という考えを示している。

武士道ならぬ「射精道」を提唱している。

彼は草案であり皆様からご意見をいただき、随時改正していきたいと述べている。下記にその『射精道』の草案(16か条)をしめします。
 
射精道(思春期編) 草案

1.オナニーを基本とする。
2.セックスは心技体が伴うまで行うべからず。
3.他人に迷惑をかけるべからず。
4.一人になれる空間を確保すべし。
5.勃起した陰茎を軽く握り、亀頭部を刺激するようにしごくべし。
6.汚い手で行うべからず。
7.陰茎を布団や壁にこすりつけるオナニー(床オナ)は禁止。
8.必ず勃起した状態で射精すべし。
9.少し我慢してから射精すべし。
10.出てくる精液はティッシュで受け止めるべし。
11.オナニーは一日に何回してもよし。
12.気持ちのいいオナニーを追及すべし。
13.射精を自在にコントロールできるようになることを目標とすべし。
14.強い刺激のネタばかりを続けるべからず。
15.時々、空想オナニーを行うべし。
16.セックスしたいと思っても、まずオナニーすべし。
(冷静になれる)
 
さらに、今井 伸先生は『射精を制する者は人生を制す』と述べている。
参考にすべし。
 
⑤『透明な鮑』築地の貝
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2016年10月22日

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